第617話 体制変更

「さて、これからの行動について決めようか」


 シアーシャの命の危機が去ったという事で、全員衣服を整え、これからの事について決める事に。


「最初の目標は、西の大陸へ行く事だ。その次が白虎の居場所を探す事。おそらく、第二魔族領と呼ばれる場所に居ると思われる。そして、白虎を助けだす事が西の大陸での目標となる」

「アレックス。この北の大陸はレヴィアとずっと一緒だったんよ。今度こそ、ウチと一緒よね?」

「うーん。ヴァレーリエが赤竜に変身して空を飛ぶと、目立ち過ぎるんだよな」

「えぇーっ! レヴィアばっかりズルいんよー!」


 ヴァレーリエが口を尖らせるが、シーナ国だけでも大変だったからな。

 一方で、レヴィアも巨大な海竜に変身するが、水の中だから、それほど目立たない。


「えっと、やっぱりそちらの方は竜人族でしたの。でも赤竜と仰いましたが、確か赤竜は黒竜に……ひぃっ! 何でもありませんのぉぉぉっ!」


 シアーシャが何か言いかけ……これまでとは比べ物にならないくらいにヴァレーリエが怒り、俺が仲裁に入る。

 おそらく、シアーシャがヴァレーリエの根幹にある何かに触れかけてしまったからなのだろうが、これはヴァレーリエが俺に話してくれるのを待つべきだろう。

 ひとまず、今の話には触れず、西の大陸へ行くメンバーについて考える事に。


「ヴァレーリエは引き続き魔族領で何かあった時の防衛をお願いしたいのだが、こっちの第一魔族領に居てもらった方が良いのかもしれないな」

「あー、それは最悪の場合にレッドドラゴンになれって事ね?」

「あぁ。空を飛べる者は限られているからな」


 本当は、もっと身軽に空を飛べる天使族が適して居るのだが、ユーディットは妊娠しているし、ユーリは俺と一緒に西の大陸へ行ってもらおうと考えているからな。


「そうだ。ヤキトリもこっちへ来てもらうか」

「……アレックス様。それは、大丈夫かな?」

「というと?」

「えっと、ヤキトリって有翼族だから鳥っぽいよね? というか、元々鳥だったのがアレックス様のアレを食べて変身した姿だけど、この第一魔族領には猫耳族の人が多いよ?」

「さ、流石に大丈夫だろう……き、きっと」


 コルネリアから物凄い意見が出て来たが、いくらなんでも大丈夫だと思いたい。

 とりあえず、貴重な空を飛べる人材なので、こっちへ来てもらった方が良いだろう。


「あと、空を飛べると言えばマミか。ちょっと違うけど」

「あー、マミちゃんねー。シーナ国の行き来が、シェイリーちゃんの魔法陣で出来るなら、構わないんじゃないかしらー。勿論、マミちゃんの都合もあるだろうから、確認は必要だけど」

「そうだな。それに第四魔族領の東から、ウラヤンカダの村経由でシーナ国に入れるし、ひとまずマミに話を聞くか」


 マミは空を飛ぶ魔物を使役出来るし、一人くらいなら一緒に乗せる事が出来る。

 この第一魔族領と、北の大陸を行き来出来るかもしれないので、是非来て欲しいところだな。

 もちろんカスミの言う通り、マミの意志が優先だが。


「あ、そうだ。ウラヤンカダの村で思い出したけど、お兄さんは西の大陸へ行く前に、一度シーナ国の各街を回らないとダメよー?」

「ん? 何故だ?」

「何故って、シーナ国の各地に居る女の子たちが、すーっごく首を長くして、お兄さんが来てくれるのを待っているからよ。北の大陸に行っているからって何とか宥めてきたけど、ずっと放置していたら、魔族領まで押しかけて来るかもしれないわよ?」


 魔族領まで押しかけて……って、流石にそんな事はしないだろうと思ったものの、ネーヴあたりは本当に来そうだな。


「わ、わかった。西の大陸へ行く前に、一度シーナ国の状況を確認しようか」

「じゃあ、先ずは西の国へ行くメンバーの選出の前に、誰とシーナ国を回るかよねー。当然カスミちゃんは行くとしてー、各村の防衛とかも考えないとねー」


 情報収集を目的とするなら、カスミとナズナは必須だろう。

 早く西の大陸へ出発したいから、同行するのは機動力のあるメンバーに絞りたい……と考えていると、魔法陣から誰かが現れた。


「アレックス様。メイリン様と相談し、六体の人形をお連れしました」

「サクラ、ありがとう。じゃあ、この塔と野菜村、魚村に二名ずつ人形を配置しようか」


 あとは……コルネリアはテイムした莉子や美月の世話があるので、第四魔族領に戻ってもらうとして、ベルティーナは魚村へ。

 問題は、ザシャとシアーシャだな。

 ……どうしよう。

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