第616話 吸血族の女性シアーシャ
「……んっ! 美味しいっ! 何て美味しいんですのっ!? 今まで、イイ男の血が一番美味しいって思っていましたが、血よりも美味しい子種なんて、初めてですの」
奴隷解放スキルで現れた吸血族の女性が一心不乱に俺のを吸い上げ、嬉しそうに顔を綻ばせる。
話し方から悲壮感が消えたので、おそらく命の危機は去ったのだろう。
だが、
「……アレックス。分身してくれないの? ウチ、後ちょっとだったんよ」
「……お兄さん。カスミちゃんも、もう少ししたかったなー」
「アレックス様。フィーネもしたいですー!」
ひたすら俺のを咥える吸血族の女性を前に、ヴァレーリエとカスミがジト目を向け、フィーネが何かを期待した目を向けてくる。
いやあの、そろそろ西の大陸へ出発したいんだが。
というか、レヴィアたちをかなり待たせているんだが。
「あー、俺はアレックスというんだが、君は?」
「……んっ。はい、私は吸血族のシアーシャと言いますの。アレックスさん、美味しい子種をありがとう。どうかしら。このまま、私のしもべに……って、待って欲しいですの! どうして竜人族がっ!? それに、この幼女たちの魔力は何ですの!? お願い待って、話し合いましょう! 助けてへるぷみー!」
シアーシャが変な事を言うから、ヴァレーリエとソフィとランランの高魔力トリオが迫っていき、シアーシャが土下座し始めた。
とりあえず、本気で泣きそうになっているので、一旦は助けてあげるが……確認しなければならない事があるな。
「しもべになるのは無理だが……さて、シアーシャ」
「な、何ですの!? ま、まさか命に関わるから子種を飲んだけど、その延長で子作りさせろという事ですの!? い、幾ら私が綺麗とはいえ、普通の人間では……あれ? でも、子種を……精気を吸ったのに、少しもやつれてない!?」
「精気を吸った……って、そんな事をしていたのか」
「ち、違います! ほ、ほんのちょっとですの! ほんのちょっと出来心で! そ、それに実際は聖騎士の力か何かで、全く吸えておりませんの! なので、この竜人族や幼女たちを止めて欲しいですのぉぉぉっ!」
うーん。シアーシャがいろいろやらかし過ぎていて、中々本題に入れないな。
「シアーシャ。君は俺のスキルで奴隷から解放されたんだが……」
「え!? あ……奴隷紋が消えていますのっ! という事は、私の真の力が使え……う、嘘ですのっ! ちょっと調子に乗ってみただけですの! 私如きに真の力なんてありませんし、あったとしても、全く大した事がありませんのぉぉぉっ!」
シアーシャが何か喋る度にヴァレーリエたちが詰め寄り……あ、ヴァレーリエがキレたな。
「ストップ! シアーシャ、心して答えてくれ。回答によっては、君を倒さなければならなくなる」
「え……は、はいっ!」
「シアーシャは男の血が美味しいと言ったが、それは人間か? 人間や獣人の血を吸い、死に至らしめた事はあるのか?」
嘘かどうかは、ある程度見極められるつもりなので、ジッとシアーシャの答えを待っていると、
「の、飲んだ事なんて、あ、あ、ありませんよ?」
残念ながら、斬るか。
「あぁぁぁ、待ってください! 吸血族なので、もちろん飲んだ事はあります! 貰った事もあります! ですが、ちゃんと断ってから吸わせてもらっていますし、ちょっと体調が悪くなるくらいで、命を奪う事なんてありえませんのっ!」
「本当か?」
「本当ですのっ! 血を吸う度に、相手が死んでしまったら、血を貰う相手が居なくなってしまいますのっ!」
なるほど。一理あるな。
それに、必死さが伝わってきて、嘘では無さそうに思える。
「血を吸った相手の体調が悪くなるとは、具体的には? 吸血族になったりするのか?」
「血を吸って種族が変わったりしませんの! 具体的には、疲労感や倦怠感に、やる気がなくなったり、突然冷静になったりする程度ですの」
「む……それくらいなら、まぁ大丈夫か」
「そうですの。人によっては、スッキリして賢者になったと言うくらいですの」
賢者? 賢者とはなんだろうか。
「そういえば、アレックスさんは私が吸ったのに、賢者にならないんですね」
「俺は聖騎士だからな」
「……なるほどですの。とにかく、私は人を殺めたりしたような事はありませんの。誓えますの!」
「そうか、わかった。変な事を聞いてしまって悪かったな」
吸血族という事で、念の為の確認をして……シアーシャを仲間として受け入れる事にした。
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