第17章 皆と一緒にスローライフ
第783話 にゃんこな白虎
第二魔族領から一番近いドワーフの国、イベールに戻って来たので、まずは王女へ話を通す事にした。
「……という訳で、第二魔族領を支配していた魔族を倒し、白虎を救出する事が出来たんだ」
「なんと……そ、それは本当かっ!? いや、確かにニャッコ様の強い魔力を感じる」
「あの、ニャッコ……とは?」
白虎の話をしたら、王女がニャッコ様と言い出した。
何となく、イントネーションが白虎に近いが……俺の聞き間違いか?
「む? ニャッコ様を救出したのであろう? ……あぁ、すまん。我らドワーフは白虎様の事を親しみを込めて、ニャッコ様と呼んでいるのだ」
「なるほど。それなら、この少女が白虎だ」
大きな白い虎の姿では、高さのないドワーフの国へ入る事が出来ない事もあり、白虎は褐色の女の子の姿になっている。
勿論俺も、しゃがんで移動するのは辛く、変化スキルで子供の姿になっているので、俺、白虎、ミオ、ニナ、レミと、小柄な者ばかりになってしまっているな。
まぁシアーシャとグレイスも普通に歩けているので、大変なのはザシャだけなのだが。
「ドワーフの民には、過去数十年の間、私の身体が操られていて、迷惑をかけたアル」
「いえ、ニャッコ様がご無事で何よりです」
「ところで、どうして私はニャッコと呼ばれているアル?」
「私が幼い頃から、母がそう呼んでいたので定かではありませんが、我が国の記録によると、ニャッコ様が酒に酔うと、語尾がニャンに変わるとか何とか……」
「……き、気を付けるアル」
よく見ると、白虎の耳が少し赤くなっているような気がする。
恥ずかしそうなので、触れないであてあげようか。
白虎は猫じゃなくて虎な訳だしな。
「……なるほど。それで、先程アレックスに貫かれている間、ずっとニャンニャン言っていたのじゃな」
「い、言ってないアル!」
「ふふ、無自覚なのじゃ。ニャッコちゃんは可愛いのじゃ」
いやあの、白虎が半泣きになってるから、ミオはそろそろやめてあげてくれ。
白虎が俺を盾にするようにして、ミオから離れてしまったじゃないか。
「……こ、こほん。まぁその、長年その名で呼ばれているのであれば、それを今更どうこうしようとは思わないアル。そんな事よりも、どうして私の社の周りがドワーフの墓場になっていたアル?」
「ニャッコ様は、我々ドワーフの守り神です。その昔、ドワーフの戦士が殉死した際に、ニャッコ様の近くに埋葬して欲しいと言い、それ以来数々のドワーフがニャッコ様の近くへ埋葬を希望し……気付いたら、墓地になっておりました」
「えぇ……何とも言い難いアル」
まぁ白虎としてはそうだよな。自分を敬って、近くに居たいと言ってくれている訳なのだから。
とはいえ、実際困ったものだが。
「まぁ、それはさておき、第二魔族領はもう大丈夫なはずだ。ひとまずそれだけ言いに来たんだ」
「うむ。礼を言う。それと、またあの純度の高い聖水が手に入ったら、是非分けてもらいたいのだが」
「そ、そうだな」
王女から聖水の話を振られ、自分でも曖昧な答えになってしまったなと思いつつ、謁見の間を去る。
というのも、聖水を作るスキルを持つモニカが転移スキルで姿を消し、帰って来ないからだ。
「さて、どうしようか。モニカが再び転移スキルを使って戻って来た時に誰も居ないというのは……」
「それなら私が待っているアル。元々、アレックスの子種を貰って、一時的に社を離れられているだけアル。今の私は、アレックスから貰った子種の魔力が切れたら、社の外では活動出来ないアル」
「白虎、ありがとう。それは助かるが……とはいえ、連絡が取れないんだよな」
ひとまず、モニカの居場所は分かっている……というか、どこに転移したかは分かっている。
前に俺と一緒に行った、人魚族の棲家だ。
今から迎えに行こうと思うのだが、入れ違いになってしまっても連絡が取れないとな。
「おとん。しゃーない、ウチが待っとくわー」
「レミ、良いのか?」
「うん、えぇよ。その代わり、待つのはこのイベールの国にさせて欲しいけど」
「それは大丈夫じゃないか? 白虎。すまないが、もしもモニカが戻って来たら、この街に居るレミの所へ行くように伝えてくれないか?」
そう言うと、白虎が二つ返事で了承してくれた。
なので、早速人魚族の村へ向かおうと思うのだが、レミから待ったが掛かる。
「おとん。その前に、ここで待つ間に材料の研究をしたいから、あの凄い水を出して欲しいねん。少なめで良いから」
「あー、わかった。じゃあ、どこか人の居ない所を探すか」
そう言って、イベールの国の人気のない場所を探そうとすると、
「アレックス。私も待つ間に寂しくないように、子種が欲しいアル」
「アレックス。我も切なくならないように、子種が欲しいのじゃ」
「アレックス様。私も太陽の下で動けるように、子種が欲しいですの」
白虎とミオとシアーシャが……というか、全員変な便乗をするなぁぁぁっ!
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