第666話 危惧していた事
「うぅ……ご主人様。このモニカの不覚……本当に申し訳ありませんでした」
「とりあえず、今後は気を付けるようにな」
モニカと共に謝り、何とか投獄は回避する事が出来た。
だが、俺とモニカの関係を細かく聞かれたり、調書を作成されたりして、結局解放されたのは翌朝だったが。
というのも、途中で兵士長と呼ばれている者が帰宅してしまった為、手続きが途中で終わってしまい、詰所内で兵士長が出勤するまで待たされるという……いや、もう過ぎた事を思い返すのは止めておこうか。
ちなみに、ユーリは俺から離れず一緒に詰所で過ごしたものの、他の者たちには適当な宿で一泊してもらう事にしていた。
「ふぅ。ひとまず、皆と合流しようか」
「そうですね。確か待ち合わせ場所が中央の地下への階段でしたね」
兵士たちに連れられ、地下から地上へ上がった時の階段の出口を待ち合わせ場所にしていたのだが……来たな。
ミオが俺の姿を見た途端に、走って来た。
「た、大変なのじゃ! 朝からグレイスの姿が見えぬのじゃ!」
「えぇっ!? まさか……人攫いなのか!?」
「その可能性は否定出来んのじゃ」
俺たちと別行動となった後の話を聞くと、いつもは大部屋で寝泊りするが、俺が居ないからと、それぞれ個別の部屋をとったらしい。
だが、朝に宿の食堂で待ち合わせとしていたのだが、どれだけ待ってもグレイスがやって来ないので、宿の者に言って部屋に行くと、もぬけの殻になっていたそうだ。
「すまぬのじゃ。個別の部屋という事もあって、結界を張っていなかったのじゃ」
「いや、宿に居るのに攫われるなんて、思わないだろう……それより、その宿に案内してくれ。あと、誰か兵士さんたちにグレイスの話を!」
「は、はいっ! では、私が説明致しますの!」
モニカの案内でシアーシャに兵士の詰所へ行ってもらい、俺はミオに案内してもらい、ザシャ、ファビオラ、ユーリと共に昨晩皆が泊まったという宿へ。
少し走ると、良くも悪くも普通な感じの宿へ到着した。
「アレックス、ここなのじゃ」
「この宿に決めた理由は?」
「待ち合わせ場所から一番近かったからなのじゃ」
「それは、誰か街の人などに聞いて、やって来たのか?」
「いや、皆で適当に歩いていて見つけたのじゃ」
なるほど。
となると、道を教えた者が宿とグルだった……という訳ではなさそうだ。
とはいえ、宿が完全に白という訳ではない。
宿に来たグレイスが人間族だと気付いて夜中に部屋へ忍び込む……というのであれば、宿の者であれば容易だろう。
それか、この宿へ移動しているところを尾行されたか。
とりあえず、部屋を確認してから考えよう。
「すまない。昨晩宿泊した俺の仲間の姿が見えないと聞いたのだが」
「は、はい。先程お聞きしましたが、人間族でいらしたんですよね? この度は何と言いますか……」
「それより、仲間が泊まっていた部屋を見せてくれ」
「か、畏まりました」
宿の者が慌てて案内してくれたが、二階の端の部屋か。
二階なら容易に登れるだろうし、端だと物音にも気付きにくいかもしれないな。
部屋の扉は……特に壊された形跡はない。
窓も割れていないし、争った跡もないように思える。
「普通の扉に、普通の窓なのじゃ。何かしらの魔法やスキルで開閉が出来るかもしれぬのじゃ」
「グレイスさんは、魔法系のジョブだよな? だから、眠っている間に近寄られても起きる事が出来ず、行動不能にするスキルなんかを使われたのかも」
ミオとザシャの言葉を聞きつつ、どうしたものかと考える。
予めディボーションのスキルを使用しておけば、ある程度どこに居るのか分かるのだが……使用していなかったのが悔やまれるな。
「そうだ! ≪逢瀬≫……無理か。グレイスが妊娠していたら、このスキルで会いに行けるんだけどな」
打つ手がなくなり、この辺りの盗賊団などをしらみつぶしに壊滅させようかと考えていると、
「ご主人様。結衣にお任せください」
俺の影の中から結衣が現れ、ジッと目を見つめてきた。
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