第23話 何故か凄く凝った美味しい朝食と、洞窟探索再開

「アレックスさん、おはようございます」

「アレックス、おはよっ!」

「ん……おはよう、リディア。おはよう、エリー」


 エリーが俺より早く起きるのはともかく、いつも俺より後に起きるリディアが、今日は随分と早く起きていた。

 一方、昨日は俺と同じくらいに起きたニナは、未だに俺の胸の上で抱きつくようにして眠っているのだが。


「ニナ……朝だぞ」

「んふふ……お兄さんのエッチ……くぅ」

「どんな寝言だよっ! ……って、いや、ニナの寝言だからな!? 二人とも、そのジト目はやめてくれっ!」


 リディアとエリーが俺を起こしに来た所で、ニナが飛んでもない寝言を言ったから、凄く冷たい目を向けられてしまったじゃないか。


「んんーっ! おはよう、お兄さん! ……ん? 良い匂いがするっ!」

「今日の朝ごはんは、ベーグルを作ってみたんです。どうぞ、召し上がってください」

「私はポテトのポタージュスープを作ってみたの。冷めないうちに食べてね」


 リディアとエリーが作ってくれた朝食の匂いでニナが飛び起き、凄い速さでテーブルへ飛んで行った。

 やれやれと、苦笑いしながら俺も席に着き、


「おぉっ! このスープは旨いな! 何だか、パーティを組んで居た時よりも、料理に気合が入っていないか?」

「え? い、いつも通りよ? 私は料理が得意だもん」


 エリーが作ってくれたスープに舌鼓を打つ。


「アレックスさん。私が作ったベーグルも食べていただけませんか?」

「あぁ、いただくよ……うん! これも旨い! モチモチしていて、美味しいな!」

「えへへ……お口に合ったようで、良かったです」


 ニナと共に二人が作った料理を食べて居ると、


「それで……その、アレックス。どっちが美味しかった? 私が作ったスープと、リディアさんが作ったベーグルは」

「どっちも美味しかったぞ。二人とも、ありがとう」

「うーん……まぁいっか。喜んでくれたみたいだし」


 エリーが料理の順位を聞いてきたけど、正直言ってどちらも美味しかったからな。

 まぁ俺もニナも完食したのが、何よりの証拠だろう。


「さて、じゃあ美味しい食事もいただいたし、後片付けも終わった所で……行くか!」


 剣と盾、それから鎧と、一応昨日作った松明もどきを準備しながら、エリーに今の状況を説明する。


「なるほど。お風呂や鉄器類を作る為に、地下の洞窟へ潜っているという訳なのね?」

「あぁ。昨日は、そこへ虫系の魔物が大量に現れたんだ。火と氷が弱点らしいから、エリーの攻撃魔法で一掃して欲しい」

「任せてっ! 私の魔法で、虫なんて蹴散らしてあげるからっ!」


 全員の準備が整った所でニナの掘ったトンネルへ入り、最奥にある石の壁をリディアに消してもらう。

 前回同様、俺の盾に照明効果を付与し、パラディンの上位防御スキルで三人を守ると、


「じゃあ、行くぞ」


 地下洞窟へ足を進める。

 早速魔物の気配がして、わらわらと緑色のサソリ――グリーン・スコーピオンが近づいて来た。


「エリー、頼む!」

「任せてっ! ≪ファイアーストーム≫っ!」


 エリーの放った炎の旋風で、大量に居たサソリが一瞬で消し炭になる。

 その中には、前回俺の剣が通らなかった鉄のサソリ――アイアン・スコーピオンも混ざっていて、鉄の塊と化していた。


「ふっふーん。≪採掘≫っと」


 鉄のサソリの死骸からニナが鉄を採取していき、サクサク集まっていく。

 しかし、それにしてもだ。

 先ほどエリーが使った炎の魔法の灯りで、俺の盾に点けた照明よりも、先まで洞窟が見えたのだが……本当に広いな。

 チラっと見えた感じでは、奥に行くにしたがって天井も高くなっており、広く大きな空間になっているように思えた。

 ……広い場所には、それなりに大きな魔物が居る事もあるので、変な魔物が居ついていなければ良いのだが。


「あ、お兄さん! ここ、かなり良い土だよ!」


 ニナが粘土を取り始めたので、一旦その場で小休止として、俺とエリーが周囲を警戒していると、何やら動く気配がする。

 盾を――灯りを向けてみると、額から角の生えた黒いウサギが居た。


「あ、アレックスさん! アサシン・ラビットです! ほぼ普通のウサギに見えますが、近付くと闇魔法で……」

「≪ホーリー・クロス≫っ!」

「い、一撃ですか。見た目とは違って、かなり素早くて、攻撃を当てるのが困難な上に、生命力もあるんですけど……流石アレックスさんです」


 リディアが顔をキラキラ輝かせて褒めてくれているが、それよりも今の俺には気になる事がある。

 というのも、


「やった! ついに手に入れたぞ! 肉だ……肉だぁぁぁっ!」


 この魔族領へ来てから密かに俺が欲していた物……肉がやっと手に入った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る