第258話 S級マジック・ポーション
「えぇー!? 何でなん!? 何で誰もポーションを買ってくれへんの!?」
案の定というか、予想通りポーションが売れない。
かなり高級なマジックポーションの三倍の価格だからな。
それに、マジック・ポーションを必要とするのは、冒険者や騎士団だから……ジュリに自警団内で売ってもらうのが正解に思える。
まぁジュリも自警団の仕事があるだろうし、圧倒的に男性の方が多いそうなので、今回のポーションは難しいが。
「レナ、方針を変えよう。商人ギルドで買い取ってもらう事にしよう」
「うー。お父さんがそう言うなら……」
レナが渋々と言った感じで了承し、ついて来てくれていたマミに案内してもらって商人ギルドへ。
……初めて来たが、冒険者ギルドの雑多な感じとは違い、整然としていて全て個室でやり取りをするようだ。
冒険者ギルドは、基本的にカウンターでやり取りし、特殊な場合のみ個室といった感じだったので、珍しく思いながら案内された部屋へ。
「それでは、マジック・ポーションの買取というお話しでしたが、お品物はどちらでしょうか」
「これやで。量は小さいけど、普通のマジック・ポーションより、めちゃくちゃ回復するんや。ただ、ちょっと条件というか、クセがあるんやけど」
「そうですか。では確認させていあだきますね。≪アイテム鑑定≫」
おぉ、流石は商人ギルドだな。鑑定スキルが使えるのか。
目の前に居る女性職員の様子を伺っていると、
「これは……凄いですね。効果がS級のマジック・ポーションは初めて見ました」
「ふふん。凄いやろ? ウチのお母さんが作ってん!」
「なるほど。しかし、ほんの僅かですが、魅了効果があるようですね。数本では何とも無さそうですが、大量に飲むと魅了状態になってしまうのは困ったものですね」
えっ……そんな効果があったのか。
それはポーションとしてはダメな気がするんだが。
「なるほど。ほな、魅了効果は除去出来る様に調整してみるわ」
「そうしていただけると助かります。あと、魔力の回復も魅了効果も、女性にしか有効では無いようですが、これは男性にも有効になりませんか?」
「んー、使ってる材料がちょっと特殊やから、難しいかもなー」
「そうですか。……しかしながら、これら二つのマイナス要因はあるものの、効果は絶大ですからね。……一本あたり、これくらいで如何でしょう」
「いやいや、効果が凄いのは認めてくれてるやろ? ……これくらいで」
えーっと、レナというかレイは、薬を作るだけでなく、こういう交渉までするのか。
いやまぁ旅の薬師だと言っていたし、こういう能力も必要なのだろう。
暫くギルド職員とレナがやり取りを続け、
「……では、今回はこの金額で」
「しゃーないな。魅了の効果が消せたら、少し増やしてやー」
いつの間にかレナが大きな麻袋を手にしていた。
その袋を渡され、共にギルドを出ると、
「うーん。もうちょいイケたかもしれんけど……ウチもまだまだやなー」
完全に扉が閉まった所でレナが悔しそうに呟く。
「いやでも、これってかなりの大金じゃないのか?」
「せやけど、普通のマジック・ポーションの約二倍にしかならんかってんで。あんなに凄い効果があるのに。……まぁ、さっきの女性は知らんやろうけど、材料費はタダで、製作する時間しか掛かってへんから丸儲けやねんけどな」
詳しい材料は知らないが、俺のアレとモニカやユーディットが作る聖水に、リディアが生やす薬草の類だろうからな。
「それって、詐欺ではないポン?」
「いやいや、その材料がめちゃくちゃ貴重やから。偶然、お父さんたちが生み出せるだけであって、普通はそう簡単には手に入らへん物ばかりやねん。特に一番重要な、お父さんのアレは他では絶対に入手出来へんからね。……さっき、ジュリはんの家で大量に採取したけど」
マミが不思議そうにしているが、まぁ知らない方が幸せな事もあるだろう。
というか、俺も知りたくなかった。
そんな話をしていると、近くを歩いていた男が突然俺の側に走りだし、
「貰ったぁー……痛ぇっ!」
何処からともなく飛んで来たナイフが腕に刺さる。
あー、この貨幣が入っている麻袋を狙ったのか。
「ツキ。前にも言ったが、刃物は危ないぞ?」
「あの、私も前にお伝えしましたが、父上に殴られるよりかはマシかと」
少し離れた場所で待機していたツキを見つけ……また、よく分からない話になってしまった。
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