第392話 助けた女性と子供たち

「アレックスさん。ご協力感謝いたします。ですが……」

「わかった。この女性たちと子供たちを預かれば良いんだな?」

「すみません。お願い致します」


 カレラドの街で、カスミと共に闇ギルドのボスを倒した後、捕らえられて居た女性や子供たちを助け、自警団を連れて来た。

 夜中だったが、自警団が対応してくれて石化したままの闇ギルドのボスを引き渡す事が出来たものの、救出した者たちを全員預かれる状況にないらしい。

 そのため、助けた者の中から一部の――意識がはっきりしていない女性が六人と子供たちが十人程度を、一時的に俺が預かる事に。

 とはいえ、この大人数を連れて今から宿を探すというのも骨が折れる。

 なので、


「≪石の壁≫」


 街の外に石の壁で簡易な小屋を作り、大量の毛布を買って皆に配る事にした。

 闇ギルドの建物で一晩過ごすのが一番楽と言えば楽なのだが、捕まっていた女性たちからすると嫌な場所だろうからと、場所を変えたのだが……これはこれで失敗だったか。


「えへへ、お兄さーん! カスミちゃんにご褒美をお願ーい」

「私も……。男……男ぉ」

「うぅ……怖いよぉ。誰かに抱きしめて欲しい……抱きしめて欲しいなぁ。ちらっ」


 カスミが女性たちの前で余計な事をしたからか、獲物を狙う獣のような目で俺を見てくる女性や、怯える小動物のように震え……いや、この女性も身体を震わせてはいるものの、目が肉食動物のそれだな。

 これも闇ギルドに呪いか薬かを盛られてしまったからかもしれないので、ユーディットに診てもらいたいところなのだが……流石に遠すぎる。


「ご、ご主人様ぁ。このメス犬にどうか……」

「あの、咥えさせてくださいっ!」

「……あ、凄い」


 一部、ヤバい女性がいるけど……断りもなく触るのはやめてくれ。

 それに、石の壁で二部屋作ったが、壁一枚挟んだ隣の部屋に子供たちが居るからな?

 という訳で今日はそういう事はせずに就寝……いや、就寝するんだってば。

 カスミ……やめろ、カスミーっ!


……


 翌朝。

 カスミが褒美を求めてきたので、他の女性たちも参加し、止められず……分身を使う事に。


「お父さん、安心して。昨晩は皆の声が凄かったけど、子供たちは私以外全員寝ていたから」

「エリスは……いや、何でもない」

「いやー、あんなに凄い声を聞かされ続けたら、寝られないよー」


 とりあえずエリスに謝り、今日の行動についてカスミと共に決める事に。


「……って、カスミ? 大丈夫か?」

「む、無理かも。だって、お兄さんは一人でも凄いのに、五人も……良かったけど、腰が痛くて」

「…… ≪ミドル・ヒール≫」

「ありがとう。とりあえず動ける……かな」


 カスミが少し回復したところで、助けた者たちを自警団に預け、今日こそ王都へ行く事に。

 だが、


「すみません。やはりこちらの受入が限界を超えてしまい……何とかならないでしょうか」

「……わかった。何とかしよう」


 エリラドの街と同じように何故かこちらへ預けられてしまった。

 俺は何とか出来るが、これが普通の人だったらどうしようもないと思うのだが。

 ……いや、普通の人は闇ギルドを潰したりしないか。

 一先ず女性たちをウラヤンカダの村へ連れて行く事にして、子供たちをエリラドの孤児院へ送る事に。


「とはいえ、ここから再びエリラドへ戻って、ウラヤンカダの村へ行って……というのは時間がかかり過ぎるな。女性や子供だけで行かせる訳にもいかないしな」

「お兄さん。分身スキルを使えば? カスミちゃんの分身も同行させるわよ?」

「なるほど。そうするか」


 ついつい分身イコール夜の……げふんげふん。本来の分身の使い方は、戦闘とか諜報とかが正しいよな。

 カスミの言葉で、本来の使い方をすべく分身スキルを使う事に。


「では、貴女たちは俺の仲間が村長をしている村へ。君たちは、俺の仲間が運営している孤児院へ送ろう。どちらも安全だから、安心して欲しい。…… ≪分身≫」

「やったぁ! ご主人様ぁ。昨晩の続きですかぁ!?」

「そんな訳ないだろ。分身と一緒に村を目指して欲しいんだ」


 分身で昨晩の事を思い出したのか、女性たちが騒ぎだしたのだが、何故か子供たちまで騒ぎだす。


「ねー、どうして、はだかなのー?」

「何の事……あ!」

「お、お父さん。服……着てないよ?」


 分身スキルと一緒に、全裸の複製スキルが発動する事を思い出し、慌てて解除する事になってしまった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る