第380話 魔力吸収
「リディア。あの黒いドリュアスは大丈夫なのか!?」
「わ、わかりません。そもそもドリュアスが具現化する事さえ、初めて見る事象ですし」
本来は良い精霊だという事で、こちらから攻撃する訳にもいかず、距離を取って様子見していると、スタスタとレヴィアが近付いて行く。
「お、おい、レヴィア!?」
「もー、アレックスもリディアも、警戒し過ぎー。生まれたての精霊だからか、そんなに魔力も大したことがないから、平気だって」
竜人族のレヴィアは相当な強さだし、そもそもドリュアスが攻撃しようという気配がない。
そう思ったのだが、突然レヴィアがその場に倒れてしまった。
「レヴィアっ!? ……≪ディボーション≫」
先ずはレヴィアに防御スキルを使い、同じスキルでリディアとミオを守ると、倒れたレヴィアの許へと駆け寄る。
「レヴィア……どうしたんだ!?」
「アレックス。根っこに……」
「根っこ!? これかっ!」
気を失ってしまったレヴィアを抱きかかえて大きく後ろへ下がると、小さな足に触れていたドリュアスの木の根が離れていく。
「≪隔離≫」
ミオが結界を張ってくれたので治癒魔法を使用したのだが、レヴィアは目を覚まさない。
「アレックスさん! これ……レヴィアさんは魔力枯渇を起こしていますっ!」
「魔力枯渇って、魔法の使い過ぎで体内の魔力が不足するっていう? だが、レヴィアは魔法なんて……」
「アレックスよ。おそらく、先ほどの根っこがレヴィアの魔力を吸い取ったのじゃ。ドリュアスの魔力が一瞬でとてつもなく大きくなっているのじゃ」
レヴィアの……竜人族の魔力って、物凄く多いと思うのだが、それを吸い取ったって、かなりヤバくないか!?
増大したドリュアスの魔力を感じ取ったのか、
「アレックス! 一体、何が起こったんよ!? 突然レヴィアの魔力が無くなって、変な魔力が肥大化しているんよ」
家の中からヴァレーリエがやってきた。
一先ず現状を説明し、ミオの結界から出ないように伝えたのだが、
「なるほど。たかが木の精霊なんよ。ウチの炎で燃やし尽くすんよ!」
「ヴァレーリエ!? おい、待て! くっ……≪ディボーション≫」
ヴァレーリエが結界から出てしまったので、慌てて防御スキルを使用する。
その直後、ヴァレーリエが高く跳び、
「≪フレイムタン≫」
空中で炎の刃を生み出すと、ドリュアスを斬りつけた。
ヴァレーリエの魔力が凝縮された炎の刃なので、木の精霊であるドリュアスはひとたまりもないと思うのだが……あれ? ヴァレーリエの炎の刃が止められている!?
「なっ……水の盾!? これは……レヴィアの魔力!?」
「ヴァレーリエっ!」
必殺の一撃を防がれ、ヴァレーリエが地面に着地しようとしているが、その着地地点にはドリュアスの木の根が待ち構えていた。
ヴァレーリエまで魔力枯渇にさせる訳にはいかない! と、石の壁を階段のように出現させて駆け上がり、着地する前のヴァレーリエを抱きかかえる。
どうやら、魔力を吸い取るのは根っこだけらしく、木の枝で攻撃してきたりはしないようだ。
だが、俺が作った石の階段を、ゆっくりと木の根が登ってくる。
この木の根は斬りつけて良いのだろうか。
精霊という存在をどう扱ってよいか分からず、一旦ミオの結界の中へ引き返そうと思った所で、リディアが……いや、リディアの人形がやってきた。
「一体何を……その根っこはダメだ! 魔力を吸い取られるぞっ!?」
俺やレヴィアは魔力を失うと気絶してしまうが、暫くすると体内で魔力が作られ、目を覚ます。
だが、メイリンのスキルで生み出された人形はどうななるんだ?
仮に魔力だけを動力源としているのなら、魔力を吸い取られてしまったら死んでしまうのではないだろうか。
人形とはいえ、リディアやメイリンの子供のような存在で、動かなくなってしまうのは嫌だ! と思ったのだが、そのリディアの人形がドリュアスに何かを投げつけ……離れていく。
一体、今のは何だったのかと思った直後、
「あ……あぁぁぁっ!」
木の姿をしたドリュアスから女性のような声が聞こえてきた。
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