第531話 温泉予定地の周辺調査
ニースたちが土を掘り始めると、早速岩にぶつかったようだが……流石はドワーフというべきなのだろうか。
鍛冶魔法で強化されているとはいえ、ツルハシでガンガン岩を削っていき、プルム・ファイブが削られた岩……というか、石を外へ運び出す。
「ふむふむ。なるほど。あの割れて小さくなった石で周囲を囲んでお湯が出ないようにして……ねぇ、ニースちゃん。こういうのはどうかしら」
岩を削るニースと、岩を運ぶプルム・ファイブ。そして、デザインを考えるヴィクトリア。
ニースの必死な姿に感化されたのか、ヴィクトリアが思っていたよりも真剣に取り組んでいる。
これなら、温泉を作ってラーヴァ・ゴーレムの願いを叶えるのは、意外にすんなり行くのかもしれないな。
「アレックスよ。その表情から、何を考えているか読み取ったが、そんなに甘くないのじゃ」
「ん? ミオ、何の話だ?」
「アレックスは温泉を作れば人が集まってきて、ラーヴァ・ゴーレムの依頼に応えられると思っているかもしれぬが、そもそも客が――周囲に人が居なければ、賑わう事などないのじゃ」
「確かに。完全に失念していたな」
「なので、ここは三人に任せて、我らは周囲に街や村がないか調べるのじゃ」
そう言って、ミオが周囲に結界を張る。
これで、余程強力な魔物が現れない限りは、大丈夫だろう。
という訳で、俺とミオとプルムの三人は、周辺を調べる事に。
「先ずは人里を探すのじゃ」
「そうだな。だが、手分けして……というのは危険だ。効率は悪いが、三人固まって行こう。プルムは、プルム・ファイブに異変があれば、わかるんだよな?」
「うん。だけど何となくだから、あまり期待され過ぎると困るけどねー」
ミオから結界があるので大丈夫だとフォローもあり、早速周囲を見て回る事にしたのだが、あくまでメインは玄武を助ける事なので、あまり時間はかけられない。
周囲に全く人が住んでいなければ、何か別の手を――例えば、アマゾネスの村から何人かこの辺りに住んでもらう――などといった事を考えないといけないのだが、ニースたちの居る場所の南から半時計周りで北東へ周って行った所で、人を発見した。
発見したのだが……森の中で薬草を探していた女性で、話が出来る状態ではなくなってしまったが。
「お願いします……挨拶されただけで身体の奥が熱くなる事なんて、初めてなのです!」
「ちょっと待ってくれ。俺は、近くに村がないか聞きたいだけで……どうして、服を脱ぐんだよっ!」
「アレックスよ。満足させた方が早いと思うのじゃ。あと、一緒に我らも満足させてもらいたいのじゃ」
名前も知らない、俺より少し年下に見える初対面の女性から迫られ、ミオとプルムが便乗して迫って来て……くっ! 俺は、温泉に客を呼べるかどうかの調査をしに来ただけなのに。
あぁぁぁ、結衣まで出て来たーっ!
……結局、四人から迫られ、分身を使う事になってしまい、責任を取る事に。
「アレックス様。向こうに、小さいですが村がありますので、ご案内致しますね」
「あぁ、ありがとう。だけど、まず服を着ような」
「えぇー……仕方ありませんね」
それからミオとプルムにも終わりを告げ、村があるという方向へ向かって歩いて行くと、村へ着く前に畑があり、そこで作業をしていた女性が俺たちに気付く。
「あら? マーガレット。そちらの方々は……あ、あれ? どうしてだろう。その人を見ていると、何故かドキドキしてきて……」
「お母さん。あのね、私……この人と結婚するの!」
「まぁ……ど、どうしましょう。だ、ダメよ。娘の夫となる人なのに……でも、どうしてこんなに身体が疼くの!?」
って、先程森で出会った女性――マーガレットというそうだが――の母親だったのか。
三十歳くらいに見えるが……とりあえず、既婚者はダメだ! いや、既婚者でなくてもダメなのだが。
そう思っていると、
「≪隔離≫」
ミオが俺たちの周りに結界を張り、母親が中へ入れないようにしてくれた。
良かった。俺は外へ出られなくする結界スキルしか使えないからな。
「……って、ミオ。どうしてマーガレットの時は、この結界を張ってくれなかったんだ?」
「そんなの決まっておるのじゃ。あの時は、我もそういう気分だったからなのじゃ」
「そ、そうか。とりあえず、この結界を張ってくれたのは助かるよ」
ミオに礼を言い、改めてマーガレットの母親に先ずは挨拶する事にした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます