第706話 ヴァレーリエとレヴィア
翌朝。
目が覚めると逢瀬スキルが解除され、結衣に抱きつかれていた。
ユーリとディアナが、それぞれ俺の右腕と左腕を抱きしめて眠っているのが気になるが、朝にやってきたと信じたい。
……いやこれ、朝でもダメだな。分身スキルが解除されておらず、結衣が眠ったまま身体を震わせていた。
「ん……にーに。おはよー」
「お、おはよう。ディアナ……って、どうして裸なんだ!?」
「え? ここは裸で過ごす習慣の村なんだよね? 郷に入りては郷に従え……って事で、ウチも皆と同じように脱いだだけだよー!」
「そ、そうか」
「けど、皆何をしてたんだろー? 今は寝てるけど、結衣ちゃんも身体をクネクネさせていたし」
「な、何だろうな」
ディアナが起きたので、こっそり分身を解除し、夜だけ裸で過ごす習慣だと苦しい説明をして、衣類を整える。
それから、リディアが用意してくれていた朝食をいただいていると、
「アレックスさん。ユーリちゃんから聞いたのですが、逢瀬スキルで動かせる人形を出せるスキルがあるとか……」
「そんな物があるなら、この村にも幾つか置いていって欲しいのだが」
「そうですよー。水辺が無いからって、暫く来てくれなかったですし」
リディア、サマンサ、ジェシカが揃って熱い眼差しを向けてきた。
ひとまず、出発前に出す事を約束し、食事を終えると、ヴァレーリエが腕に抱きついてくる。
「さぁアレックス! 出発なんよ! 久々に子種を沢山もらったし、絶好調なんよ!」
「……レヴィアたんも沢山もらった。十五回くらい」
「ウチはもっと貰ったんよ。二十回」
「……三十」
「五十なんよ」
いや、分身たちとは全員感覚を共有しているから、回数は同じはずなんだが。
「皆さん、凄いです。私は、毎晩十回に達する前に気を失ってしまうので」
「毎晩……」
「……ズルい」
あの、ファビオラ。火に油を注ぐような発言は控えような。
「皆、にーにから何かもらったのー? いーなー! にーに、ウチも欲しいー!」
「うふふ。ディアナちゃん、次は一緒に貰いに行きましょうね。やり方を教えてあげるから」
「うんっ!」
いや、天后はディアナに何を教えるつもりなんだよっ!
これ以上変な話にならないように、天后のスキルで元の場所へ送ってもらおうと思い、船へ向かうと……あれ? ちょっとだけ船が直っている?
「パパー! がんばったんだー! ほめてほめてー!」
「ボクもボクもー!」
可愛い声が聞こえたと思ったら、ニナとノーラの人形が船の中から出てきた。
「メイリンに許可を得て、この子たちを連れて飛んで来たんよ。レヴィアの泳ぎに船が耐えられないだろうなって思って」
「……レヴィアたんの泳ぎに耐えられない船が軟弱」
「ウチならアレックスを背中に乗せて飛べるから、そもそも船なんて必要としないんよ」
「……大陸は渡れないくせに」
「そ、そんな長距離はウチの仕事じゃないんよ」
「……大人数も載せられないくせに」
「ぐっ……き、近距離なら圧倒的にウチの方が速いんよ」
もう何度目になるか分からない言い争いを始めたヴァレーリエとレヴィアをスルーして、船を直してくれたニナの人形とノーラの人形の頭を撫でる。
「二人共、ありがとう」
「えへへー! パパがほめてくれたー!」
「うれしいのー! でもー、ひとばんではムリだったの。あくまで、おーきゅーてあてなのー」
ノーラの人形が応急手当でしかないと言うが、それでも非常に助かる。
それから、俺とユーリ。ディアナが船に乗ったところで、ヴァレーリエが続き、レヴィアが乗ろうとして、シアーシャが待ったをかけた。
「ちょ、ちょっと待って欲しいですの。流石に竜人族のお二人が一緒に行動するのは、よろしくないと思いますの」
「……何故?」
「お二人共、自身の魔力量を考えて欲しいですの。これからブラックドラゴンのところへ行くのに、竜人族二人が揃って行くなんて、魔力的に目立ち過ぎますの」
シアーシャ曰く、確実にブラックドラゴンに気付かれ、先手を取られるとの事だ。
「……問題無い。ブラックドラゴンくらい、レヴィアたんが倒す」
「あぁ!? ウチの仇なんよ。アイツはウチが倒すんよ!」
「わかった……とりあえず、魔力的にも魔力以外でも目立ちそうだから、今回はヴァレーリエが行こう」
どうしてヴァレーリエとレヴィアは同じ竜人族なのにケンカになるのか。
物凄く拗ねるレヴィアを宥め、ミオ、ザシャ、シアーシャ、グレイス、モニカが乗り込み……ファビオラが足を止める。
「こ、今回私はお留守番しておきます。もう砂漠は抜けていますし、戦闘ではあまりお役に立てそうにないので」
ブラックドラゴンと戦うという事もあって、ファビオラがアマゾネスの村で待機する事になり……天后のスキルで元の場所へ送ってもらた。
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