挿話3 パーティメンバーから問い詰められる、勇者ローランド
「エリーさん。ちょっとだけ来ていただけますか? 以前にお問い合わせいただいた冒険者証の件についてです」
エリーが冒険者証についてギルドへ質問していたらしく、どこかへ連れていかれたが……まぁすぐに戻って来るだろう。
案内された部屋で待っていると、
「失礼。ローランド殿……この度のパーティへのお誘い感謝する」
「おぉっ! モニカ。早かったな。今、パーティメンバーが席を外して居るから、少し待っていてくれ」
新たなパーティメンバーとなるモニカが時間通りにやって来た。
ふふっ……相変わらず、エロい身体をしてやがる。前に会った時よりも、露出が増しているし……俺を誘っているんだな。
邪魔なアレックスを追い出したし、エリーとステラ、それにモニカも……全部俺の物にしてやる。
「お待たせー……って、あ! えっと、モニカさんですか?」
「はじめまして。ローランド殿から聞いていると思うが、マジックナイトのモニカだ」
「こちらこそ、はじめまして。えっと、アークウィザードのエリーです」
エリーがモニカと握手を交わしたので、ステラの事も紹介しておいた。
さて、後はギルドへパーティの申請をするだけだな。
「さて、全員揃った所で、本題に入りたいんだが……」
「全員? アレックス様が見当たらないのだが」
「アレックス……様? いや、まぁいい。アレックスなら今朝パーティを抜けたんだ」
「何だって!? 何故だ!? ……いや、理由は言わなくてもいい。とにかくアレックス様がこのパーティから抜けたのは事実なのだな? だったら急がなくては!」
モニカは一体何を考えているのか。よく分からない事を言ったかと思うと、席を立ちやがったぞ!?
これは、どういう事なんだ!?
「ま、待て。モニカ、どこへ行く気だ!?」
「どこって、ギルドの受付に決まっているだろう。このパーティを抜けたという事は、今アレックス様はフリーだという事。ならば私は、アレックス様とパーティを組む」
「ど、どういう事だ!? モニカ、話が違うぞっ!?」
「話が違うのは、貴方も同じだろう? ローランド殿。私はアレックス様と一緒にパーティを組みたかったのだ。それなのに、そのアレックス様が居ないのであれば、私はこのパーティに用は無い」
「……そういう事か。モニカ、アレックスはパラディンで、勇者は俺だぞ!? 勘違いしているじゃないか」
先程からアレックスの事を様付けで呼んでいるから変だと思っていたのだが、どうやらモニカは俺とアレックスのジョブを逆だと思っているようだ。
魔王を倒す使命を神から使わされた特別なジョブ、勇者を授けられたのはアレックスではなく、この俺だ。
エリーは幼馴染だから呼び捨てで、ステラはさん付けだが、モニカのような巨乳美人から様付けで呼ばれるのは悪くないな。
ふっふっふ……既に勇者という存在に対して、これだけ畏まっているんだ。
俺の物にしてしまうのに、時間はそんなに掛から無さそうだな。
一先ずモニカを席に着かせる為、立ち上がって手を取ろうとすると、
「汚い手で触るなっ! 男で私に触れて良いのはアレックス様だけだ」
目にも止まらぬ速さで動き、腰の剣に手をかけやがった。
「おいおい、落ち着けって。さっきも言ったけど、勇者はアレックスじゃなくて俺だって言っているだろ」
「勇者? そんな事はどうでも良い。私は、命の恩人であるアレックス様の傍に居たいだけだ」
「は? 命の恩人……って、どうしてモニカが……」
「ローランド殿は、防御やパーティメンバーの連携を全てアレックス様に任せ、好き勝手に敵を攻撃するだけ。そんな事だから、戦いの最中に周辺で何が起こっているかを把握していないのであろう」
「な、何を言っているんだ!? このパーティのリーダーは俺で、アレックスは魔物の攻撃を避けられないだけ……」
「だったら、そう思っていれば良いだろう。私は、アレックス様の許へ行く。一先ず、昨日ローランド殿が持ち掛けて来た、パーティ勧誘の件は無かった事にしていただきたい」
モニカが一方的にそう言い放つと、部屋を出ていく。
何故だ!? どうして、あんな巨乳美人が愚鈍なアレックスなんかとパーティを組みたがるんだ!?
せっかく、見た目が良いから俺の……勇者のパーティに入れてやろうと思ったのに!
「……クソッ! 何なんだよ一体!」
「それより、ローランド。説明して。アレックスがパーティから出て行ったのは今朝なのに、昨日の時点でモニカさんを勧誘していたの!?」
「そ、それは……こ、このパーティの攻撃力を高めようとしてだな……」
「ふぅん。どうして、それを事前に説明してくれなかったの? ステラはそんな話を聞いてた?」
若干目に怒りの感情が籠るエリーに聞かれ、ステラが無言で首を横に振る。
マズい。考えろ……考えるんだ!
エリーは幼馴染のよしみで、有耶無耶に出来るはず! とにかく、ステラを抑え込まなくては。
「ねぇ、ローランド。ちゃんと答えて」
「そ、それは、モニカが優秀な人材で、他のパーティに取られるかもしれないから、一刻も早く勧誘しなくてはならなくてだな……」
「ローランドさん。モニカさんは、ずっと誰とも組まずにソロでやって来た人ですよ? それなのに、一刻一秒を争わないといけないなんて……有り得ますか?」
目が少しも笑っていないエリーと、ジト目のステラに詰め寄られ、しどろもどろになりながらも、何とか言い訳をして押し通す。
クソがっ! 俺は勇者なんだぞ!? それなのに、どうして上手くいかないんだよっ!
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