第90話 シノビスイッチが入るサクラ
俺とモニカを先頭に、エリーとニナに、サクラと二体の人形を連れて、シェイリーの社へとやって来た。
「おぉ、今日は少し人数が少ないのだな。つまり、それだけ濃厚にするという事だな。よし、では早速中へ……」
「違うってば。前にシェイリーが言っていた、ゴーレムに魔力を提供している場所の調査に行くんだよ。だから、おおよその位置を教えて欲しいんだ」
「あぁ、なるほどな。仕方がない……後でちゃんと我の所へ寄るのだぞ?」
そう言いながら、シェイリーが方角を示してくれたので、ここからはシノビのサクラを先頭にして進む事に。
サクラが罠などを調べながら進む一方で、俺はパラディンの防御スキルで全員を守ると共に、盾に灯した照明で道を照らす。
最後尾はニナで、ここへ戻る為の道標……光苔を生やしてもらいながら進んで行くと、
「アレックス様。前方に魔物の群れが居ます」
サクラから警戒の声が飛ぶ。
凄いな。俺には魔物の群れなど全く見えないのだが、何か感じるものがあるのだろう。
隊列を変え、俺とモニカが先頭になって暫く進むと、
「出たぞ! これは……ビッグトードだ!」
サクラの言う通り、人間大のカエルの群れが待ち構えていた。
「≪サンダーボルト≫」
「≪ミドル・フレイム≫」
先ずはエリーとモニカが魔法を放ち、何体かのカエルが動かなくなる。
「はっ!」
その直後、カエルに向けてサクラが何かを投げつけ、
「クナイというシノビの武器です。後で回収します」
ジッと見ていたら、余裕があるからか説明までしてくれた。
皆、遠距離攻撃が出来て良いな。
……いや、もちろん俺の役割は仲間を守る事なのだが。
パラディンの防御スキルは既に使用済みなので、エリーやニナに近付いて来るカエルをスパスパと斬り捨てていく。
暫くカエルを斬りまくっていると、
「≪ブリザード≫……あ、一気に倒せた。氷が弱点だったのね」
「エリー殿。修行不足ではござらぬか? 魔法を使う者は、真っ先に敵の属性を意識する必要があるでごさる」
「う……アレックスーっ! サクラさんが苛めるーっ!」
エリーの魔法でカエルの群れが一掃された。
ただ、サクラの言う事も分かるが、俺はそもそも聖属性しか使えないし、エリーに言える立場じゃないんだよな。
「まぁ今回は誰も怪我をしていなかったし、次から気を付けような」
「うんっ! というかサクラさん……普段はエッチな事ばかり考えていそうなのに、戦いになると人が変わるのね」
「はっはっは。シノビの宿命というか、職業病というか、スイッチが入ると、つい……」
なるほど。
要はオンオフの切り替えをしているって事か。……それは構わないんだが、切り替えの差が激し過ぎるのは困惑させられるが。
「ふふっ……アレックス様。拙者、スイッチが入ってしまって、お腹の奥が熱いのです。どうか、アレックス様の立派なモノで、拙者の中を掻き回してくださいませんか?」
「何のスイッチだよっ! というか、こんな場所で何を考えているんだよっ!」
「そうよっ! さっきの魔物を一番沢山倒したのは私なんだから、私がアレックスとするのっ!」
いや、エリーも違うだろ。
一先ず、エリーの魔法で凍ったカエルの一部を斬り落とす。
……巨大なカエルか。サソリよりはマシな気もするけど……いや、これはこれでキツいな。
しかし力を得て、皆を守る為だ。
リディアが何て言うかは分からないが、一先ず持ち帰る事にした所で、
「ご主人様。これだけ沢山カエルが居るという事は、この辺りに水があるのではないでしょうか」
モニカが良い事に気付く。
「確かに。川や湖があれば、かなり助かるな。一先ず北東に進むが、もしも水を見つけたら教えてくれ」
「畏まりました。水があれば、色んな体液を洗い流せますし、沢山出来ますね」
「何をだよっ!」
せっかくモニカを褒めようと思ったのだが、ガッカリだよ……って、何だ? いつも通りモニカの相手をしているだけなのに、倍疲れている気がする。
「お兄さん。サクラさんとモニカさんに指摘するの、大変……?」
あー、そういう事か。
サクラもモニカみたいな言動だから、モニカが二人になったみたいに疲労も倍……って、嬉しくねぇっ!
ニナが優しく癒してもらいつつ、サクラの武器を回収し、再び洞窟の中を進んで行くと、
「アレックス様。水の匂いがします。おそらく、こちらに湖があるかと」
サクラが大きな湖――地底湖を発見した。
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