第118話 リザードマンたちによる歓迎の宴

 ヌーッティさんの家の奥、随分と広い食堂のような場所へ通される。


「こちらの席で、暫しお待ち下さい」


 そう言って、案内してくれたリザードマンが俺たち一人一人に席を指定して座らせると、慌ただしく奥の部屋へ入って行く。

 何をするのかと思って待っていると、


「すまない。まさか、ここまで早いとは思っておらず、大したもてなしは出来ないのだが……自宅だと思ってくつろいで欲しい」


 ヌーッティさんが数人のリザードマンと共に奥から出て来た。

 そのリザードマンたちは、何やら魚や野菜が乗った大きな皿を手にしており、俺たちの前に置いていく。


「我らリザードマンの村と、アレックス殿たち拒絶の壁の上の村の更なる発展の為、是非懇意にさせていただきたい」


 なるほど。歓迎の席を開いてくれたのか。

 これは、断る訳にはいかないな。


「こちらこそ、是非お願いしたい。今回は鉄器しか持って来なかったが、次回はこちらで採れる作物も持って来よう」


 俺の両脇にヌーッティさんとユーディットが座り、双方の地形の話や採れる作物の話、周辺に現れる魔物など、暫く情報交換を行い、お開きとなる。


「少し離れた所に、客人用の家を用意している。今日はもう遅いので、泊まっていって欲しい」

「突然押し掛けてしまったのに、申し訳ない。甘えさせていただくよ」

「いや本来であれば、こちらから伺わなければならない所なのだ。気にしないでくれ」


 ヌーッティさんの家を出て、客人用という家に案内してもらうと、中は大きな部屋が一つと、小さな部屋が四つあった。

 風呂は無いが、代わりに綺麗な水の入った桶と、タオルが置かれている。

 これで身体を拭くのだろう。

 とりあえず、誰をどこの部屋にするかと決めようとしたのだが、


「アレックスはー、私とー、同じ部屋よー!」

「だったらぁ、私も……ご主人様と一緒に寝るのぉー!」


 エリーとモニカの様子がおかしい。

 いや、いつと通りと言えばいつも通りなのだが……やけに顔が赤いな。


「アレックス様。どうやら、この二人は酒に弱い様子。ですので、今宵の相手は拙者が務めさせていただきます」

「酒? サクラ、どうして酒の話が出てくるんだ?」

「どうして……と言われましても、先程の席で酒が出ておりましたので」

「えっ!? そうなのか!?」


 俺が飲んでいたのは、ただの水だったと思うのだが、平然としているユーディットとソフィに聞いてみると、


「私はお水だったよー」

「マスター。私も蒸留水でした」


 二人は俺と同じく水だったらしい。


「私の人形も水が出されておりました。おそらく、容姿で子供と判断された者には、酒が振る舞われなかったのかと」

「え? 俺も子供だと思われたのか?」

「いえ。アレックス様には私と同じ容器から飲み物が注がれていたので、酒だと思われます。あまり強くない酒でしたので、アレックス様が酒だと認識しておられないのではないかと」


 なるほど。

 シェイリーの所で魔物酒を飲んだ時に知ったが、パラディンの状態異常耐性のおかげか、俺は酒では酔わないみたいだしな。


「サクラ。人形経由でメイリンに、こっちの村へ泊まる事を伝えておいてくれないか?」

「大丈夫です。既に連絡済みです」

「そうか、流石だな。助かるよ」

「いえ。それより、メイリン様……というか、家に居る女性陣が拗ねていますので、明日は頑張ってくださいね」

「そ、そうだな」


 こっちへ来ていないのは、リディア、ニナ、ノーラ、フィーネにメイリンか。

 レイは別に拗ねたりしないだろうが、五人を宥めないといけないのは大変だな。

 家に帰った後の事を想像して、どうしたものかと考えていると、


「じゃあー、こっちの大きな部屋にー、私とアレックスねー! アレックスとえっちしない人はー、それぞれ空いている部屋で寝ってくっださーい!」


 変な喋り方のエリーが、俺の手を引っぱり、奥の部屋へ行こうとする。


「お、おい、エリー」

「アレックスー。エリーが言っていた、えっちって何ー? 何をするのー?」

「ゆ、ユーディット!? しまっ……ち、違うんだ。俺たちは普通に寝るだけで、別に何もしないぞ」

「じゃあ、私もアレックスと一緒に寝るー!」


 マズい。マズい、マズい、マズい。

 エリーは酔っているから、ユーディットが同じ部屋に居ても、そんなのお構いなしにいつも通りの行動をとりそうだ。

 アレを幼いユーディットに見せる訳にはいかないし……そうだ!


「≪リフレッシュ≫……って、酔い過ぎていて、俺が使える中位の魔法では治せないっ! ゆ、ユーディット。エリーに状態回復魔法を使ってくれないか?」

「んー、私も中位の神聖魔法までしか使えないから、同じだよ? それより、早く寝ようよー」

「そうですよぉ、ご主人様ぁ。早く寝ましょうよぉ。あ……それともぉ、このままお散歩に行きますか?」


 いつの間にか混ざってきたモニカが、もう全裸になってたーっ!

 というか、全裸お散歩プレイはタバサが言っていただけで、俺にそんな趣味はないのに、


「マスター。その格好で外を歩かせ、他種族の村に迷惑をかけるのは、どうかと」


 ソフィからジト目を向けられる。

 違う! 違うんだぁぁぁっ!

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