第473話 アマゾネスの族長

 村の中の通りを真っ直ぐ進み、一番大きな家……ではなく、大きな洞窟の前で止まる。


「今から族長がいらっしゃる。重ね重ね言うが、くれぐれも失礼の無いように」

「あぁ、分かった」

「いや、わかったと言うなら、抱きつかずに離れるのだ」


 いや、オレが抱きついている訳ではなく、抱きつかれているのだが。

 族長とやらが来るからか、ヴィクトリアは離れたのだが……チェルシーは離れないな。

 大丈夫なのか?

 そんな事を思っていると、突然周囲の女性たちが片膝を着き、頭を垂れる。


「アレックスさん。アマゾネスの族長、サマンサ様です」


 ヴィクトリアやチェルシーが同じように片膝を着いたので、一応俺も真似ておいた。

 別にケンカをしに来た訳ではないからな。


「サマンサ様、この度はお時間をいただき、ありがとうございます。二点お願いがあって、任務中ですが、帰還いたしました」

「話は聞いているよ。へぇ……こいつがヴィクトリアとチェルシーを寝取った男かい。よっぽど、凄いものを持っているんだろうね」

「はいっ! サマンサ様、アレックスさんのは本当に凄いんですよっ! 長さといい、硬さといい、伝説と呼ばれるに足る人でしたっ!」


 えーっと、ヴィクトリアはともかくとして、チェルシーは何を言っているんだ?

 あと、族長のサマンサも、寝取ったって……意味が分からないんだが。

 思わず顔を上げると、ウェーブの掛った長い髪の二十代半ばといった、凛とした女性が立っていた。

 だが、その格好が胸と腰に布を巻いただけの半裸のような格好で、更に俺の近くへ立っていたので、見えてしまいそうなのだが。

 しかし、そんな事を一切気にした様子もなく、サマンサがチェルシーに言葉を掛ける。


「ふぅん。長さと硬さね。だが、チェルシーは経験が浅いから知らないかもしれないが、男っていうのはね。たった一度でおしまいなんだよ。その点、女はいい。いつまでも持続するからな」

「一度でおしまい? 何がですか?」

「何ってナニに決まっているだろう。出したら終わり、即終了だ。淡白だと思わないかい?」

「んー? すみません。失礼ながら、サマンサ様が何を仰っているのか、よく分からないのですが」

「わからない……って、もしかして、まだしてないのかい? それなのに、どうしてその男について行こうだなんて気になったんだ?」


 サマンサの言葉を聞いて、チェルシーの頭にハテナマークが大量に浮かんでいるようだが……俺もサマンサが何を言っているのかがわからない。

 何がおしまいなのだろうか。

 どういう意味かと思ってヴィクトリアに目を向けたが、小さく首を横に振る。

 話がかみ合わず、どうしたものかと思っていると、モニカが口を開いた。


「サマンサ殿……で良いだろうか。失礼ながら、貴女は盛大に勘違いしているようだ」

「ほぉ? この私が何を勘違いしているって? 言ってみな」

「ご主人様についてだ。確かに、普通の男は一回で終わる……という話は聞く。生憎と私はご主人様以外のは知らないが、少なくともご主人様が終わるのは、閨を共にした女性たちが満足した時か、用事がある時のみ。そんな軟弱な男ではない!」

「へぇ……面白い。ヴィクトリア、チェルシー。その男と共に、部族を抜けたいという話だったね。いいだろう。だが一つ条件がある」


 サマンサが俺たちを見下ろしながら、たっぷり間を取った後、


「この男が、昼食までに私を十回満足させられたら、許可してやろう。どうだ?」


 とんでもない事を口にし、俺たちを囲むアマゾネスの女性たちがどよめき出す。


「サマンサ様!? な、何を仰っているのですか!?」

「いや、サマンサ様の事だ。何かお考えがあるのだろう」

「……もしや、逆にあの男を寝取って、ヴィクトリア殿とチェルシー殿の離脱を止めさせるおつもりでは?」


 周囲でいろんな言葉が飛び交う中、ヴィクトリアとチェルシーが顔を見合わせ、


「サマンサ様。あの、そんな事で良いのですか? てっきり、もっと困難な条件が出されるのかと」

「たったの十回……サマンサ様、ありがとうございます! アレックスさん。サマンサ様にどうかアレックスさんのをお願いいたします。私とお姉ちゃんも参加しますので」

「ま、待つのだ! ズルいではないかっ! それなら私も一緒に混ぜさせてもらおう!」


 この場で二人とモニカが服を脱ぎだした。

 というか、モニカはそもそも下着すら履いて居ないのだが、何を考えて居るんだ!?


「は? ……お、面白いではないか。まぁ待て。先ずは私からだ。ほ、ほれ……足を開いたぞ。やってみせろ」


 サマンサが顔を真っ赤に染めるほどに、怒りながら開脚したのだが……俺は魔族領について聞きに来ただけなのに、どうしてこうなったんだ!?

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