第248話 闇ギルドの長

「マミ。じゃあ、早速場所を教えてくれ」

「今すぐ行くポン?」

「あぁ。早い方が良いだろう」


 三人にパラディンの防御スキルを使用し、ケイトは……逃げないと思いたいが、一応おんぶして行くか。


「あ、あの……アレックス様。もしかして、今から闇ギルドへ殴り込みに?」

「あぁ。だが俺のスキルでケイトも守るから安心してくれ」

「わ、わかりました。えっと、でしたら少しばかりお願いがありまして、私の身体を支えている手をもう少し内側へお願い出来ますか?」


 今から闇ギルドへ突入するというのに、それよりもおんぶの仕方に注文をつけてくるという事は、どこか身体でも痛めているのだろうか?

 ツキの薬のせいかどうかは分からないが、初めてだというのに、かなり激しかったからな。

 ひとまず注文通り、ケイトのお尻を支えていた両手を、更に内側へ。


「こんな感じか?」

「はい。そこで、指を中へ食い込ませるように……はぅぅぅっ! イイっ! アレックス様の指が……やっぱり自分でするのと全然違うぅぅぅっ!」


 いや、ケイトは何をしているんだよっ!

 ツキとマミがジト目になっているし。


「マミ。どっちへ行けば良いんだ?」

「とりあえず向こうポン……私は抱っこして欲しいポン」

「いや、何をして……抱きつくなっ! 変な所を触るなっ!」


 マミが抱きついてきて歩き難いし、俺の手が塞がっているのを良い事に、ずっと変な所を触っているし、背中でケイトが身悶えているし、何故かツキが泣きそうになっているし。

 今から闇ギルドを潰しに行くのだが、わかっているのだろうか。

 とりあえずマミの指示通りに歩いて行くと、


「あれ? 自警団の詰所に着いたポン」

「そうだな。ケイトの話では自警団の中に闇ギルドのメンバーが居るという話だったが……実はボスも居たという事か」


 見た事のある建物に着いてしまった。

 自警団の中に闇ギルドの長が居ると知ったら、ジュリはどう思うだろうか。


「あっ……アレックス様。どうして、降ろしてしまうのですか? もう少しで、二回目の……ここまで声はちゃんと我慢していたのに」

「随分と静かだと思っていたが、ケイトは何をしているんだ!?」

「何って、もちろんアレックス様の指で……あ、でも自分でしていた訳じゃないです。歩く揺れで果てたので……これは、何て言うんでしょう?」


 いや、ケイトは何を言っているのか。

 とりあえずケイトを地面に降ろし、マミも地面に。

 ケイトの手を引きながら建物の中へ。


「右に進んで欲しいポン……そこの階段を上がって、この奥ポン」


 マミの言う通り進んで居ると、


「おや? アレックスさんではありませんか。どうされたのですか?」


 奥の部屋からリュウホウが出て来た。

 なるほど。あやしいとは思ってちたが、やはり俺の勘が当たっていたようだ。

 おそらく、最初に引き渡した奴隷商人たちも、リュウホウが逃したと考えるべきだろう。


「残念だ。自警団の副団長である貴方が、闇ギルドの長だったなんて」

「はい? あの、何の事でしょうか?」

「とぼけるのは無駄だ。この女性の奴隷紋から発せられる魔力が、貴方を主だと示しているからな」


 自警団員に俺の後をつけさせたのも、やはりあの少女を拐う為だったか。

 ビシッとリュウホウに指を突きつけると、


「……あの、本当に何の話なのでしょうか?」

「くどい! マミ。ケイトの奴隷紋の魔力は、このリュウホウと繋がっているのだろう?」

「……アレックス。非常に言い難いけど、違うポン。奥の部屋に魔力が繋がっているポン」


 マミから絶望的な言葉が返って来た。

 ひとまずリュウホウに謝り、事情を説明して、一緒に奥の部屋へ。

 そこに居たのは、ジュリと獣人族の男だった。


「アレックスちゃ……こほん。アレックスさん。ここは自警団の会議室ですが、どうしてこんな所へ?」


 俺の姿を見たジュリが頬を緩めるが、リュウホウたちが居るからか、すぐに表情を引き締める。


「マミ。一応確認しておくが……」

「勿論、そっちの男ポン」

「そうか。ジュリ、その隣に居る男は……って、アンタは朝に話しかけて来た奴じゃないか!」


 よく見ると、自警団だと名乗り、ツキとマミの事を聞いて来た獣人族の男で……副団長だったのか。


「ん? あぁ、朝のロリコ……こほん。何か用なのか?」

「あぁ。アンタが闇ギルドの長だって事がわかってな。証拠もある。それから、俺に向けられた闇ギルドの者は全員倒しておいた。自首するなら構わないが、そうでなければ、俺の所へ来た者と同じ状態になってもらう」

「何を言っているか分からないな。それよりお前は誰なんだ? 何故部外者がここに居る。あと、その幼女……本当にお前の娘なのか? 怪しいな……」


 ……面倒だな。

 殴って終わらせても……いや、そっちの方がもっと面倒か。

 内心、溜め息を吐く事になってしまった。

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