第166話 炎に包まれた少女
「すまない。二人共少し良いか?」
「アレックス様。どうかされましたか?」
「サクラ姉。きっと頑張ったから、アレックス様からご褒美タイムなのよ。ですよね、アレックス様ー」
そう言って、早くもツバキが服を脱ごうとする。
こうして、ツバキがサクラと打ち解けたのは良いが、色々と変わり過ぎたというか。
ツバキは俺に分身を使わせて、二人同時に攻めて欲しいって……いや、この話は別に良いや。
一先ず、奴隷解放スキルの説明と、それが使えるようになった事を話す。
「なるほど。それがメイリン様を助け出したスキルなんですね」
「そう言えば……ツバキ。メイリン様を巡る状況は知っているのか?」
「私がこっちへ来る前の話ですが、中央教会がメイリン様を探しているという話は聞いていますね」
「中央教会か……また面倒なところが動いたな。とはいえ、余程の事がなければ、ここへ来る事は無いと思うが」
ツバキとサクラが、メイリンの事を話し始めたけど、中央教会とは何なのだろうか?
また時間がある時に聞いてみようと思いつつ、二人に俺の後ろへ移動してもらうと、
「≪奴隷解放≫」
早速スキルを使用する。
その直後、訓練場で紅い炎が燃え上がる。
「なっ!? どうなって……サクラ! 大至急リディアを呼んで来てくれ!」
「承知っ!」
燃え盛る炎の中には、十代半ばの全裸の少女が倒れていたので、
「アレックス様っ!?」
「≪ミドル・ヒール≫……大丈夫かっ!?」
迷わず飛び込み、抱きかかえながら治癒魔法を使用する。
だが、俺の治癒魔法は効果が無い……というより、そもそもこの少女が、炎でダメージを受けていない?
騰蛇のように、炎に包まれているのが普通の状態なのか? ……いや、違う。炎に焼かれながら、すぐに回復しているんだ!
だから、炎で焼かれる痛みだけを延々と与え続けられているのか。
「大丈夫か? 意識はあるか? 俺の声は聞こえるか?」
少女の頬にペチペチと軽く触れながら話し掛けると、
「……誰だ?」
ゆっくりと少女が目を開け、小さな声を上げる。
「俺はアレックス……いや、そんな事より、君を助けたい。この炎は一体何なんだ?」
「私を? 人間族が? ……ふっ。この首にかけられている物が呪いの元凶だが、人間族に……」
「分かった。これだな? 壊しても構わないな?」
少女が何か言いたそうだが、それよりも今は炎から救い出すのが先だ。
少し小さなネックレスのような物の留め具を……留め具が、無い!?
それならばと、よく分からない宝石を掴んで力を込め、
「うらぁぁぁっ!」
「なっ……炎の呪いを素手で!? な、何者なのだ!?」
力任せに引きちぎると、溶けるようにして消えていき、それと共に少女を包んでいた炎も消えていった。
「あ、アレックス様っ! お身体は……」
「俺は大丈夫だ。それよりも、この少女を……」
ツバキが俺に声を掛けてくるが……どうして、そんなに離れているんだ?
いや、それよりも少女の確認が先だ。
改めて、俺の腕の中に居る少女に目をやると、グッタリとしたままではあるものの、はっきり話し始めた。
「まさか。こんなにも早く解放されるとは……しかも、人間族によって。まぁ良い。人間族の男よ。私を救ってくれた事に感謝する。何か望みはあるか?」
「助ける事が出来て良かったよ。望みなんて特に無いさ。君が無事だったのならそれで良いよ」
「ほう。あれ程の魔法具を打ち破る力を持って居るというのに、謙虚なのだな。だが我らの種族は、助けられた者には恩義を返す義務がある。何か望みを言ってもらわねば、私が困るのだが」
「そう言われてもな……そうだ。なら、君の名前を教えて欲しい。君っていう呼び方は味気ないしな」
「~~~~っ!? わ、私の名前か。そ、そうか。人間族とはいえ、男だからな。……こほん。私の名はネーヴだ。こ、これから、よろしく頼む」
ネーヴは十五歳くらいの青髪の少女で、髪色と同じ、綺麗な青い瞳で俺をまっすぐに見つめてくる。
しかし、雪のように白い肌が、名前を名乗っただけで赤く染まっているのたが……恥ずかしがり屋さんなのだろうか。
そんな事を思いながら、ネーヴの青い瞳を綺麗だなと思っていると、サクラが戻って来た。
「アレックス様! リディア殿とエリー殿を連れて参りました……って、炎は!?」
「アレックスさん! 物凄い炎に包まれていたと聞いていたのですが……大丈夫ですか? 未だに訓練場の石が赤く焼けていますが」
「そ、それより、アレックス! その女の子は誰っ!? どうして二人共、全裸なのよっ!」
ん? 石が焼けている? 二人共全裸?
……あれ? 確かに二人の言う通り、足下の石が赤くなっていて、ネーヴだけでなく、俺まで全裸になっていた。
一体何が起こったんだ!?
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