第158話 空から撒き散らして居たアレ
「アレックスさん……凄かったですぅ。正に、天にも昇る気持ち」
「まぁ実際、天に昇りながらだったけどね」
「人間族の男性……イイっ! 私も人間族の夫を探そうかなー」
ユーディットを含め、天使族の希望者……もう何人居たのか分からないし、一人で複数回してきた者もいたけど、ようやく解放されるらしく、フワフワと地面に降りて来た。
ちなみに、最後はユーディットが綺麗にしてくれて、ズボンも履かせてくれたのだが……マジでヨハンナさんは何を教えているんだよ。
「お兄ちゃーんっ! 良かったー! ずっと空の上に居るんだもん。あのまま帰って来なかったらって思って、ボク……すっごく心配だったよーっ!」
「ごめんごめん。ちょっと色々あってね」
「ううん。帰って来てくれて良かった。けど、何か変な匂いがする。お兄ちゃんからも、ユーディットさんからも」
「き、気のせいじゃないかな?」
「んー、そうだね。天使さんたちからも同じ匂いがするし、きっとお日様の匂いかな」
ノーラ、すまん。
真っすぐに笑顔を向けてくれるけど、ノーラにはまだ早いんだ。
ノーラの頭を撫でていると、
「……アレックス。空から白いのとか赤いのとか、変な液がそこら中に降って来たんだけど、これは一体何なのかしらねー」
「な、何なんだろうな……うん。すまん」
「……まったく。ちゃんと、夜に同じ事をしなさいよねっ」
エリーが全てお見通しだと、耳元で囁いてくる。
いや、エリーだけではなく、リディアはエルフだからか、目と耳が良いから声が聞こえていたと言い、サクラもシノビだから聴覚を鍛えていると。
ミオも匂いで分かったらしく……要はバレバレだったという事だ。
「ご主人様が魅力的過ぎるので仕方がないとして……ところで、これだけの人数ですし、相当スキルを得たのでは?」
「ど、どうなんだろうな。特に俺は何も実感がないんだが」
「んー、そう言えば今回旦那様は光らなかったよね? 皆から、あんなに求められたのに」
モニカの言葉で、ユーディットが首を傾げる。
シェイリー曰く、体液の摂取で強くなるエクストラスキルは、同じ種類の魔物から強くなれるのは最初の一回だけらしい。
天使族という括りで、魔物扱いされているとか? いや、もちろん俺は天使族を魔物だなんて思っていないのだが、スキルの判定がさっぱり分からないからな。
「ユーディットちゃん。アレはちゃんと出来たかしら?」
「うん! ママの言う通りバッチリだよー! ありがと、ママー!」
「偉いわねー。ママは二人目が楽しみよ」
ある意味、今回一番の問題がヨハンナさんなのだが……久々の母娘の再会なので、不問としよう。
「ばーば。ママとなんのおはなししてるのー?」
「ユーリちゃんには、未だ少し難しいお話だけど、もしかしたら妹か弟が出来るかもしれないわよー!」
「いもうとー? わーい、いもうと、いもうとー!」
ふ、不問にはするが、それくらいで止めてくれないだろうか。
色々と後が怖いんだが。
というか、ユーリはマジ天使だから、変な事を教えないように。……本当はユーディットにも教えて欲しくなかったが。
「さて、久々にユーディットちゃんに会えたし、沢山お話もしたわ。当初はユーディットちゃんを連れて帰るつもりだったけど、アレックスさんが居るから連れて帰る訳にはいかないわね」
「え? ママ、もう帰っちゃうの!?」
「えぇ。ユーディットちゃんを助けるため、天使族の村に居る最低限の戦力を残して、戦える者を殆ど連れて来ちゃったからね。ママは一度帰らないといけないの」
「そっかー。でも、ごめんね。私は旦那様の傍に居るから……」
「勿論よ。今は幸せにしてくれるアレックスさんが居るんだから、ユーディットちゃんはこっちに残りなさい。というか、またすぐに来るしね」
ん? どういう事だ? ここから天使族の村は近いのか?
「アレックスさん。あっちにある魔法陣を少し直させてもらっても良いかしら?」
「構わないが、何をする気なんだ?」
「天使族の村との門を開くの。要は転送魔法ね」
「え? そんな事をして大丈夫なのか? こっちはともかく、天使族の村が」
「えぇ。あ、転送魔法とは言っても、天使族専用なのよ。天使族以外が入っても、起動しないのよ」
なるほど。そういう事ならまぁいいか。
誰かが間違えて入ってしまったら面倒だと思ったが、そういう事も無いらしい。
「良かった。また夜通し空を飛ばなければならないのかと思った」
「だよねー。ここまで遠かったもん。夜中にいきなりヨハンナ様に叩き起こされてさー」
「村まで飛んで帰るくらいなら、アレックスさんが居るここに永住したいくらいだもんねー」
おい、最後の……確か、アーシアだったか。
割と本気っぽいし、俺に熱っぽい視線を向けないでくれ。
後でエリーやリディアから……ちょ、エリー? 足っ! 俺の足を踏んで居るんだがっ! エリーっ!
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