第24話 お肉祭りで舞い上がる俺とニナと、羨ましがるリディアとエリー

「お肉!? わーい、お肉だー!」

「お、ニナも分かってくれるか? この嬉しさを」

「うんっ! お肉、お肉ーっ!」


 ウサギ肉を手に入れた喜びをニナも分かってくれて、二人ではしゃいで居ると、


「えっと……お肉は良いんですけど、それアサシン・ラビットのお肉ですよ?」


 リディアが困惑した表情を向けてくる。


「ん? 何かマズいのか? 実は体内に毒を持っているとか?」

「いえ、毒とか以前に魔物ですよ?」

「大丈夫、大丈夫。な、エリー」


 そう言ってエリーに視線を向けると、大きく頷いてくれた。


「そうね。冒険者は普通に食べているわね」

「そ、そうなんですか。エルフは菜食主義という訳ではなく、普通にお肉も食べますが……魔物の肉というのは食べた事が無いですね」

「まぁ普通には食べられないから、人間でも一般の人は食べないかも。けど、アレックスが居れば食べられるわよ」


 エリーの言葉で、リディアが不思議そうに小首を傾げながら俺を見つめて来るので、


「よし! じゃあ、ある程度ニナの採掘が終わったら、小屋に戻って昼食にしよう。いつもリディアにご飯を作ってもらっているし、今日は俺とエリーで作るよ。ただ、そうは言っても、火や水はお願いする事になるけどさ」

「それは全く構わないのですが、アレックスさん自ら……あ、ありがとうございます」

「お兄さんが料理を作ってくれるのって初めてだねー! 楽しみー!」


 美味しいウサギ料理を振舞う事にした。

 流石に小麦粉からパンやパスタは作れないが、ウサギを捌いて調理するくらいなら出来るからな。

 先ずは手早く血抜きを行い、


「……って、ニナ。採掘は?」

「あっ! えへへ……お肉の喜びで忘れてた。ちょっと待っててね」


 暫くニナが粘土を採取し、その間に現れたサソリをエリーが倒して、黒いウサギが現れたら俺が仕留める。

 時折、鉄のサソリも現れるので、鉄の塊も集まっていき、


「お兄さん。良質の粘土が沢山取れたし、鉄もそれなりに取れたよー!」


 ニナが嬉しそうに顔を綻ばせた。


「もしかして、風呂が作れたりするくらい鉄が集まったのか?」

「んー、流石にそこまでは無理かな。でも、何か作っても良いし、お風呂の為に残しておいても良いし、お任せするよー!」

「そうか。じゃあ、また皆で相談するとして、今日は一旦引き上げようか」

「わーい、お肉パーティだーっ!」


 お肉パーティは流石に言い過ぎ……いや、しかし数日ぶりのお肉だ。

 気持ちとしては、ニナの言う通りお肉祭りだなっ!

 一先ずリディアに地下洞窟への出入り口を塞いでもらうと、早速小屋の前まで戻り、エリーに手伝ってもらって調理を開始する。


「じゃあ、私はいつものアレを作るわね」

「あぁ、頼むよ」

「むー。この、全てを言わなくても伝わる感じ……羨ましい」


 変な事をリディアが羨ましがるものだと思いながらも、魔物の肉を食べる為に、必須の作業を行う。


「≪ピュリフィケーション≫」

「アレックスさん。今のは?」

「浄化の効果がある神聖魔法だ。これで魔物の肉から、良くないものが消え去って、普通の肉になるんだ」

「そんな魔法があるんですね」

「あぁ。だが逆に言うと、神聖魔法が使える者が居ない場合は、食べない方が良いけどな」


 あとは普通に料理を作るだけなので、肉への期待で目を輝かせるニナと、何故か悔しそうな目のリディアに見つめられながら、エリーと共に調理を進め……完成だっ!


「お待たせ。シチューの出来上がりだ! ……とはいえ、リディアへのお礼のつもりが、火は出してもらってしまったけどな」

「いえいえ、そんなの全然良いですよっ! 私はアレックスさんの気持ちが込められた手料理を食べられるだけで嬉しいですし。しかし、このエリーさんが作られたのは……パンですか? 随分と硬いのですが、まさか失敗?」

「失敗じゃないわよっ! これは、元からこういう細長くて硬いパンなの。私やアレックスが生まれ育ったフレイの街の、伝統的なパンなのっ!」


 エリーが作ってくれたパンは、本来俺の腕よりも長い棒状なのだが、調理器具の都合で半分くらいの長さになっていた。

 だけど形は少し違うものの、香りと触感は俺が思っていた通りなので、一口大に切り分ける。


「リディア。カットしたパンをシチューにつけて食べて欲しい。外側は硬いけど、中は柔らかくて、シチューによく合うんだ」

「こう……ですか? ん、美味しいですっ!」

「リディアの口に合って良かったよ」


 これは野宿をする事になった時、何度も作ってきた料理だ。

 作り慣れてはいるものの、エリーたち以外に食べてもらった事がなかったから、どうかとも思ったけど、一先ず喜んでもらえて良かった。


「お兄さん、ニナもー! ニナも食べて良い?」

「あぁ、沢山食べてくれ」

「うんっ! ……美味しい! お肉も美味しいけど、野菜も美味しいよ! お兄さん、ありがとーっ!」

「いや、喜んでくれたのは分かったから、抱きつかなくても良いってば。それじゃあ俺も……うん! 肉は旨いなっ!」


 お肉祭りに感動したのか、ニナが抱きついてきた。

 まぁ自分で作っておいてなんだけど、久しぶりの肉はやっぱり嬉しいよな。


「……あ、あそこまで自分の感情を表に出さなければ……」

「……素直に。自分の気持ちを素直に出したい……」


 やはり女性は少食なのか、リディアとエリーの手が止まったので、俺とニナの二人で食べまくってしまった。

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