第618話 アレックスと一緒に居たい二人

「ザシャ、シアーシャ。俺は少し出掛けて来るが……二人はどうする?」

「わ、私はアレックス様と一緒が良いです! 少なくとも、この玄武……ランランさんと一緒は嫌ぁぁぁっ!」


 まぁザシャはランランに良いように遊ばれてしまっているからな。

 魔族だが……まぁ俺が一緒なら問題ないか。


「わかった。ザシャは一緒に連れて行こう。で……シアーシャをどうするかだな」

「え、えーっと、私もアレックスさんと一緒に居たいというか、一緒に居ないと殺される気がしますの」


 シアーシャは不用意な言葉でヴァレーリエを怒らせているからな。

 とはいえ、一緒に連れて行くにしても、日光がダメだというのが困ったものだ。


「うーん。日傘くらいじゃダメだよな?」

「えーっと、直射日光ではない分、それなりにマシだとは思いますの。でも、あくまでマシな程度だと思いますの」


 まぁ、そうだよな。

 ただ、救いなのは、完全な闇でないといけないという訳ではない事か。

 今居る、この場所だって何処からか光が入って来ているから、皆の姿が見えている訳だからな。


「あ、あの……私、周囲を闇で覆う闇魔法が使えますけど」

「ザシャは、そんな魔法が使えるのか?」

「はい。普通に使うと、この部屋を全て闇で閉ざしてしまいますので、調整してシアーシャさんだけの範囲を覆ってみましょうか」

「そうだな。一度試してみようか」

「はい。では、ダーク・ティアラ」


 ザシャが両手を上に掲げ……何も起こらないな。

 ザシャも暫く手を掲げたままで居たんだが、突然俺たちの傍から離れてしまった。


「うぅ……は、恥ずかしい。あれだけ自信満々に言っておいて、失敗するなんて」

「あ、ザシャ。スキルや魔法の失敗くらい、誰にでもあると思うんだが」

「で、ですが……」


 とりあえず、そんな部屋の隅でしゃがみ込まずに、戻ってきて欲しいのだが。


「あ……もしかして、ジョブを封じているからかも」

「確かに。俺もジョブを封じられた時は、聖騎士のスキルが発動しなかったからな」

「仕方ないなぁ。はい、解除」


 ランランがあっさりザシャのジョブを解除すると、立ち上がったザシャがスタスタとこっちへ歩いて来た。


「あのさ。とりあえず、さっきのスキルは使うけど、このジョブを封印って、止めないか? もうアレックスさん無しで生きられない身体になっているし、変な事もしないからさ」

「えぇー、面白いのにー」

「いや、面白いって理由で私の性格を変えないで欲しいんだ。……はぁ。≪ダーク・ティアラ≫」


 ジョブの封印を解除されたザシャが改めてスキルを使用すると、部屋を闇が覆って真っ暗になる。


「この魔法を一人だけに使うなんてやった事がないから、ちょっと待っていてくれ。調整する」

「やだー! カスミちゃん、こわーい!」

「いや、絶対に怖がってないだろ。というかカスミなら、この暗闇の中でも見えているんじゃないのか……って、誰だ!? 変な所を触るなーっ! 咥えるなぁぁぁっ!」


 誰かが、闇に乗じて俺を襲ってきた。

 いや、本当に襲撃だったら抵抗するんだが、そういう訳でもないし、俺から攻撃する訳にもいかず、どうしろというんだ。


「ざ、ザシャ! まだか!?」

「も、もう少し……よし! 少しずつ絞っていくから……って、対象のシアーシャが居ないんだけど。あと、アレックスさんの身体が光っているのは何だ?」

「え? まさか、さっき俺の口に舌を捻じ込んで来たのはシアーシャなのかか」


 ザシャが一旦闇の範囲を小さく抑えると、カスミ、ヴァレーリエ、シアーシャ、ランランが俺の足下に居るのが明るみになったんだが……いや、マジで何をしているんだよ。


「あのなぁ。さっき十二分にしただろ」

「え!? ま、待って欲しいですの! 私は、それに参加させていただいておりませんのっ! こんなに立派な物を……考えただけで涎が出てしまいますのっ!」

「いや、だからって暗闇の中で……」


 何となく、シアーシャは残念美人というか、モニカを彷彿させる……あ、そういえば合流すると伝えたモニカの事をすっかり忘れていた。

 ……まぁモニカだし、大丈夫か。


「あ、アレックスさん。この芳醇な香りと魔力が溢れる子種はいただこうとしましたが、キスはしておりませんよ?」

「ん? でも、この中でスキルを貰っていないのは、シアーシャと……ザシャか?」

「あ、バレちゃった? いやー、いつもジョブを封印された状態でしていたから、たまには本来の私でしたいと思うだろ? ……まぁもっとやらかしているのが四人も居たけどさ」


 とりあえず、ザシャのスキルを使った状態だと、シアーシャが外に出られる事は確認出来たんだが……シアーシャの周りだけ暗いから、怪し過ぎるな。

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