挿話136 新たなスキルを得るローランド
「ひぐぅっ! ご主人様ぁ……」
「うむ。俺もそろそろだ……っ! ふぅ。よし、お前たち。綺麗にしろ」
「はいっ!」
イービルスキルの隷属スキルのおかげで、俺好みの配下が五人に増えた。
そして今日も最前線へ赴き、配下の者たちに愛を注いでやりながら、勇者たちを待つ。
「ダークナイトッ! 俺たち風の国の勇者が、貴様を倒すっ!」
「やっと一組来たが、四人か。少ないな」
男が二人と、女が二人。
格好からしてみても、男が前衛で女が後衛だな。
「≪職業鑑定≫……ご主人様。左から順に、剣聖、勇者、ウィザード、プリーストです」
「ふむ。剣聖というのは初めて見るな。だが……俺好みではない。いつも通りで良いぞ」
「はっ!」
五人の元勇者が飛び出し、いつものように勇者と聖職者を除いた、剣聖とウィザードを殺す。
次いで、勇者とプリーストの脚を斬り捨てた。
「ご主人様。どうぞ」
「うむ。ご苦労」
瀕死の勇者とプリーストだけが残った状態で、俺が呼ばれ……先ずはプリーストの首を刎ねる。
「助け……っ!」
「ふむ。確かこれで、四十……八か九といったところが。あと一人聖職者を倒せば、また何かスキルが得られそうだな」
次はどのようなイービルスキルが得られるのかと考えていると、瀕死の勇者が話しかけてきた。
「ダークナイト……この人たちに、何をしたっ! この力は……俺と同じ勇者の力だ!」
「ん? あぁ、俺のスキルで配下にした。お前も俺好みの容姿だったら部下にしてやったんだがな……死ね」
「がっ! 配下にするスキルなんて話が違……」
ん? 死ぬ間際に何か言いかけたが……俺の情報が勇者たちに共有されているのか?
「ご主人様……南西に、こちらを伺う者が居ます。殺して良いでしょうか?」
「……俺も行こう。殺さぬ程度に、逃げられないようにしておいてくれ」
「はっ!」
探索系のスキルを持つ勇者三号が先行し、他の勇者たちが後に続く。
勇者四号の鑑定スキルも便利だし、有能で俺好みの者であれば、もっと配下を増やしたいところだ。
「ぐあっ!」
男の悲鳴が聞こえた後、元勇者たちが隠れていた者の脚と腕を切り落とし、俺の所へ運んで来た。
「ご主人様。魔法を使うかもしれませんので、少し離れてください」
「ふむ。こいつのジョブは?」
「神殿騎士となっておりますね」
「なるほど。中央神殿は俺が潰したが、あれが全てではないという事か」
まぁ今も勇者たちが何組も来ている訳だから、勇者を管理している神殿は他にもあるのだろう。
「とりあえず殺しておくか」
「待ってくれ! 私は……っ!」
問答無用で首を切り落とすと、以前に聞いた暗い声が聞こえてきた。
『お前は、神に仕える聖職者を五十人殺した。褒めてやろう』
「来たか。待っていたぞ」
「あの、ご主人様? 一体何が来たのでしょうか」
勇者一号が不思議そうにしているが、どうやらこの声は俺にしか聞こえないらしい。
神殿騎士も聖職者に含まれるのかと思いつつ、謎の声に問いかける。
「さて、今回はどんなスキルをくれるんだ?」
『そうだな。お試しで与えた隷属スキルは気に入ったようだが、これをお試しでなく、普通にしてやろうか? 相手に触れるだけで隷属状態に出来るぞ?』
「いや、今のままで良い。触れるだけで堕とすなど、面白くないからな」
『そうか。まぁお前の趣味にどうこう言うつもりはない。それならば……そうだな。人の悪意を読み取れるようにしてやろう』
「悪意を読み取る?」
『あぁ。これも実際に使ってみた方が早いだろう。付与してやったから、あとは自分で試すが良い』
そう言うと、俺の周りを黒い光が包み込み、あの暗い気配が消えた。
その直後、
『ダークナイトが黒い光に包まれた!? これは更に強化されたという事か! これはすぐに報告し、対策を講じなければ!』
左手から聞きなれない声が聞こえてきた。
何の気配も感じられないが、何となく剣を投げてみると、何もない場所で剣が止まり、腹から血を流す男が現れる。
『何故だ。俺の隠密スキルは完璧なはずなのに……』
「ご主人様っ! 流石です! 私のスキルでも発見出来ない敵を見つけ出すとは!」
「殺せ」
「はっ!」
なるほど。敵の心の声が聞こえるのか。
しかも探索系のスキルを超える効果がある。
ふふっ、悪意が読み取れるスキルか。
いろんな事に使えそうだな。
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