第148話 本来の祭の始まり
「え、えーっと、何か楽器があった気がします」
「楽器か……なるほど。確かに祭には音楽が要るよな。でも、魔族領に楽器は無いんだよな」
サクラの故郷の祭を行おうとしたものの、治癒魔法を使っても、肝心のサクラが目覚めないので、代わりにメイリンに聞いてみた。
が、王族なのでアタツ神を祀るという、庶民の祭には詳しくないらしい。
祭典とかは詳しそうだけど、まぁ仕方がないか。
「では、ご主人様。楽器の代わりに、私は如何でしょうか? ご主人様のアレを挿れてくだされば、良い声で鳴きますよ?」
楽器の話をしていたら、フィーネに秘密兵器を作って貰ったと言うモニカが意味不明な事を言って来たが……うん。全力で無視しよう。
「んー、木で打楽器くらいなら作れるかなー? あんまり自信はないけど」
「打楽器なら……私のお尻なんてどうでしょうか? 引き締まっており、良い音がするかと」
楽器を作ると言うノーラに対抗? したモニカが二度よく分からない事を……しかし今日のモニカは、グイグイくるな。
「やはりサクラに話を聞いて、ちゃんと準備してからやろうか。日を改めて」
そもそも祭は突発的にする物ではないと反省し、延期を提案すると、ノーラとモニカが口を尖らせる。
「えー、お兄ちゃん。せっかくだし、お祭りしようよー!」
「そ、そうです! 私は今夜のぶっかけ祭を楽しみにしているんです! 今日の祭は、私が優勝するんです!」
「え? アタツ神っていう女神様をお祝いするんじゃないのー? 何か勝負するみたいだけど、ぶっかけ祭って?」
「ふふ……ノーラ殿には少し早いが、皆で横一列に並び、ご主人様にアレを……おふっ! ふっふっふ……おまじないの効果が、早くもご主人様からスキンシップを……」
いや、モニカはノーラ相手に何を言っているんだよっ!
というか、デコピンをスキンシップと言うのか?
「あれー? お祭りはー? 何を話してるのー?」
「ん? あぁ、サクラの故郷の祭を開くつもりだったんだが、内容が誰にも分からなくて困っていたんだ」
「そうなんだー。じゃあ、私の……天使族のお祭りするー? えっとねー、真っ暗な場所で火を焚いて、それを皆で囲って歌ったりするんだよー」
「おぉ、何だか楽しそうだな。楽器なんかの準備物は要るのか?」
「楽器はあっても良いけど、無くても大丈夫だよー。強いて言うなら……あ、うん。一番大事な物は私が用意出来るから、火をつけて燃やし続ける木が多めに欲しいかな」
「わかった。じゃあ、そっちは俺たちで準備しておこう。場所と時間は……」
急ではあるが、それ程準備が大変では無いと言う事なので、全員協力して作業にあたる。
俺はメイリンと共に人形たちを連れ、祭会場の作成を行う。
西側の地が空いているので壁を広げ、畑四つ分くらいの場所を確保した。
ゴレイムとシーサーが木を運んで来て、エリーが風魔法である程度の大きさに切っていく。
フィーネやミオが食材を集めると、リディアが料理を沢山用意してくれて、ノーラが作ってくれた簡易なテーブルやイスへモニカが並べていく。
ソフィとレイは、祭を盛り上げる物を作ると言い、二人で協力して何かを作っているそうだ。
うん。こういう、皆で協力して一つの事をするって良いなぁ。
「ご主人様。そろそろ……そろそろ祭を始めませんか? 日も落ちましたし」
「いや、まだ準備中だし、そもそもユーディットが一番大事な物の準備をしているから、待ってくれって言っていただろ」
「しかし、もうアレが疼いてしまって……」
「ん? やけにモジモジしているが……って、モニカ? 変にスカートが膨らんでいないか?」
モニカのいつもの短いスカートが前に持ち上がっている気がしたんだが、暗くてよく分からないと思っていると、
「アレックスー! お待たせーっ! 準備出来たから、始めよー!」
暗闇の中にユーディットの声が響く。
「分かった。今行くよ! ……良かったな、モニカ。もう始まるみたいだぞ」
「……やっと。やっとご主人様に……今夜は、祭だーっ!」
妙に息の荒いモニカだったが、どうやら単に祭が待ち遠しかっただけらしい。
一先ずモニカと共に祭の会場へ移動すると、かなり辛そうだがサクラも起きていた。
「サクラ、大丈夫か?」
「何とか。五回出していただいた後から記憶が無く……しかし、レイ殿の話では二桁はしていたと」
「えっ!? ご主人様!? 今のは何の話ですか!? 祭はこれからですよね!?」
俺とサクラの話を聞いていたモニカが、何やら焦りだすが、祭はこれからに決まっているじゃないか。
さぁ祭を楽しもう。
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