第457話 ウムギヒメの力

「ふぅ。ごちそうさまでした。すーっごく久しぶりで良かったわぁー。ありがと」

「なんと……あれだけ乱れておきながら、自ら止められるのは凄いのじゃ。ウムギヒメとやら、何者なのじゃ?」

「うふふ、貴女に近しい存在かも。九尾……じゃなくて、ミオさん」


 ウムギヒメとミオが、よく分からない話をしているが……いや、皆そろそろ終わらないか?

 リディアは気絶しているし、モニカは俺の分身に何かを飲ませようとしているし、レヴィアと結衣は……最初から物凄く激しいのに、どうしてそんなに元気なんだ?


「では、名残惜しいけど、先程言った通り、私の仲間を探しに海へ戻るわ」

「そうか。あー、その、なんだ。やる事はやったので、責任を取るが……」

「ふふっ、アレックスは真っすぐな人間族なのね。ありがとう。もしも、私が無事に仲間を見つける事が出来たら、その時はその子と一緒に貰ってね」

「……わかった。約束しよう」


 ウムギヒメと真面目に話しているが、レヴィアや結衣が未だに分身たちと頑張って居るから……くっ! こんなタイミングで出てしまうなんて。


「……勿体ないわぁ。……うん、美味しい」


 自らの腹にかかった俺のをウムギヒメが指ですくい取り、そのまま口へ。


「……そうだわ。私のミルクもあげる。凄い効果があるから」

「えっ!? ――っ!? ……こ、これはっ!? 腰が、軽いっ!?」

「凄いでしょ。私のミルクには、治癒効果があるの。アレックスは腰に凄い負担がかかって居たのよ。貴方の凄い回復力でも追いつけない程に、毎日ダメージが蓄積していたのでしょうね」

「ま、まぁ……そうだな。けど、本当に腰が少しも痛くない!」

「でしょう? 更に、ある条件を満たすともっと効果が上がるのよ。……死者すら生き返らせるって言われる程にね」


 流石に死者を生き返らせる……は大袈裟というか冗談だと思うが、ウムギヒメの母乳は凄いな。


「では、今度こそ本当にお別れね。あと……アレックスは神のスキルを授かっているのかしら? 私のミルクの治癒力の一部が、アレックスのミルクに宿っているわね」

「えっ!? どうして神のスキル――エクストラスキルの事を!? それに……まさか俺のスキルを見る事が出来るのか?」

「うふふ。じゃあ、またね。アレックス」


 そう言って、ウムギヒメが海の中へ。

 殆ど飛沫を立てず、静かにすーっと海の中へと消えていき……そのまま姿を消した。


「……俺のスキルを知っていたし、シェイリーや六合のような存在だったのか?」

「うむ。そうかもしれぬのじゃ。我と近しいと言っておったし……こ、こほん。何でもないのじゃ。しかし、アレックスのミルクにウムギヒメの治癒力が宿っているというのは……アレックス、ちょっと飲ませるのじゃ」

「お、おい、ミオ!?」

「す、少しじゃぞ!? 我はレヴィアや結衣のように、大量には飲めぬのじゃ。こっちなら、出してもらうのは大歓迎なのじゃが……っ! ……ん、ふぅ。少しで良いと言ったのに……しかし、確かに飲むと身体に力が湧くようなのじゃ」


 ふむ。少し疲れた様子だったミオが、再びやる気になって……いや、ならなくて良いんだが。


「……って、待った! さっきから、レヴィアと結衣は複数の分身を相手にしていて、大量に俺のアレを飲んで居るが、やたらと元気なのはもしかして……」

「まぁそういう事なのじゃ。という訳で、アレックス。我も再開するのじゃ!」

「いや、昼食の時間だし、ユーリやニースも呆れて……いや、そっちを見たのは混ざって良いって意味じゃないっ! ユーリ、ダメだぁぁぁっ!」


 ユーリが混ざって来ようとしたので、分身を解除し、何とかミオを宥めて、昼食に。

 ウムギヒメからもらった治癒力のせいか、ラヴィニアが力が有り余って居るからと、海の中から大きなエビの魔物を捕まえてきて……うん。これはウムギヒメのように凄い存在感は感じないし、リディアも魔力などは普通だと言っている。

 レヴィアとミオも、絶対に普通のエビの魔物だと念押ししてくれたので、皆でいただく。

 さて、休憩と食事も済んだし、今度こそ出発だ。

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