第784話 不思議な幼女

「じゃあ行ってくるよ」

「行ってらっしゃーい! いやー、材料が大量に得られて楽しみやわー」


 セオリツヒメのスキルで生み出した浄化の水と、バケツに入った別の材料を手にしたレミに見送られ、イベールの国を出る。


「では、私も一旦戻るアル。また来てくれないと泣くアル」

「ひとまず、仲間と無事に合流出来たら、また来るよ」

「待ってるアル」


 第二魔族領へ帰る白虎を見送り、俺たちはトロッコへ。

 モニカを探しに行きたいのはやまやままが、その前にやっておかなければならない事がもう一つあるからな。

 という訳で、ドワーフの国の本部へ行き、女王に面会を求める。


「……という訳で第二魔族領を解放してきたんだ。依頼したニナの家を調べてくれないだろうか」

「おぉ、凄いな。人間族は非力で体力も無いと思っていたのだが、認識を改めないといけないな。それから、そちらのドワーフの家は調べ終わっておる。行ってみると良い」


 ドワーフの女王がそう言うと、隣に居た兵士が近寄ってきて、簡易な地図のような物をくれた。


「トロッコで行けるから、その場所へ行ってみるが良い。その国で探してみると良いであろう」

「ありがとう。助かる」

「なに、お互い様だ。第二魔族領の解放と白虎様の救出……これはドワーフ族の悲願だったからな」


 ドワーフの女王の地図によると、イベールの更に南へ進んだところにある国らしい。

 イベールから西へ行くと第二魔族領なので、ニナの故郷と白虎の居場所がかなり近いようだ。


「ニナ。やっと家に帰れるぞ!」

「お兄さん、ありがとー! でも先にモニカを迎えに行こうよ」

「えっ!? 良いのか?」

「うん。だって、ニナは家に帰らなくてもお兄さんと一緒に居られるけど、モニカは今ちょっとおかしな状態だし、きっとお兄さんを待っていると思うんだー」

「……わかった。ニナ、済まないな」

「ううん。大丈夫ー!」


 改めてニナは良い子だと思いながら、イベールへ戻り、天后の力で北大陸へ行く為、地上へ出たところで、


『エクストラスキル≪奴隷解放≫のクールタイムが終了しました。再使用可能です』


 こんなタイミングで奴隷解放スキルが利用可能になってしまった。

 モニカとニナが待っているが……助けない訳にはいかないな。


「皆、今から奴隷解放スキルを使用する。俺から少し離れてくれ。あと、ミオは念の為に結界を頼む」

「ふむ。わかったのじゃ」


 誰が来るか分からないし、用心するに越した事はないので、皆にパラディンの防御スキルを使用して……さて、いくか。


「≪奴隷解放≫」


 光が消えると、幼い青髪の女の子が座り込んでいた。

 ミオやツェツィよりも幼く見えるが……七歳か八歳といったくらいだろうか。


「大丈夫か?」

「……んー? だれー?」

「俺はアレックスというんだ。あるスキルで君を助けだしたんだ」

「助けた……?」

「あぁ。すぐに状況は飲み込めないだろうから、状況を説明してあげたいのだが……ちょっと、俺たちも急ぎの用事があるんだ。歩きながら説明しても良いか?」


 そう言うと、女の子が小さく頷く。


「あの……おんぶー」

「わかった。じゃあ、俺の背中に乗ってくれ。とりあえず、名前を教えてくれないか?」

「マリーナ」

「そうか。じゃあ、マリーナ。立ち上がるぞ」


 マリーナと名乗る女の子を背負い、湖へ向かって歩き出す。

 透き通るように肌が白く、髪は青色だが、目は燃えるように紅い。

 そんなマリーナを背負いながら、俺たちの目的や、一緒に居るミオたちについて話していたのだが……あまり反応がないな。

 一気に説明し過ぎたか?


「アレックスよ。その、言い難いのじゃが、背中の子供……背負った直後から眠っておるのじゃ」

「えっ!? ここまで結構喋ったんだが……全部俺の独り言って事になるのか!?」

「うむ。まぁ相手は子供なのじゃ。仕方ないのじゃ」


 いや、勿論これくらいで怒ったりはしないが……仕方ない。またマリーナが起きたら説明するか。


「しかし、アレックス様。この女の子は何者でしょうか。不思議ですの」

「ん? 不思議というのは、どういう意味だ?」

「何と言いますか、少し私に……吸血族に近しい雰囲気を感じますの。でも、吸血族ではないですの」

「あぁ、種族がわからないという事か。それは、マリーナが話したいと思ったら聞いてあげれば良いだろう。無理矢理聞きだすような事ではないと思っている」

「わかりましたの。それでは、アレックス様の仰る通りに致しますの」


 シアーシャとそんな話をしながら、グレイスに船を出してもらい、天后の力でアマゾネスの村へ。


「アレックスさん。さぁ、愛してくださいませっ!」

「いや、昨日もしたんだが」

「女性は毎日愛されたいのです!」


 天后を始めとして、サマンサやレヴィアにミオやザシャたちから迫られ……って、ミオたちはついさっきしたばかりだろーっ!

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