第670話 事情聴取
ユーリの聖水で奴隷紋を消す事が出来なかったので、一旦皆の所へ戻って来た。
聖水を使っても消す事が出来なかったからか、女性がとても落ち込んでいるが気になる。
何とか助けてあげたいんだけどな。
「皆、この女性を奴隷から解放してあげたいのだが、どうすれば良いだろうか」
「アレックスの奴隷解放スキルはどうなのじゃ?」
「あれは、相手を指定出来ないんだよ」
日数的に考えて、今日が奴隷解放スキルが利用可能となる日ではあるが、あれは世界中の奴隷にされている人の中から、無作為に一人を選んで解放するスキルだと認識している。
おそらく、目の前の女性に向かって使えるものではないだろう。
どうしようかと考えていると、ザシャが小さく溜息を吐く。
「アレックス。その女性の奴隷紋については、私に任せてくれないか? 何とか出来ると思う」
「そうなのか!?」
「あぁ。ただ少し時間が掛って……そうだな。一晩待ってくれないか? 明日の朝には奴隷紋が消えているよ」
溜息を吐いていたあたり、おそらく面倒な手順が必要なのだろう。
とはいえ、ザシャに頼むしか今の所手立てがないが。
「ザシャ、すまないが頼む。何か俺に手伝える事はあるか?」
「そうだね。ひとまず、さっきの誘拐犯たちを兵士に突き出しておいて欲しいのと、この女性の保護をお願いしたいかな」
「む……確か、奴隷紋があると、術者から何処にいるかバレるんだったな。分かった」
「その通りだよ。じゃあ、ちょっと行って来る」
「ん? 奴隷紋がある女性はここに居るのに、違う場所へ行くのか?」
「あぁ。奴隷紋を消すには、その所有者を消……こほん。とりあえず私に任せて、アレックスはその女性を頼む」
そう言って、ザシャが何処かへ。
なので、ミオに結界を張って女性たちを守ってもらい、その間に俺が兵士を呼びに行く。
「……この上だ」
「こんな所に……どうやって発見したんですか?」
「仲間に鼻の利く者が居て、攫われた女性の匂いを辿ってくれたんだ」
「なるほど」
連れて来た男女の兵士も犬耳が生えているからか、嗅覚で見つけた……というのを納得してくれて、誘拐犯の根城へ。
男性の兵士が犯人を調べ、女性の兵士が被害者の女性の話を聞いていく。
あとは、グレイスの聞き取りが終わるのを待って、奴隷紋の女性を保護すれば良いだろう。
「すみません。こっちの犯人から話を聞きたいんですが……どれくらいの強さで攻撃したんですか? 全く目を覚まさないんですが」
「えっ!? い、いや、軽く殴っただけなんだが」
「……とりあえず、この二人は牢の中で寝かせて、目覚めてから事情聴取を行います」
殴ってから結構な時間が経ったと思うんだが……ゆ、ユーリが命に別状は無いと言ってくれているので問題はないと思うが、困ったな。
一先ず、男性兵士が犯人たちを運んで行ったので、女性たちの所へ行くと、女性兵士がグレイスに話を聞いているところだった。
「……ふむ。夜中に誰かが部屋に入ってきた気がしたと」
「はい。てっきりアレックス様が……あ、私の旦那様が夜這いに来て下さったのだと、ウキウキしながら寝たフリを続けていたんですけど、気付いたら知らない場所に居まして」
「な、なるほど。……ん? アレックスって、昨日詰所に泊まっていったって朝に引き継ぎがあった、露出狂の変態の名前な気が……」
いや、ちょっと待て。
確かに昨日はモニカが詰所に連れて行かれ、一緒に謝る事になったが、他の兵士にそんな引継ぎをされているのかっ!?
「もしかして、誘拐犯の一味の一人で、仲間割れして……」
「そんな訳あるかっ! 昨日のは……まぁ否定が出来ないが、誘拐などする訳がないだろう!」
「……まぁそれもそうですね。そもそも人間族ですし、誘拐される側か」
一瞬、女性兵士に厳しい視線を向けられたが、何とか誤解だと分かってもらえたようだ。
だがそんな状況で、ネズミ耳の女性が抱きついてくる。
「このお方を疑うなんて、酷いですっ! この人間族の男性は、凄い指技をお持ちなんです! 指だけであんなに……は、早く聞き取りを終わらせて下さい。私、我慢するのが大変で……」
「アレックスさん……でしたね? こちらの女性に、何をしたのか説明して貰えますか?」
「これも誤解なんだーっ!」
モニカの露出から始まり……物凄く酷い事になってしまった。
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