第530話 穴掘り隊
「ヴィクトリア。何か勘違いしているかもしれないが、俺たちが作ろうとしているのは、風呂の一種なんだ」
「温泉と言うのですよね? 皆が裸で、屋外の景色を眺めながら酒を酌み交わし、ゆっくりと親睦を深める場ですよね? 全裸で! 屋外で!」
「いやまぁその通りで間違ってはいないのだが、間違っている気がするんだよな」
自分でも何を言っているんだ? と、思わなくはないが、ヴィクトリアがイメージしている温泉と、俺の思う温泉が似て非なる物な気がして仕方がないのだが。
「さぁ、アレックス様! その露出パラダイスへ参りましょう!」
「いや、露出パラダイスって何なんだよ。言っておくが、普通の風呂だからな?」
「ですが、屋外にある天然のお風呂ですよね? 開放的な気持ちになりますよね? 全裸であんな事やこんな事をしても怒られないですよね? パラダイスじゃないですか!」
「……一つ言っておくが、今は未だ無いぞ? 今から、それを作るから、その場所の下見というか、確認に行くんだからな?」
「つまり、今からどんなパラダイスにするかは自由自在! 無限に広がる可能性って事ですね!?」
……あ、これはもう何を言っても無駄なやつだな。
「わかった。ではヴィクトリアも一緒に来てくれ」
「畏まりましたっ! このヴィクトリア。アレックス様の為に、素晴らしいパラダイスを作ります!」
いや、作るのはニースなんだが。
まぁニース一人で作ると言うのは無理な話だし、これだけヴィクトリアにやる気があるのだから、任せてみようか。
何に大してのやる気なのかはわからないが。
「お待ちください! ご主人様! でしたら、是非この私めも……」
「いや、モニカにはフェリーチェと共にノーラの故郷を確認してきてもらいたいんだ」
「そんなぁ……」
「だが、これは戦う事が出来るモニカにしか頼めないんだ」
「私にしか……ご主人様! 上手くいった暁には、ご褒美をいただけますか?」
「え? あー、まぁ、そうだな」
「わかりました! そういう事でしたら、行ってまいります!」
モニカもヴィクトリアも、若干不安があるが、まぁ大丈夫だろう……たぶん。
「という訳で、天后。すまないが、転移を頼む」
「わかりました。また連絡をもらったら、こちらへ転移させますね」
今回はモニカたちや、レヴィアたち、ヴィクトリアも船に乗って転移する。
しかし、リディアとステラの人形スティが降りているものの、若干人数オーバーな気がしなくもない。
俺とニース、ミオ、プルム、ヴィクトリアの温泉チーム。
モニカ、フェリーチェ、ノーラの人形ノアの故郷探しチーム。
これに加えて、レヴィア、ラヴィニアとユーリに、プルムの分裂、フォーとファイブが乗るからな。
まぁ船の家で宿泊する訳では無いから大丈夫だと思うが。
「アレックスの分身というか、アレックスの姿をしたプルムはシックスから、ナインまでの四人しか残らないのか。アレックス、早く戻って来てくれよ。村の者たちが欲求不満になるかもしれぬ」
サマンサに変な心配をされながら見送られ、滝の近くの河へ。
「ラヴィニア、まずはミオの言う方角へ行ってくれないだろうか」
「あちら……南東へ向かってもらいたいのじゃ。それ程遠くはないのじゃ」
「わかりました」
河の浅いところなので、最初はラヴィニアに運んでもらい、割と近くの崖へ進み、俺とニース、プルム・ファイブで穴を掘っていく。
「俺たちは、一旦ここから地上へ上がる。悪いが、前に逸れた俺たちとレヴィアたちが合流した場所まで、モニカたちを運んであげてくれないか」
「えぇ、承知しました。その後、またここへ戻って来ますね」
「頼むよ」
とりあえず、温泉チームが降りられるだけの場所を確保したので、該当メンバーが降りて、船が東へと進んで行く。
プルム・ファイブも俺の分身みたいなものだからか、それなりに掘る事が出来て……あっという間に地上へ上がる事が出来た。
「向こうなのじゃ。そう遠くはないのじゃ」
「わかった。ミオ、案内してくれ」
崖の上は森になっていて、木々の中を進んで行くと、すぐに木の数が少ない開けた場所に出る。
「ここじゃな。この土の下に大きな岩が埋まっているのだろう。この開けた場所の中心地点辺りの下に、あのラーヴァ・ゴーレムが居るのじゃ」
「あの洞窟……大きな一枚岩を掘ったと聞いていたが、こんなに大きな岩だったのか」
「この下を掘って、温泉を作るのですか? これは中々大変そうですね」
どうやらラーヴァ・ゴーレムの居た岩の上に居るようだが、すぐ下が岩で根が上手く張れないからなのか、この辺りは僅かに生えている木も小さなものばかりだ。
ヴィクトリアの言う通り、かなり大変だと思うのだが、
「パパー! 早速掘って良いー? 楽しそー!」
ニースは物凄くやる気だったので、プルム・ファイブと共に穴を掘る事になった。
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