第101話 開拓する方角の方針転換
ユーディットが聖水生成スキルを使って聖水をくれたものの、作り方を知ってしまっている上に、モニカからも聖水を手に入れる事が出来てしまう。
モニカが聖水生成スキルを得た直後は、ニナに頼んで武器や防具の強化に使ってみたものの、今は特に使い道がなく、とりあえず家の外のモニカ専用容器に溜めて貰っているくらいだ。
とはいえ、幼いユーディットの感謝の気持ちを踏みにじる訳にもいかず、どうにか活用方法を考える事にした。
「ユーディット。聖水が魔物除けになるって言っていたけど、どうすれば良いんだ?」
「ごめんね。聖水で魔物除けを作れるっていう事は知っているんだけど、その作り方までは知らないの」
ユーディットの言う魔物除けがシャドウ・ウルフに有効ならば、人形たちに壁の拡張を任せられる。
そう思ったのだが、残念な事にユーディットは作り方までは知らないらしい。
「あ、それならフィーネ知ってるよー! シェイリーさんに教えてもらった、おまじないスキルの一つにあるよー」
「そうなのか?」
「うん。だけど、魔物除けって使い道が無さそうだから、今まで言わな……」
「そんな事は無いぞ。地下洞窟の探索や、地上での魔物対策で、すっごく役立つ! いやー、こういうアイテムが欲しかったんだ!」
唐突にフィーネが作り方を知っていると言ってくれたんだけど、ユーディットの前で少し余計な事まで言い過ぎていたので、慌ててフォローする。
まぁ実際はフィーネの言う通り、地下洞窟では魔物の肉などを得る為、魔物除けを使う事は無いし、地上は石の壁で守っているから、そこまで必要でもないんだけどな。
「じゃあ、ユーディットちゃんの聖水はフィーネがもらうね。魔物除けのおまじないは、長く効果が続くけど保存出来ないものと、使ってからの効果は短いけど保存可能なお薬みたいなのがあるけど、どっちが良いー?」
「それなら、後者の保存可能な薬の方かな」
「わかったー! モニカさんの方の聖水は……」
「こほん! フィーネ。先ずは、ユーディットにもらった聖水で作ってみてくれ」
「はーい! じゃあ、作ってくるー!」
フィーネ……もう少し空気を呼んでくれると助かる。
後でモニカにも、ユーディットの前で聖水の話をしないように言っておかないとな。
それから、ユーディットがどれくらい空を飛べるか確認したいと言うので、皆で外へ。
「じゃあ、ちょっと飛んでみるね」
そう言って、ユーディットが羽ばたくと、軽やかにその身体が上昇していく。
「おぉ、空を飛べるのは凄いな」
そのままユーディットを見上げ……慌てて顔を反らす。
ユーディットは全裸で召喚されてしまい、一先ずスカートを履いてもらったけど、下着は着けてなくて……心の中で謝っておこう。
少しすると、ユーディットがゆっくりと降りてきて、困惑した表情を浮かべる。
「アレックス。上から見てみたんだけど、ここって周囲に何にも無いんだね」
「そうなんだ。一応、一番近い街が南――向こう側にあるらしくて、今はそっちに向かって壁を伸ばして行こうと思っているんだが……」
「向こう? 上から見ても、何にも見えなかったよ? たぶん、メチャクチャ遠いんじゃないかな? それより、あっち――東の方に、集落みたいなのが見えたけど」
「えっ!? 東に!? ……この壁の外に!?」
「うん。大きな湖があって、その近くに家みたいなのが幾つかあったけど」
タバサは、どの方角にも何も無いが、強いて言えば一番近い街は南だと言っていた。
しかし、ユーディットが言うには、東側に小さな村があるという。
冒険者ギルドも認識していない程の小さな村だと思われるが、空から見えない程遠い南の街を目指すよりは、一先ず目視出来ている東の村へ行ってみても良いのではないだろうか。
街へ向かう最大の目的は、リディアを始めとする、奴隷にされていた人たちを家に帰してあげる事だが、その村で何か情報が得られたりするかもしれないし、街への馬車があったりするかもしれない。
「わかった。今まで南に向かって開拓を行って来たが、方針転換だ。フィーネに作って貰う魔物除けがシャドウ・ウルフに有効かを確認すると共に、東へ向かって開拓し、その村へ行ってみよう!」
幸い、人形たちの生活エリアとして、南よりも東方面の方が伸びているので、そのまま東エリアの拡張していく事にした。
……今後も人形たちが増えていく可能性もあるしな。
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