第459話 ドロシーと霊樹

 ドロシーに事情を説明してもらおうと頑張った結果、気絶させてしまった。

 なので、ドロシーに治癒魔法を使おうと思ったのだが、そんな暇を与えてくれない程に、ウラヤンカダの女性たちが迫ってくる。

 分身を出し直し、ここに居る女性たちを全員満足させれば、ドロシーと話が出来るだろうか……と思ったら、ネーヴが現れて甘えてきた。


「アレックス! 会いに来てくれたのか。その……嬉しいぞ」

「え? あ、あぁ。そんなところだ」

「ふふっ、やはり嬉しいな。もっとアレックスに会えれば良いのだが、ウラヤンカダの村も纏めなければならないからな」


 ネーヴには村長という大変な役割を果たしてもらっている事もあり、それを労う為にもじっくりゆっくりと話を聞いてあげながら満足させ……あ、気絶した。

 とりあえず、ドロシーを起こして事情を説明してもらうか。


「≪リフレッシュ≫」

「ん……ご主人様ー! もう一回しよーっ!」

「ドロシー。それより、どうして俺とリディアがウラヤンカダの村に居るのか教えてくれ」

「えっと、私もはっきりとは分かって居ないけど、ご主人様が霊樹の近くに居たからですかねー」

「霊樹? ……あ、もしかして、あの木か?」


 ノーラの人形に風呂を作ってもらおうと、島の木を切ろうとしたら、ユーリとレヴィアに止められたんだよな。

 理由までは教えてくれなかったが、あの木々がドロシーの言う霊樹なのかもしれない。


「霊樹っていうのはー、魔力の高い地で長年育ってきた木で、もうすぐ精霊になる木なんです」

「霊樹っ!? アレックスさん、あの島に霊樹があったのですか!?」


 気付けば、リディアも目覚めていて、一緒にドロシーの話を聞いている。

 エルフだからか、リディアも霊樹の事は知っているそうだ。

 何でも、大抵の木は霊樹になる前に伐採されてしまったりするので、かなり数が少ない……というか、霊樹にまで育つ環境があまりないらしい。

 言われてみれば、あの島は何も無い場所だったな。


「確かではないが、おそらくその霊樹だろう。とりあえず状況的に考えて、霊樹がある場所にドロシーが行き来出来るとか、そんな感じか?」

「正しく言うと、霊樹がある場所にご主人様が行けば……かなー。私は木の精霊だけど、この姿の女性――モニカさんとレヴィアさんの姿になって、ご主人様の子種と魔力を沢山いただいたでしょ? そのご主人様が霊樹へ魔力的に触れると、私と繋がりを持つみたいなの」

「魔力的に触れるというのは良く分からないのだが」

「簡単に言うと、霊樹にご主人様の子種をぶっかけていただければ良いかと」


 いや俺はそんな事をしていないのだが……いや、待てよ。

 モニカが自然の中でしてみたいと言って、俺の分身を連れて森の方へ向かっていたような気もする。

 モニカの中からアレが垂れ落ちて、そこに霊樹の根っこがあって……という事なのか?


「ま、待ってください。という事は、アレックスさんのアレを霊樹に掛ければ、自由に行き来が出来るようになる……という事ですか?」

「たぶん、そうですよー。でも、霊樹はかなり数が少ないと思うけど……」

「違うんです。あるんです! その、私が住んで居たエルフの森に! アレックスさん、エルフの森へ行きましょう! そうすれば、私も両親にアレックスさんとの子供をすぐに見せられますし、アレックスさんとこれまで通り一緒に暮らす事も出来ます!」


 リディアが急にぐいぐい来るんだが、とりあえずそのエルフの森への行き方を調べないとな。

 申し訳ないが、玄武を助けた後になってしまうが。


「アレックスさん。という訳で、早速子供を作りましょう!」

「待ってー! 私もご主人様としたいですー!」

「あの、私たちも待っているんですけどー!」


 結局、俺とドロシーが生み出した俺の人形とで頑張り、全員を満足させて……気付いた時には森の中で眠っていた。

 近くに居た女性に聞くと、ドロシーの人形は木で出来ているから、いつも森でするのだとか。

 流石に普段は気絶する前に、それぞれの家へ帰っているそうだが。


 それから村で朝食を済ませ、リディアと共にレヴィアたちの所へ送ってもらったのだが、ドロシーが複数人居たように見えたのは気のせい……気のせいだよな?

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