第165話 お兄ちゃんのアレ
昼食後、ミオたちによって搾り取られたアレを、レイが調合し、作物用の薬が完成した。
それをキャベツ畑に撒いて、収穫した作物を、確認の為に何の味付けも無しに出してもらったのだが、
「凄いっ! ただのキャベツの千切りが甘いよーっ!」
「本当だな。味が濃いな」
「ふっふっふー。薬を与えて半日しか経ってへんくて、この効果やで。凄いやろ?」
昼食のコーンのようにキャベツ自体が物凄く美味しくなっており、ニナがドレッシングなどが何も掛かっていない状態でパクパク食べている。
「味付け無しで、これ程までに美味しいなんて……料理が更に美味しくなりますねっ!」
「そうだな。リディアの料理は、元々凄く美味しいけど、更に美味しくなるな」
「えへへ……頑張りますねっ!」
リディアが、作物の素材の味をより活かせられるように研究すると燃える一方で、
「アレックス。料理が美味しいのはリディアだけなの? 私は?」
「もちろんエリーも美味しいに決まっているじゃないか」
「ふふっ。そ、それならよいわよっ」
エリーも褒めて欲しいと言いたげで……いや、実際に甲乙付けられない程、どちらの料理も美味しいんだけどな。
「ところで、レイー。その作ってくれた薬を畑に撒けば、こんなに美味しくなるのー?」
「せやで。ユーディットはんが空から撒いてくれたら、沢山作物が美味しくなるな」
「うん、いいよー。けど、その薬って、沢山作れるのー?」
「せやね。一番大事な材料をアレックスさんから貰う必要があるんやけど、それは毎日もらうとして、次に重要な材料はユーディットはんとモニカはんから貰えるし、他の材料はリディアはんの精霊魔法で生やして貰えるから……うん、大丈夫やと思うで」
「私とモニカから貰う材料……?」
「あ、その辺は気にせんといてやー」
俺から貰う材料って、やっぱりアレなんだろうな。というか、アレを毎日って……いやまぁ、ほぼ毎日してるけどさ。
しかし、ユーディットとモニカから貰う材料って、間違いなく聖水だよな?
というか、俺のアレとユーディットたちのアレから出来ている薬を取り込んだキャベツか……。
いや他の材料に、リディアに生やしてもらう何か……おそらく植物が入っているみたいだし、色々な材料を使っていだろうから、深く考えないようにしよう。
「そうそう。色々調べてんけどな、アレックスはんのアレの中に、大量の魔力と作物を育てる成分が含まれているみたいやねん」
「あー、シェイリーから、俺がそういうスキルを持っているというのは聞いた事があるな」
「え……そんなスキルがあるん!? はぁー、世の中は広いんやなー。聖水は聖水で、アレックスはんのアレを媒介して、色んな効能に活かせられるし、他にも色々な薬に使えそうやわ。暫く研究したいから、アレックスはん。よろしくっ!」
いや、よろしくって言われても困るのだが。
「ねぇ、お兄ちゃん。さっきからレイが言っている、お兄ちゃんのアレって何なのー?」
「な、何でも無いんだ。それより、そろそろ風呂の時間だよな。さぁ、お風呂へ行こう」
「あ、うん。そうだねー。ところで、お兄ちゃん。アレって……」
「そうだ、ムギも一緒に入るか? お風呂は気持ち良いぞー!」
ノーラがアレとは何かと聞いて来るので、何とか話を逸らす。
「お、お風呂はイヤなのニャー。毛が濡れるのニャー」
「毛……って、髪の毛なら、ちゃんと乾かすぞ?」
「あ、そっか。今のムギは、体毛が殆ど無くなっているニャー。これなら、濡れたまま体温が下がる事も無いのかニャー?」
今日は前半組と一緒にお風呂へ入るという事で、ノーラとムギ。ユーディットとミオの四人と一緒にお風呂へ。
ムギが「凄いニャー」と言いながら、俺を見てくるのだが……そういう事に興味を持つのは未だ早いな。
ちなみに、ユーディットは流石にノーラたちの前では自重してくれるのだが、相変わらずミオは隙があれば触ろうとしてくる。
……前半組と後半組みで、ミオとニナが入れ替わった方が良い気がしてきたので、今度相談してみようか。
そんな事を考えつつ、いつもの様にソフィとフィーネの三人で就寝し、その翌日。
ツバキがサクラと一緒に過ごすようになったからので、シノビの連携攻撃の修行をしたいと言って来たので、北東の訓練場へ。
二人のシノビが連携し、木剣で俺に攻撃をしつつ、時折甘えてきたりしていると、
『エクストラスキル≪奴隷解放≫のクールタイムが終了しました。再使用可能です』
奴隷解放スキルが利用可能になったと告げられた。
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