第213話 竜人族ヴァレーリエへのおしおき
「んぅ……あ、あれ? ここは?」
「お、目が覚めたか。大丈夫か?」
「ざ、ざこ人間!? じゃあ、あの無茶苦茶な魔力の砲撃は現実……うわっ! 平然と動いてるしっ! どうしてなんよっ! ウチはもう、変身する魔力なんて残ってないのにっ!」
ソフィの攻撃を防ぐのに魔力を使い切り、倒れていた竜人族の少女が目を覚ました。
ソフィが白い光の砲撃を当てにいった時は焦ったが、ドラゴンというだけあって無事で良かったよ。
「とりあえず、君の名前を教えてくれないか? 何て呼べば良いか分からないからさ」
「くっ……ざこ種族のくせに! ……ヴァレーリエよ。千四百歳。人間で言うと十四歳ってトコ? 好きな食べ物は甘い物。男性経験は無し。それから……」
「ストップ! いや、そんな事まで言わなくても良いから!」
「そうなの? さっき少しだけ目を覚ました時、アンタがここにいる全員を襲っていたから、私も襲われると思っていたんだけど……あれは夢だったのかしら?」
「ゆ、夢だ。間違いなく夢だから、安心してくれ」
あ、危ない。
まさか見られていたとは。
とりあえず、夢だと思ってくれて助かったが。
「で、アンタたちは一体何なの? そっちの小さな人間は意味不明なくらいに高火力の攻撃を放ってくるし、そっちの獣人はウチを抑え込む程の結界術を使うし。でも、アンタは普通の人間に見えるしさ」
「俺はあるスキルで、奴隷にされてしまった者を召喚し、解放する事が出来るんだ。ヴァレーリエも、そのスキルで奴隷から解放した。ここに居る者たちも……あれ? 今ここに居る中では、同じスキルで来たのはミオとユーディットだけか」
「そうみたいなのじゃ。だが、アレックスに助けてもらうまで、我は力を封じられていて何も出来なかったので、本当に助かったのじゃ」
ユーディットはともかく、ミオの時は大変だったな。
奴隷解放スキルを使った直後にレイが大暴走して、即ミオも混ざって……まぁ懐かしい思い出だという事にしておこう。
……まだあれから二週間しか経っていないが。
「なるほど。まぁ確かに奴隷から助けて貰ったのは、ありがたいね。つまり、この人間に恩があったり、何かしらで敬っている者が集まっているって事ね?」
「別に恩を売っているつもりはなくて、ただ奴隷にされている者を解放したいだけなんだがな」
「まぁいいわ。じゃあウチの事も、よろしく」
「あぁ、よろしく頼……む?」
ヴァレーリエが握手を求めて来たので、それに応じようとした途端、いきなり後ろに回り込まれ、背後から抱きつかれた。
ヴァレーリエは、抱きついてくるような性格では無さそうなのだが、何をしようとしているのだろうか。
「はっはっは! やっぱり、ざこ種族なんよ! 竜人族は人の姿でも炎が使えるんよ! この炎の刃、フレイムタンでこの人間を焼き殺されたくなったら、アンタたちは奴隷のようにウチの言う事に全て従うんよ!」
見れば、剣の形になった赤い炎がヴァレーリエの右手から出ており、その先端が俺の首に向けられている。
なるほど。俺を人質に取る為の演技だったのか。
まったく。さっきはミオが守ってくれたし、俺も防御スキルを使ったから誰もダメージを受けなかったが、俺だけでなくここに居る全員に炎のブレスを吐いたからな。
奴隷から解放されたばかりなのに悪いが……おしおきかな。
「ヴァレーリエ。謝るなら今のうちだぞ?」
「ざこのくせに、何を言ってるんよ! アンタの方こそ、命乞いしなくて良いの? ウチはざこ種族の命なんて、どうなっても構わないから、脅しじゃなくて本当に殺すんよ」
「はぁ……警告はしたからな?」
「何が警告……ちょ、どうして、ざこ人間のくせにウチより力が……も、もぉっ! 死んじゃえっ! ……え?」
「あぁ、言い忘れていたが、俺に炎は効かないんだ。そんな炎よりも、遥かに激しい炎の中に飛び込んでも無傷だったし、炎で俺は倒せないぞ」
本人は羽交い絞めしているつもりであろう、ヴァレーリエの手を解くと、炎の剣で斬りつけてきたが、もちろん何のダメージも受けない。
騰蛇から炎無効化スキルをもらっているからな。
「ちょ、ちょっと! そんなのズルい……な、何するのっ!? やめてっ! へ、変態っ! ヤダっ……痛ぁーいっ! ……うぅ、こんな事、今まで一度もされた事ないのにー!」
ヴァレーリエを抱きかかえて逃げられないようにすると、短いスカートをめくり、少し手加減して平手でお尻を叩く。
モニカやサクラへのおしおきはデコピンだが、ヴァレーリエはドラゴンなのでデコピンではお仕置きにならないだろうと、お尻叩きにしてみたのだが、
「……ご、ご主人様。それはおしおきではなく、ご褒美では? わ、私もしてもらいたいのですが」
何故かモニカに羨ましそうにされてしまった。
……とりあえず、モニカには後でデコピンをしておこうか。
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