第337話 幼女メイド派遣サービス

 声を掛けて来た五人の男について行き、郊外のボロボロの通りと中央の栄えた通りの、概ね中間くらいの場所へやって来た。

 そこには薄ピンク色の壁の、小綺麗な建物があり、


「ここだ。入ってくれ」


 看板も案内も無い扉の中へ入って行く。

 これは……どう判断すべきだろうか。

 闇ギルドにしては目立ち過ぎなので、どう考えてもダミーの建物だよな?

 もう少し様子を見ようと中へ入ると、


「おかえりなさいませ。……あ、お客さんなんだー! 間違えちゃった。いらっしゃいませー!」


 レヴィアくらいの女の子が、メイド服姿で出迎えて来た。


「ここは……何だ?」

「俺たちが経営している店だ。とは言っても、合法では無いので看板は掲げていない。会員制の秘密の店だ」

「……俺は会員ではないぞ?」

「わかっている。だが、仕事を実際に見てもらった方が良いかと思ってな」


 ……よし、わからん。どういう事だ?


「すまないが、わかるように説明してくれないか?」

「勿論説明しよう。とりあえず、座ってくれ。……紅茶をお出ししてくれ」

「はーい!」


 男の言葉に応じて、先程の少女が部屋の奥へ姿を消し……お茶を持って戻って来た。

 念の為、小声でユーリに聞いてみると、特に不審な点が見つからない、普通のお茶らしい。

 まぁ仮に何か盛られていたとしても、余程強力な効果でない限り、俺には効かないのだが。

 先に男がお茶を飲み……顔をしかめる。


「……あのな。砂糖と塩は間違えるなって教えただろ」

「てへっ」

「……とまぁ、こういう事だ」


 いや、だから全く分からないのだが。

 今のどの辺が説明なんだ!?


「アニキっ! コイツ、利用者側じゃないですね。今ので萌えないなんて。幼女好きの風上にもおけない野郎ッスよ」

「そうだな。今のでピンと来てないようだし……仕方ない。一般向けの説明をしよう」


 いや、最初からそうしてくれよっ!

 一先ずこの男たち曰く、ここは幼女メイド派遣サービスという店らしい。

 世に一定数居る幼女好きの男の家に、メイドとして幼女を派遣し、その幼女が収入を得られる……つまり、成人でなくても仕事が出来る雇用を生み出しているのだとか。


「で、兄ちゃんたちは金が無いっていう話だったから、青髪の妹……じゃなくて、恋人を働かせてみないか? っていう話だ。勿論、そっちの娘ちゃんでもイケるぜ」


 こ……これは、どうなんだ?

 勿論手放しで良いとは言えないが、本当に貧困で困っている者が居るのであれば、完全な悪とも言い難い。


「……どうして、こんなに幼い子供を派遣しているんだ?」

「勿論、金になる……こほん。需要があるからだ。お客様のご要望に応えているに過ぎない。それに、幼い子供たちが貧困で困っているのを助けてやりたいからな」

「非合法だと言ったが、闇ギルドとの繋がりがあるのでは?」

「そりゃあるさ。この辺りで商売をしようと思ったら、闇ギルドに場所代を払わないといけないからな」

「……実はお前たちが、闇ギルドの一員だっていう事は?」

「仮にそうだとしたら、こんな回りくどい事をせずに、子供をさらったり、買ったりしているさ」


 うーん。何もかもが嘘だという訳ではなさそうなのだが、色々と問題だらけな上に、胡散臭過ぎるんだよ。


「派遣と言うが、毎日家に帰って来れるのか?」

「……最初の数日は泊まり込みで研修を受けてもらうが、派遣された後は勿論帰れるぜ」


 あー、突いたらボロが出始めたな。

 今のは完全に嘘だ。おそらく、派遣されたが最後、帰れない……というか、人身売買を派遣って言い換えただけじゃないか。


「アレックスー。あっちの男が、机の下からずっとレヴィアたんのスカートを覗こうとしてるんだけど……そろそろ怒って良い?」

「パパー。さっきのおちゃはへんじゃないけどー、あのメイドさん……のろわれてるよー」

「よし、有罪決定。悪いが……潰す」


 最初は何とも言えない微妙な店だと思ったが、やっぱり実態は闇ギルドの劣化版で……とりあえず五人と、奥にいた他の男たちも殴っておいた。

 ただ問題が、


「アレックスー。こっちに一人居たー」

「パパー。こっちにもー!」


 店の奥から、メイド服姿の少女が五人も見つかってしまった。

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