挿話145 謎の幼女? マリーナ
「マリーナ。君の身体をこれくらい貰うよ」
「……」
いつもご飯をくれる人間が、今日も私の身体を切る。
痛い所と痛くない所があって、痛くないところだから別に構わない。
……痛い所だったら嫌だけど。
「……先生。そんなにチマチマやってないで、一気に脚の一本でも斬ってしまえば良いのでは?」
「残念ながら、マリーナは不老ではあるものの、不死ではないのです。そんな事をしてしまうと、貴重なマリーナが死んでしまいます」
「では、また別の奴を捕まえてくれば良いだけでは?」
「そんなに簡単な話ではないんです。マリーナだって、何年も掛けて、やっと手に入れたんです。マリーナはとても貴重な資源ですので、気を付けてください」
マリが資源?
資源って、どういう事だろう。
マリはマリなんだけどな。
「ふむ。とはいえ、いつまでも不老の薬が出来なければ、先に我々が寿命を迎えてしまうぞ?」
「それまでには何とかしますよ」
「是非そうしてもらいたいものだね。決して安くはない金を掛けているのだから」
よく分からないけど、この人間たちはいつも難しい話をしている。
とりあえず、自由に好きなところには行けないのは嫌だけど、何もしなくてもご飯がもらえるし、千年くらいならこのままでも良いかな。
そんな事を考えながらウトウトしていると、突然眩しい光を感じた。
何だろうと思って顔を上げると、
「大丈夫か?」
知らない人間族が居る。
「俺はアレックスというんだ。あるスキルで君を助けだしたんだ」
「助けた……?」
マリは毎日ご飯を貰っていたから、あのままでも大丈夫だったんだけど……でも、陽の光を浴びられるのは良いかも。
二年ぶりくらいかな?
とりあえず、アレックスっていう人間族は急いでいるらしく、何処かへ移動するそうなので、おんぶしてもらう事にした。
マリは走ったりするのは苦手だからねー。
「俺たちは今、モニカっていう仲間を迎えに行こうとしているんだ」
アレックスが何か言っているけど、そんな事より、おんぶが気持ち良くて……くぅ。
……
アレックスにおんぶしてもらいながら眠っていたんだけど、変な匂いで目が覚める。
この香りは何だろう。
いつの間にかアレックスは居なくて、どこかの家のベッドで寝かされているみたい。
「アレックス様ぁっ! しゅごい……もっとぉ!」
知らない女の人の声が聞こえてきたので、周囲を見てみると、二つ隣のベッドにアレックスが横たわっていて、その上で知らない人間族の女性がピョンピョン跳ねている。
あれは何をしているんだろう?
ちょっと聞いてみたいけど、それよりも気になるのが、この香りだ。
向こうのベッドから香る気がする。
動くのは面倒なので、いつもの方法で……これかな? 何だか凄い魔力と生命力を感じる液体だ。
「あーん……っ!?」
な、何これ!? 魔力が……魔力が身体の中に溢れるっ!
あれ? 不思議……ご飯をくれる人間が切ったマリの髪の毛が、伸びてる。
どうなっているんだろ。
「~~~~っ!」
そんな事を考えていたら、ピョンピョン飛び跳ねていた人間族の女性が急に動かなくなった。
死んじゃったのかな?
でも、胸が大きく上下しているし、身体がピクピク震えているから、生きてはいるみたい。
アレックスが人間族の女性をベッドに寝かせて……目が合った。
「アレックス?」
何だろう。立ち上がったアレックスに変な棒が生えている。
でも、さっきの香りは、ここからするみたい。
アレックスが近付いてきてくれたので、変な棒を観察していると、
「――っ!? ……ん、美味しい」
突然さっきの濃厚な魔力が飛び出してきた。
人間族は、変な棒から魔力が出せるの?
でも、向こうで寝ている人間族の女性には棒が無い。
ご飯をくれる人間族も男性だと思うけど、こんな棒は見た事が無いし、魔力をもらった事もないから……アレックスにだけ、ある棒なのかな?
「あれ? 向こうにもアレックスが居たような……」
チラっと窓の外にアレックスの姿が見えた気がしたけど、目の前に濃厚な魔力があるので美味しくいただく事にした。
アレックスの魔力……凄ーい!
数千年くらい生きてきたけど、こんなの初めてかも!
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