第117話 リザードマンの村との交易における課題
「……フィーネ殿は凄いな。上の口と下の口で、同時にご主人様のを飲むなんて。私ももっと頑張らなくてはな」
「いや、そんな事に関心していないで、モニカはフィーネにちゃんとした知識を教えてくれよ」
「ご主人様。私は間違った事は教えていませんよ? 少なくとも、お尻で子供が出来る事はありません!」
何の話をしているんだ……と、モニカに頼んだ時点で人選ミスだったという事にようやく気付いた。
エリーには断られてしまったし、誰が適任なのだろうか。
……そうだ。メイリンは魔法人形を我が子のように思っているし、適任かもしれない。
一先ず、今は東の家に先行してもらっているソフィたちに追いつくため、三人で小屋の傍にあるお風呂へ入って身体を綺麗にすると、
「じゃあ、フィーネ。俺とモニカはリザードマンの村へ行ってくるから」
「はーい! アレックス様、頑張ってくださいね!」
フィーネに見送られながら、モニカと共に急いで東へ移動する。
俺はパラディンというジョブの為、敏捷性はそれほど高くは無いけど、体力があり、おまけに超回復スキルがあるので、休みなしに走り続けていると、
「ご、ご主人様。お、お腹が……」
一緒に走るモニカが、苦しそうにお腹を押さえていた。
「大丈夫か? 治癒魔法を使おうか?」
「いえ、治癒魔法とかではなく、お腹の中に残っていたご主人様のアレが漏れてきて、下着が……」
「じゃあ、俺は先に行くから」
「ご主人様ぁぁぁっ!」
結局、ソフィたちに追いつけないままに、東の家に到着し、
「アレックス、随分遅かったのね。一体、どういう教え方をしていたのかしら?」
「いやその……うん。ま、また後で説明するよ」
ジト目で俺を見てくるエリーを宥める事に。
「マスター。一先ず、二つある荷車の内の一つを運びますが、一度に二つとも運ぶ必要がありますか?」
「いや、当初話して居た準備期間よりも、かなり早いからな。一先ず片方だけを運び、残りは後で持って行く事にしよう」
「承知致しました」
早速ソフィが荷車を引き、俺もサポートに回る。
後は前回と同じモニカ、エリー、ユーディット、サクラとサクラの人形というメンバーで、それぞれ荷車の前後左右を歩く事に。
トンネルを抜け、サクラの先導によりリザードマンの村を目指して進むのだが、
「これは……歩いて行く分には気にならなかったが、荷車を引いて行くとなると、道が悪いな」
獣道のような、細くて荒れた道しかないので、ソフィが大変そうだ。
「そうね。よく考えたら馬車が通る道なんかは、ちゃんと平らに整備されていたり、轍があったりして、進み易いわね。今後も定期的に交易をするのであれば、この悪路は何とかしたいわね」
「……一先ず、洗濯装置も無事に設置完了となりましたし、次は運搬用の小型ゴーレムの開発に取り組みたいと思います」
「道を良くするのであれば、これもリディアの精霊魔法を使うのが良い……のか? 次回までにリディアと相談だな」
エリーが俺たちの生まれ育ったフレイの街の話をしたり、ソフィが次の開発対象を決定したりと、そんな話をしつつ、時々現れる魔物を軽く倒して進んで行き、
「アレックス。村が見えて来たよー!」
ユーディットが教えてくれて、ようやくリザードマンの村へ到着したと安堵する。
しかしながら、整備されていない道で荷車を引いてきたからか、前回歩いて来た時よりも時間がかかり、陽がかなり傾いてしまっていた。
「マスター、申し訳ありません。移動にかなりの時間を要してしまいました」
「いや、何を言っているんだよ。ソフィが居なければ、もっと時間が掛かっていたからな?」
一先ず、前回同様にリザードマンの長、ヌーッティさんを呼んでもらうと、
「アレックス殿!? な、何と、たった一日でこれだけの鉄器を用意されたのか!? す、すまないが、こんなにも早いとは思っておらず、まだこちらは品物が集まり切っていないのだが」
荷車の中身を見て驚愕と困惑の表情を浮かべる。
「いや、これはまだ依頼された分の半分だ。運搬の都合で、一先ず半分だけ持っていただけだから、気にしないでくれ」
「なるほど、そういう事か。しかし半分にしても早いな。……とりあえず、その鉄器はうちの村の者に運ばせよう。とりあえず、アレックス殿たちはこちらへ……おい、客人を案内してくれ」
ソフィが運んでくれた鉄器をリザードマンたちへ引き渡すと、ヌーッティさんの家の奥へと案内された。
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