第479話 イネスに腰を治して欲しいアレックス

 二十六倍の腰痛で、一時分身を消したのだが、女性陣から物凄く悲しそうな目を向けられ、結局全員を満足させるまで頑張る事になってしまった。

 この腰痛問題は何とかならないだろうか。


「あっ! しまった! リディアは大丈夫なのか!?」

「はい。天后さんのスキルによる分身さんは、アレックスさんとしている時のように優しいです」

「私は女性の守護者ですの。分身にも、アレックスの優しさが表れるのですわ」


 なるほど。改めて分身系のスキルについて整理すると、普通の分身は俺を含めて九体になるんだよな。

 で、ドロシーからもらった複製スキルは、ドロシーかモニカがベースになっているからか、九体の分身が全裸で現れ、ハードな行動を取る。

 さっき天后からもらった逢瀬スキルは、一体身体が無いので、八体の分身が現れ、ゆっくりと優しい行動を取るのか。


「ご主人様。お身体が辛そうですので、私の転移スキルでイネスさんの所へ行かれますか?」

「そうだな……だが、途中途中で時間が取られるのと、それでまた腰にダメージを受けかねないからな」

「ふむ。アレックスよ。では、先ほどの天后のスキルで魔族領の家に分身を出し、分身にマッサージをしてもらえば良いのじゃ。分身と感覚を共有しているのであろう?」


 モニカとの話を聞いてミオが良い提案をしてくれた。

 逢瀬スキルで、魔族領にいるエリーと話せるかの確認も含め、早速使ってみる事に。


「エリー、聞こえるか?」

「えっ!? アレックス!? ……あれ? 声が聞こえた気がしたんだけど……」

「いや、俺だ。新しいスキルで、離れた所からエリーと話せるようになったんだ」

「そうなんだ。それなら少しは寂しさが紛れるわね」

「寂しい思いをさせていて、本当にすまない。……だが、その、少しイネスに頼みたい事があって、呼んでくれないだろうか。このスキルはエリーとしか話せないんだ」

「私だけ? ……えへへ。ちょっと待っててね」


 エリーがイネスを呼びに行く為に移動すると、俺の視線も一緒に動く。

 なるほど。このスキルは、対象の相手と会話する位置……エリーの正面に、俺の位置が固定されるのか。

 俺の視界には、ご機嫌な様子のエリーの顔が常に映っているが、一緒に映る景色からそれなりに周囲の状況もわかるようだ。


「イネスさん。アレックスさんがお話ししたいそうだから、私の部屋に……」

「いや、大丈夫だ。今はイネスの部屋なのか?」

「え? えぇ、そうだけど……どうするの?」

「こうするんだ…… ≪分身≫」


 困惑するエリーの前で分身スキルを使用すると、


「わぁ! アレックスさんが沢山! エリーさんが大きな独り言を言い出した時は驚きましたが、こんな事が出来るのですね」


 イネスが驚きと喜びの声をあげる。


「という訳で、エリー。イネスに俺の分身はマッサージしてくれるように頼んでくれないだろうか……って、エリー? おーい、エリー……ちょっ、何をしているんだっ!?」

「何って、せっかくアレックスが居るんだから……ね?」

「ね? じゃなくて、俺はイネスに腰を……って、イネス!? それはマッサージじゃないよな!? イネスっ!?」


 それは俺へのダメージを増やすだけだっ!

 逆……俺は腰を癒して欲しいんだっ!


「アレックス様の香りがしますっ! フィーネも混ぜてくださいっ!」

「私もー! お兄さんが遠く離れているから、辛すぎるよーっ!」

「マスター。魔力の補給をお願い致します」


 テレーゼやソフィも来たけど、違うぞっ!? 目的が全然違うんだっ!

 それから、ヴァレーリエやステラも来て、遅れてニナとノーラとコルネリアの小柄トリオも現れる。


「アレックス。ウチはもっと激しいのが良いんよっ! ……まぁウチが動けばいっか」

「アレックスさん。時々は私も誘って欲しいです。……こ、これぇっ! これなのぉーっ!」


 いや、マジで目的が違うんだ……って、待てよ。

 何やら変な感じがするな。

 目を開けて、逢瀬スキルではなく、自分自身の周囲を見てみると、レヴィアとチェルシーが俺のを奪い合うように……いや、マジで何をしているんだよっ!

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