第391話 カレラドの街の闇ギルド

「お、お父さん……は、激しいよぉ」

「すまない。カスミが一緒だから……少しゆっくりにしようか」

「う、ううん。大丈夫だけど、ギュって抱きしめて欲しいな」


 不安そうなエリスの言葉を聞き、しっかり抱きしめると、元のペースで走りだす。

 カスミがカレラドの街の闇ギルドの場所を調査済みだと言うので案内してもらっているのだが、そもそも街が大きい。

 なので、エリスを抱きかかえてカスミと共に走っているのだが……どうやら着いたようだ。


「お兄さん、ここよ。カスミちゃん一人でも潰せると思うけど……」

「いや、別の街では地下室で魔物を飼っていた所もあったからな。一緒に行こう」


 カスミとエリスにパラディンの防御スキルを使用し、目の前の建物へ。

 見た目は普通の民家なのだが……カスミが何かを行い、一瞬で扉の鍵を開けて中へ入る。


「何者……くっ」


 部屋の中に居た四人の男たちが、一瞬で床に倒れたのだが……どうやって一度に四方向へ短剣を投げているのだろうか。

 しかしカスミの言う通り、一人でも大丈夫そうだな。

 とはいえ、任せっきりにするつもりはないが。


「このっ……ぐはっ」


 建物の地下へ進むと、更に大勢の男が現れ、その中にエリスを狙って来た奴が居たので、きっちり殴っておいた。

 だが、カスミの短剣よりも、俺に殴られた方が痛そうにしているのは何故だろうか。

 ひとまず一番奥まで進み……カスミがあっさりとボスらしき男を制圧する。

 魔物が現れるかもと思ったが、杞憂だったか。


「お前ら……どこの者だ。俺たちがどういう組織か分かっているんだろうな?」

「闇ギルドだろ。知ってるよ。ウララドとエリラドの闇ギルドも潰してきたからな」

「……なるほど。西側に大きな力が動いていると聞いていたが……お前、どこの組織だ? いや、どこの国からやってきたんだ? バックに何がついている?」


 バック……と言われても、何も無いのだが。

 何か凄い組織だと勘違いされているようだが、俺の個人的な考えで潰しているだけだからな。


「その質問に回答するつもりは無いが、この国から闇ギルドを壊滅させるつもりだという事だけは言っておこう」

「はっ……知っているだろうが、俺たち闇ギルドを敵に回すという事は、六合教を敵に回す事になるんだぜ?」


 ん? 逆じゃないのか? 六合教の背後に闇ギルドが居ると思っていたのだが……どういう事だ?

 そんな事を考えていると、カスミに倒された男が不敵に笑う。


「カスミ、エリス。この部屋から出るんだ。何かが来るぞっ!」

「チッ……二つの闇ギルド支部を潰したのは本当か。奥の手までバレているとはな。だが、貴様はここで道連れだっ!」


 カスミがエリスを抱えて部屋を出た直後、部屋の壁の一つが崩れ、大きな鶏のような魔物が現れる。

 何だ? そう思った直後、


「がっ……」


 男が小さく呻き、その身体が灰色に……石へと変わっていく。


「なるほど。この魔物はコカトリスか。確か、石化の状態異常攻撃をしてくるんだったか」

「そ、その通りだ。俺も死ぬが、お前も……って、どうして石化していかないんだ!?」


 既に下半身が石になった男が苦しそうに俺を見てくる。

 コカトリスは有名な魔物だし、強力な攻撃ではあるのだが……俺に状態異常は効かないんだよな。


「≪ホーリー・クロス≫」

「ば、ばかなっ! 一撃で……っ!」


 あ、コカトリスを倒しても石化は止まらないのか。

 流石に石化した男を運ぶのは面倒なので、自警団に伝えて来てもらうか。


「カスミ、エリス。一応終わったが、念の為暫くは部屋に入らないように。このまま自警団を呼ぼう」

「さっきの男は良いの……へぇー、コカトリスで石化かぁ。よく、そんな恐ろしい魔物を捕まえたわねー」

「そう言われてみれば、そうだな」


 確かにウララドの街の闇ギルドにもケルベロスが居たが……マミのような、魔物を召喚する者が居るのかもしれないな。

 まぁ何はともあれ、カレラドの街の闇ギルドを潰せて良かった。

 そう思ったのも束の間で、


「お兄さん。大変よー。別の部屋に女性や子供が大勢捕らえられて居たわー」


 自警団の対応次第では、再びエリラドの街の孤児院へ戻らないといけないかもしれない。

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