第915話 いつもの光景
「……といった感じだな」
「か、かなり沢山のスキルが増えていたんだな」
「まったく……アレックスは白虎の居る場所の辺りで、一体何をしてきたのだ?」
シェイリーが俺のスキルを説明してくれたのだが、あまりにも多過ぎるからと、有益そうなものだけを掻い摘んで教えてくれた。
いや、その掻い摘んだものでも結構な量があるのだが、ドワーフ族の女性や騎士やから得たのだろうと思われるスキルが多々ある。
例えば、ハンマーの扱いが上手くなる槌修練スキルや、手先が器用になる巧緻性向上スキルなど、鍛冶だけでなく繊細な細工も作るドワーフならではだと思う。
あとはブレアからもらったと思われる、正義の一撃という悪に対して攻撃力が増すスキルや、操槍術という槍の扱いが上手くなるスキルなどだろうか。
「しかし、その中でも珍しいのは魔封石というスキルだな。スキルで特定の石に魔法を封じるというのは、我も聞いた事が無い」
「そのスキルは、どんな石に魔法を封じる事が出来るんだ?」
「魔法には属性というものがあるであろう? その同じ属性を持つ石……いわゆる結晶に魔法を封じ、利用する事が出来そうだ」
属性が同じ結晶に魔法を封じる事が出来る……か。
一体、誰からもらったスキルなのかはわからないが、シェイリーが珍しいという程なのだから、よっぽどなのだろう。
それにしても、石に魔法を封じて利用出来るなんて、ソフィが作ってくれている魔導装置やマジックアイテムみたいだな。
そんな事を考えていると、
「父上。ソフィ殿が、是非詳しく聞きたいと。あと、第一魔族領を維持する魔力の補給も大至急必要との連絡が来ておりますが」
傍に控えているサクラの人形が口を開く。
ソフィは蓄積した魔力で第一魔族領を浮かせてくれているので、魔力が尽きると落下してしまう。
なので、急いで向かう必要があるのだが、
「アレックスよ。我らは十二分に満足しておる。玄武もアレックスに会いたいだろうし、行ってやるのじゃ」
「そうだな。すまないが、行ってくるよ」
「あと、第一魔族領で複製スキルを必ず使うのじゃ。第一魔族領へ一体複製を出せるようにしておけば、今後はアレックスが戻らなくとも魔力補給が出来るようになろうであろう」
シェイリーがむしろ早く行けと言ってくれた。
エリーやリディアたちは……シェイリーの説明を聞いている間に満足したのか、目が合うと頷いてくれたので、早速魔法陣に乗って第一魔族領へ。
「マスター。大至急、魔力補給を……既に閾値を大幅に下回っています」
「わーい! アレックスがやっと来てくれたー!」
「アレックス、遅すぎるポン! どうして、もっと早く来てくれないポン!?」
魔法陣から出ると、すぐにソフィが助けを求め、その隣では玄武――ランランがはしゃぎ、マミが怒っている。
三者三様すぎてどうしたものかと思わなくもないが、とにかくソフィの魔力不足を何とかしなければ。
「≪分身≫」
ここに居る女性は三人なので、二体だけ分身をだしたのだが、思わぬところから声がかかる。
「えっ!? どうして二体だけなのですか? アレックス様が来られると聞いて、大急ぎで来たのですが」
「そうですよー。全然足りません! いつものように、沢山分身を出してください」
「うふふ。アレックス様……早く致しましょう」
気付けばランランたちから少し離れたところにも、女性たちが並んでいた。
野菜村にいるオリヴィアの母親たち……これは野菜村に待機しているはずのマミが、ここに居るのだから、一緒に来たのだろう。
「私たちも、アレックス様が来られると聞いて、こちらまで一族でやって参りました。どうか我らにお慈悲を」
「私たちはアレックス様無しでは生きられません。どうか、お願い致します」
「アレックスさーん! クリス、ご奉仕頑張るー!」
そして、魚村に住むベルティーナやクリスティーナをはじめとした猫耳族の女性達も来ているのだが……いや、多過ぎないか!?
猫耳族は村の女性が全員やって来たと言われても差し支えない人数なんだが。
「あのねー、シャロたちが頑張らないと、この島? が落下しちゃうって聞いたのー! だから、シャロは頑張るの!」
「その通りです。あと、私もオリヴィアみたいにアレックスの子供が欲しいです」
幼く見えるシャーロットとクロエが近付いて来ると、女性陣が一斉に距離を詰めてきて……いや、ソフィの魔力補給に来たんだってば!
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