第876話 様子がおかしいデイジー王女
「ふっふっふ、簡単ですよ。アレックス様に身も心も委ね、誠心誠意ご奉仕すれば、アレックス様は見捨てたり……痛っ!」
「フョークラは何を言っているんだ」
「えぇー。だって、この子がアレックス様から離れたくないと仰っていたので、ご奉仕の心構えと方法を教え……はぅっ!」
フョークラが女の子に変な事を教え込もうとして置いたので、止めておいた。
ただ、これ以上変な事を教えようとするなら、デコピンでは済まさないがな。
ひとまず、この女の子をどうするかは一旦置いといて、ミオたちの許へ。
太陰の社があった場所へ戻ると、オティーリエが頑張ったのか、ほぼ更地となっており、僅かに残る離れのような場所を、破壊している。
なので、まずはミオにこれからの事を相談しようとしたら、いきなりデイジー王女が抱きついてきた。
「あぁっ! アレックス様のご尊顔が……何て、素敵なお顔なのでしょう。私を……私をアレックス様の側室としていただけないでしょうか」
「……ミオ。デイジー王女の様子がおかしいんだが。戻って来るまでの間に、何があったんだ?」
「う、うむ。その、アレックスの事を聞きたいと強く言うものじゃから、アレックスの本当の名と、国王である事、妻が何人もいると包み隠さず話したのじゃが……何故かこうなってしまったのじゃ」
ミオを連れ出し、こっそり詳しく聞くと、王族であるデイジー王女は俺と一緒に行動出来る訳がないし、諦めてもらおうと妻が何人も居ると言ったのが発端らしい。
妻が何人も居るという事は貴族かと聞かれ、正直に国王だと言い、ミオやオティーリエも妻だと伝えたそうだ。
「だが、それにしても、いきなり抱きついてくるというのは変じゃないか?」
「ん? これまでもアレックスのを握ったり、股で挟んだりしておったが?」
「うぐっ。いや、それは太陰の魔力を止める為だ……って、太陰はどこに居るんだ?」
「それなら、地下の太陰の社へ行っているのじゃ。我らが太陰の魔力と戦っている間に、アレを発射させる為地下で頑張っておったであろう? その流れ弾……流れ子種が残っているので、それを味わって来ると言っておったのじゃ」
「いや、何をしているんだよ」
「まったくなのじゃ。アレックスのは、直接注いでもらってこそなのじゃ。太陰もデイジーも、まだまだなのじゃ」
ミオの発言も、それはそれでどうかと思うのだが。
「……って、待った! 太陰も、デイジーも……って、デイジー王女も社に行ったのか!?」
「あ……ま、まぁその、直接ではないし、鮮度も落ちておるのじゃ。そ、それほど効果はないのじゃ……きっと」
鮮度って……。
まぁこの辺りはフョークラに何とかしてもらうとして、この後の事だ。
「デイジー王女。ザガリーが別荘とやらで幼子を囲っているらしいのですが、そのような場所を御存知でしょうか」
「ザガリー卿の別荘ですか? いえ、流石にそういったものは聞いた事がありませんね」
困ったな。
デイジー王女が知らず、ザガリー本人も居ないところに、幼い子供たちが監禁されていると分かっているのに、助け出せないなんて。
この街もかなり広いし、街の外だった場合、尚更探す当てが無い。
どうしたものかと悩んでいると、先程連れて来た女の子が声をあげる。
「お兄ちゃん! それ、私知ってるかもー!」
「本当か!?」
「うんっ! あのね、時々貧乏な家をお金持ちの人が見て回って、気に入った子がいたら、連れて行っちゃうの!」
「な……なんだって!?」
「でも、その子のお父さんやお母さんが、沢山お金を貰うから、誰も何も言わないんだってー!」
ザガリーの奴、ドワーフ族だけでなく、この街の子供にまでそんな事をしていたのか!
「どこに連れて行かれるかはわかるか?」
「そこまでは知らないけど……あ、そうだ! そのお金持ちの人が来る時は、いつも騎士の人が一緒に居るよー!」
あー、そうだった。
この街の騎士団も、全員とは言わないが、腐っているんだったな。
やるなら……徹底的にやっておくか。
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