第379話 光る樹
リディアに必死で説明し、胸の大きなメイドさんが揃っている事について、俺が何かした訳ではないと理解してもらった。
それから少しして、サンゴがサンを連れてやって来る。
「お父さーん。それじゃあ、魔族領へ行ってくるねー!」
「パパー! また遊んでくれるー?」
「勿論だ」
サンゴにキスされ、それを見たサンにもキスされ、何故か対抗心を燃やしたレヴィアにもキスされ……って、なんでだよっ!
「では父上。サンゴとサンは、私が責任を持って家まで送り届けます」
「あぁ、頼むよ」
「パパー! いってきまーす!」
サクラが二人と、トンネルを開ける為のリディアの人形と共に出て行った。
パパか。サンゴの娘であるだけでなく、ユーディットの人形ユーリにも呼ばれるし、他の人形たちから呼ばれる事もあるが……そのうち、エリーとの子供からも呼ばれる日が来るのだろう。
……もう少ししたら名前を考えなければならないか? いや、まだ性別も分からないうちから、気が早過ぎるか。
サクラたちが向かった、リディアによって森になった村の東側を窓から何となしに眺めていると……あれ? 森の中が光った気がするのだが。
サクラたちが何かしたのか?
いや、だがトンネルの穴よりも南側で、森の中の通路といった感じの場所が光った気がする。
まさか、早くも闇ギルドの者が来たのか!? しかし、それなら先にカスミから連絡があるだろう。
よし、確認しに行くか。
「あれ? アレックス、何処へ行くのー?」
「アレックスさん。どちらへ行かれるのですか?」
「アレックス。そろそろ我も朝の続きがしたいのじゃ」
家を出ようとしたら、レヴィアとリディアがついてきて、ミオが抱きついて……って、レヴィアも抱きついてくるし、リディアも腕を組んできた。
一先ず、東側にある森が光った気がするので見に行くのだと伝え、四人で移動する事に。
「えっ!? アレックスさん……」
「リディア。どうしたんだ?」
「とても不思議な感じが……凄く大きな魔力を感じます」
家を出てすぐにリディアが声を上げ、その直後にミオも警戒し始め、
「むっ!? これは……マズいのじゃ。一先ず、この家に結界を張っておくのじゃ」
早速結界を張る。
この二人が敏感に察知……って、あれ? その割にレヴィアはいつも通りだな。
「え? これ、そんなに大変な事ー? これくらい、大した事ないと思うよー」
「レヴィア。俺には何も感じられないのだが、リディアやミオを含めて何を感じているんだ?」
「えーっとね、何かは知らないけど、そこそこ大きな魔力の塊があるねー。けど、レヴィアたんからすれば大した事ないよー。楽勝、楽勝!」
レヴィアが物凄い余裕を見せているが、実際ヴァレーリエが現れていない辺りが、その通りなのかもしれないな。
レヴィアと同じく竜人族であるヴァレーリエは、家の中に居てもリディアたちと同じ様に魔力を感じ取っているはずだかし。
「いずれにせよ、放置は出来ない。皆、警戒して行こう」
そう言って村の東の森へ入ると、リディアの案内で進んで行く。
すると、木々の中で一本だけ白く光る樹があった。
「これは……まさか、木の精霊ドリュアス!?」
「精霊……って、リディアが使っている、あの精霊魔法の精霊なのか!?」
「はい。ですが……どうしてこんなところに精霊が具現化しようとしているのでしょう。アレックスさん、ここは何か特別な土地なのでしょうか? 例えば、何か神聖な土地だとか、巨大な魔力を持つ聖獣などがこの地に埋葬されたとか」
リディアがこの地を凄く神聖視しているが……違うんだ。
ここはモニカが大量に聖水を垂れ流した場所で、聖獣というより性獣……げふんげふん。
とりあえずリディア曰く、危険な存在ではないらしい。
リディアが精霊魔法で生やした樹が、この土地の強い力を吸って精霊化しそうになっているという、かなり珍しい現象なのだとか。
危なくないという話なので、そのまま皆で見守っているのだが、何か様子がおかしい気がする。
「あれ? リディア。さっきまで白かった樹が、黒くなってきていないか?」
「ほ、本当ですね。どうしてでしょう。何か悪い力まで吸い上げてしまったのでしょうか? ……そういえば、枯れた木が落ちていますね。焼き畑農業とかですか?」
「……って、待った! あの木は、毒の葉を生やす樹が枯れたものだっ!」
枯れた毒の葉を放置していたからか、ドリュアスと呼ばれる木の精霊が黒く染まってしまった。
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