第458話 謎の小島

 昼にウムギヒメが現れ、帰った後は特に大きな出来事もなく、順調に進んで行った。

 それから日が沈み始めた頃に、レヴィアが小さな島へ近付いて行き、元の姿へ戻る。


「夜に泳ぐのは疲れるから、今日はここでストップ」

「分かった。レヴィア、ありがとう」

「ん……ご褒美」

「あ、後でな」


 リディアが夕食の準備をしてくれているので、レヴィアとユーリに抱きつかれながら、三人で島の中を探索する事に。

 魔物とかが居そうなら、倒しておいた方が良いだろうしな。

 浜辺に引っ張り上げた家にはモニカとミオが居て、結界も張ってくれているので大丈夫だろう。


「ユーリ。空から何か見えるか?」

「んー、きがいっぱいあるー!」

「えっと、森かな? このまま魔物などが居なければ、何本か木を持ち帰るか」

「ん? パパー、どうしてー?」

「いや、周りは海水ばかりだからな。リディアとラヴィニアに水を出して貰って、風呂に入れた方が良いかと思ってさ」


 魔族領へ来たばかりの頃のように、シャワーでも良いのだが、人数が多いからな。

 風呂の方が良いと思う。

 木材さえあれば、ノーラの人形が浴槽くらい作ってくれるだろうし。


 そのまま真っ直ぐ歩いて行くと、ユーリの言う通り森へ到着した。

 周囲を見渡すが、魔物の類は居ないようだ。

 本当に小さな島だったからな。

 とりあえず、何本か木を切ろうとしたのだが、


「パパー、まってー! このきは、ダメかもー」

「……んー、アレックス。レヴィアたんも、やめた方が良いと思う」

「そうなのか? まぁ二人がそう言うならやめておこうか。今更だけど、石の壁でも風呂は作れるしな」


 ユーリとレヴィアに止められ、小さな森の横を突っ切り……反対側の浜辺に着いた。

 今度は海岸に沿って歩き、あっという間に皆の所へ。

 まぁ何も無い小さな島だったな。

 リディアがラヴィニアの捕まえてきた魚を使って夕食を作ってくれたので、美味しくいただくと、レヴィアが勢い良く立ち上がる。


「アレックスー! ご褒美の時間ー!」

「パパー、まわりはユーリたちがみておくから、しんぱいいらないよー!」

「我の結界もあるしな。さぁアレックスよ。分身するのだ」


 結局こうなるのか。

 昼と同じく、モニカに俺の分身たちを転移スキルで運んでもらう。

 しかし、それにしてもウムギヒメの力は凄いな。本当に腰の痛みが無い。

 だが慢心は命取りだからな。

 今は腰が痛く無いが、イネスに定期的なマッサージを頼んで万全にしたい。

 そんな事を考えていると、


「あ、アレックスさん。いつもより激し……」


 腰が痛くないからか、無意識のうちにリディアを気絶させてしまった。

 気を失ったリディアを家の中へ運んでベッドに寝かせようとしたのだが、


「ご主人様ー! 次は私にっ!」


 リディアを抱き上げたところでモニカが襲って来る。

 皆が皆、こういう状態なので仕方無いが、せめてリディアを運ぶまで待っていて欲しい。


「リディアをベッドで寝かせて来るから、少しだけ待っていてくれ」

「ダメですっ! 待てないよーっ!」

「おいおい……えっ!? ここは……ウラヤンカダの村!? 一体何がどうなっているんだ!?」


 モニカに抱きつかれたと思ったら、ウラヤンカダの村に居て……って、俺の腕の中にはリディアも居る。

 だが、レヴィアたちは居ないし、海の――潮の香りもしない。

 大きな村長の家もあるし……ここは村の東側にある林か。

 ……って、俺の姿をした人形たちと、女性たちが大勢居る?


「みんなー! 久しぶりにご主人様が来てくれたよー!」

「きゃぁぁぁっ! アレックス様ーっ! 本物!? 本物ですねっ!?」

「どうして、もっと来てくれないんですかぁぁぁっ! あ、凄い! 本物の方が、濃厚で濃いっ! それに、舐めただけで力が湧いてくる気がするっ!」


 どうしてウラヤンカダの村に!?

 モニカの転移スキルだと、六合教の宿舎へ行くはずで、しかも俺しか一緒に移動出来ないはずなのに、どうしてリディアまで?

 ……って、よくみたらモニカの胸が小さいな。


「あ! ドロシーっ!? どうやって、あの場所へ!? というか、どうして俺とリディアがウラヤンカダの村に居るんだ!?」

「ご主人様。そんな事より、早く私たちにも……皆待ってますから!」

「皆待ってます……って、ちょ、ちょっと待ってくれ! 状況を説明してくれっ! あと、リディアをベッドに……」


 正直言って混乱しているのだが、ドロシーは少しも説明してくれなくて……満足させたら説明してくれるのか?

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