第89話 地下洞窟探索再開

「……お兄ちゃん! おはよーっ! やったー! ボク、いつの間にか寝ちゃってたけど、ちゃんと一緒に眠ってくれたんだー!」

「あぁ、約束だったからな」


 俺の胸の上で目覚めたノーラが物凄く喜び、何度もキスしてくる。

 くっ……ノーラ、すまない。

 実のところ、夜はフィーネとリディアと過ごし、眠るノーラを俺が抱きしめた後に、フィーネのスキルで起こしてもらったんだ。

 喜ぶノーラを前に、凄く申し訳ない気がしてしまうが、フィーネのサキュバスの本能を満たしてあげる必要もあり、こういう対応となってしまった。

 俺がもっと分身スキルを使いこなせれば、フィーネとノーラの二人共と過ごす事が出来るのだが……まだまだ先は長そうだ。


「……拙者。監視任務などに就く事もあり、睡眠時間を然程必要としないのだが……何故、昨晩は眠ってしまったのであろう。しかも、朝まで起きない程に熟睡するなど……」

「つ、疲れていたんじゃないか? ほら、昨日はいろいろとあったしさ」

「なるほど。確かに、拙者はアレックス様の上で激しく……」

「そういう事じゃないっ! その、突然魔族領へ来たり、慣れない開拓作業をしたりしただろ? そもそも環境が変わると、負荷が大きいしな」


 危ない危ない。

 サクラの発言は、フィーネのサキュバススキルの事や、ノーラに教えてはいけない知識の事と、多方面に影響を与えかねないな。

 フィーネの事は言えないが、とりあえずノーラの前では変な事を言わないように、改めて言っておかなければ。

 一先ずリディアが作ってくれた朝食を食べて居ると、頼みがあるとメイリンが口を開く。


「旦那様。シェイリー殿が仰っていた、北東にあるという黒髪の一族の施設? を探しに行きたいのですが」

「うん、メイリンとしては当然そうなるよな。だけど、前回行った黒髪の一族の村とは違って、それは未発見の場所だ。だから俺としては、先ずは戦闘職で場所を確認し、安全を確保してからメイリンを連れて行きたいんだ」

「つまり、妾は連れて行っていただけないと?」

「最初はな。黒髪の一族の村だって、初めて行った時は魔物が大量に居て、大変だったんだ。今回も同じ事になっている可能性があるからな」


 メイリンが悲しそうにしているが、事実なだけに連れて行く事は出来ない。

 エリーやリディアが俺の言葉を裏付けるかのように、当時の事を説明してくれているから、一先ず大丈夫……だろう。


「という事は、私の出番よね。アレックス」

「そうだな。北東の探索には、エリーとモニカ、それからニナとサクラに俺を加えた五人で行こうと思う」

「ご主人様、お任せください。このモニカが、ご主人様を絶対に守ってみせます」


 いや、守るのは俺の役目なんだが。

 やる気を見せるエリーとモニカが立ち上がったところで、


「そうだ! 旦那様。でしたら、どうか妾の人形を一人連れて行ってくださいませ。妾は離れていても人形と会話が出来ます。そうすれば、人形を介して洞窟の中で旦那様たちの様子を知る事が出来ますので」

「なるほど。確かに、俺たちの様子が分からないのは困るよな。それに地上で何かあったとしても、人形を介してメイリンと話が出来るのは助かるな」

「えぇ、その通りです。すぐに準備させますので、少しだけお待ちくださいませ」


 メイリンの提案で、人形を一体連れて行く事になった。

 一体くらいであれば、俺も守る事が出来るだろうし、何より地上と会話出来るのは本当に助かるからな。

 メイリンが、どの人形を連れて行くか検討すると言って、サクラを連れて家を出て行く。

 その間に、食事の後片付けをして、ノーラやリディアたちに作業のお願いを済ませた所で、


「じゃあ、そろそろ行くか」


 エリーとモニカ、ニナを連れて、先ずは東エリアへ。

 そこでは、メイリンと共に俺とサクラの人形が待っていた。


「えーっと、この二人の人形を連れて行けば良いのか?」

「はい。この二人は十二組目となる妾の子供たちで、アレトゥエとサアラと名付けています」

「アレトゥエとサアラか。よろしく頼む」


 十二組目か。人形……増えたなぁと思っていると、


「よろしくお願いします。お父さん」

「主様に忠誠を誓います」


 二人が挨拶をしてくる。

 それは構わないのだが、何て言うか……他の人形たちと比べて、何となく二人の距離が遠いというか、雰囲気が硬い気がする。

 そんな事を考えて居ると、サクラが近寄って来て耳打ちしてきた。


「ご主人様、お気付きになられましたか。実は、このアレトゥエとサアラ……同じ家に住んでいるというのに、未だ男女の仲ではないようでして」

「そ、そうなのか?」

「はい。というのもアレトゥエはやりたい盛りなのですが、サアラは――十一歳の頃の拙者は、未だ房中術を正しく理解しておらず、男性のアレは舐めるものであり、自身の中に挿れるものとは思っていなくて、拒んでしまったようで……」


 いや、何の話だよっ!

 というか、よくそこまで話を聞けたな。それとも、自分自身だから分かるのか?


「機会がありましたら、どうかサアラに女の悦びを教えてあげられればと」


 サクラ。今回は探索が目的であって、そういう事はしないんだが。

 ……まさか、地下洞窟の事をそういう場所と思っているのか!? 違うからなっ!? シェイリーも力を回復する為に俺のアレを飲んでいるだけで、ちゃんと理由があるんだからなーっ!

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