第916話 繋がる手掛かり
「ふぅ……マスター。何度も言っておりますが、私への魔力補給は毎日お願い致します」
「す、すまない。その、いろいろあったんだ」
「そうですね。いろいろあったようですが、魔法を石に封じる事が出来るというのは、どういうスキルですか?」
先程シェイリーから聞いたばかりのスキルについて、ソフィが真剣な表情で聞いてくる。
だが、至近距離で真剣な表情を向けながらも、下半身が物凄く動いているのは……突っ込まないでおこう。
「すまないが、俺もどんなスキルなのかはわかっていないんだ」
「マスター。とりあえず使ってみましょう。私の考えている通りのスキルだとすれば、この第一魔族領が凄い事になりますよ!」
「凄い事? ……いや、ソフィが気になる気持ちは分かるし、俺も使ってみたいんだが、封じる魔法と同じ属性の結晶が必要らしいんだ」
「魔力の結晶……ですか? 特定の魔力が集まり、固まったもの……でしょうか?」
ソフィが何か難しい事を考えているようだが、その、相変わらず俺の上に乗ったままで……あ、そうか。
ソフィは眠っていても、一晩中身体が勝手に動く自動行動というスキルがあるんだった。
だから、上半身と下半身で行動が違う……って、そんな事が出来るのか!?
「……んっ! ……こほん。ひとまず魔力の結晶について、研究と調査を進めたいと思います」
「わかった。折角、何やら凄そうなスキルだから、俺としても可能であれば活用したいしな」
「ありがとうございます。マスターから許可をいただけたという事で……あの辺りですね。では、行ってまいります」
ソフィが突然立ち上がったかと思うと、そのままシャーロットやクロエたち、野菜村の女性陣が集まっている場所へ移動していった。
何をするのかと思って様子をみていると、
「マスターから許可をいただいています。少し休憩したい方は、マスターの分身を私にください」
「シャロはお腹がいっぱいになっちゃったから、少しお休みするー!」
「わ、私も……アレックス様のが溢れ出てしまっているので、少し休もうかと」
ソフィが分身たちを五体程集め……五人をソフィが一人で相手するのか!?
「魔法の結晶を作るには、大量の魔力が必要と考えました。さぁ、分身さん。たくさん、私にお願いします」
いや、無茶し過ぎではないだろうか。
とりあえず、ずっと俺にくっついていたソフィが離れたので、ランランにハヤアキツヒメの事を知らないか聞いてみようとしたのだが、
「……ダメ。アレックスは、他の女の所へ行っちゃダメ」
「レヴィア!? どうして第一魔族領に……」
「目が覚めたらアレックスがいなかった。レヴィアたんは休んで回復した。だから続き」
有無を言わさずレヴィアに乗られてしまった。
とはいえレヴィアは軽いので、そのままランランのところへ歩いて行こうと思ったのだが、
「そうだ。レヴィアは、海底に潜ったりする事は出来るのか?」
「……余裕。けど、どうして?」
「いや、ハヤアキツヒメという神を探しているんだが、どうやら東大陸の近くの海底の大穴にいるかもしれないんだ」
「……海底の洞窟って事? ハヤアキツヒメは知らないけど、大きな穴なら見た事ある気がする
「ほ、本当かっ!? レヴィア、一旦第四魔族領へ戻ろう! ジネットと話がしたい」
意外にもレヴィアがハヤアキツヒメと思わしき情報を持っていた。
そうか。神族繋がりで白虎に聞いたり、水繋がりで天后に聞いたりしたけど、海の底となれば水竜のレヴィアに聞くべきだったか。
とはいえ、レヴィアはハヤアキツヒメという名前は知らなかったので、ジネットのおかげで情報が結びついた訳だが。
「……ま、待って。今、走るのはダメ。もう少し慣らしてから。さ、さっきまで眠っていたから、いきなりそれは……っ!?」
急いで魔法陣まで走り、そのまま第四魔族領でジネットを探して走っていると、
「アレックス。いくら竜人族とはいっても、それは無茶し過ぎなんよ」
「アレックスさん。私にも是非それを……あ、でも、ツェツィにはそこまで激しいのはダメですよ?」
「アレックス……私も子供を授かりたいが、私はもっと普通で良いんだぞ?」
ヴァレーリエ、ナターリエ、オティーリエの竜人族三人に注意されてしまった。
あ、レヴィアがぐったりしているのか……って、大丈夫か、レヴィアーっ!
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