第874話 狙われたアレックス
「いや、本当に知らないんです。ザガリーさんのあんな棒、初めて見たんです」
ザガリーと神器だという杖が塵になって消えてしまい、残っていた奴らに聞いたが、結局何も分からなかった。
正体は分からないが、神獣と呼ばれる太陰すらも操る力があり、ミオの結界術を軽く打ち破る杖が存在し、気の力を使わないと打ち破れない結界がある。
最近は魔物に襲われる事も減り、ドラゴンとも戦う事が出来る様になってきたが……きちんと修行し直さないと。
「レックス様! そろそろ逃げなければ!」
「そうだよ、レックスー! ミッションを振り返るのは後なの! 予告状を出してから、家に帰るまでが怪盗だよーっ!」
「いや、それなら予告状を出していないから、そもそも怪盗として成立しないのでは?」
フョークラとマリーナの言葉に疑問を呈すると、
「それなら大丈夫です。ちゃんと私が予告状も出しています。だから、結婚式の会場も物々しい警備で、騎士に扮する事で容易に容易に中へ入れたでしょ?」
「なるほど。そこまで考えていたのか」
「そういう事ー! だから、早く逃げましょう!」
フョークラが説明してくれた所で、マリーナと共に逃げようとしたのだが、ブレアが動かない。
「ブレア!?」
「クックック。私はこの国の騎士の端くれ。ここは私に任せて行くのだ!」
「大丈夫なのか?」
「無論だ! 後でアレを貰うため、後ほど合流させてもらおう!」
ブレアがいつもの話し方に戻っているし、本当に大丈夫なのだろう。
マリーナを抱きかかえて解除から出ると、とにかく人気のない方へ。
「一度、ミオたちと合流しないといけないな」
「だねー! デイジーちゃんも混ぜてあげないとねー!」
マリーナはデイジー王女に何をさせる気なのだろうか。
もしも怪盗チームに混ぜるというのであれば、全力で止める事になるが。
「確か……ミオたちが居たのは、あっちの方角だったよな?」
「そうだったかと思います。反対側へ来てしまいましたので、街の中を突っ切って行くのが一番早いと思いますので、仮面を取りましょうか」
「そうだな。街中でこの仮面を着けていると、逆に目立ってしまう」
という訳で、三人で街の中を歩いて行くのだが、意外に騎士が居ない。
元々大きな街なので、街中に配置させる程の数が居ないというのと、おそらく今はブレアが騎士たちを式場に集め、ザガリーの神器について調べて居るのだろう。
その為、怪しまれない程度に早歩きで街の中を歩いているのだが……
「妙だな。やけに視線を感じる」
「そうかなー? マリは何も感じないよー?」
「いえ、私もアレックス様と同意見です。森の中で育った私にはよく分かるのですが、これは獲物を狙う視線です。おそらく、アレックス様が狙われているのではないかと」
え? 俺なのか?
フョークラが間違いないと、確信を持って俺が狙われていると言ってくるが、ハッキリ言って狙われる要素が無い。
デイジー王女を連れて歩いているならまだしも、今はマリーナをおんぶし、フョークラが隣を歩く……普通の家族連れといった感じだ。
なので、狙われるとしたらこの国では珍しいと思われるダークエルフのフョークラだと思う。
という訳で、フョークラが無理矢理攫われたりしないように俺の傍へ抱き寄せると、
「――っ! ズルいっ! 私もーっ!」
「待って! ずっと私が狙っていたんだからっ!」
「おにーちゃん、けっこんしてー!」
物陰から少女たち……に混じって、女の子もいるが、それはさておき、複数の女性に囲まれてしまった。
魅了効果が発動してしまっている時は、こんな感じだったが……暫く様子見されていたあたり、少し違うようにも思う。
「な、何が起こっているんだ!? 魅了効果はランランに封印してもらっているはずだし、どうしてこんな事に!?」
「と、とりあえず逃げようよー! これじゃあ、デイジーちゃんのところへ辿り着く頃には夜になってて、マリの時間が減っちゃうよー!」
「そうですね。アレックス様、分身を一体出していただけませんか? 囮にしましょう」
いや、フョークラの案はダメだ。
分身を出したら、ここに居る女性たちが大変な事になる。
そもそも、どうして女性たちが集まってきているんだっ!?
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