第164話 作物が美味しくなる謎の肥料

「改めまして、サクラ姉の妹ツバキと申します。色々と勘違いがあり、アレックス様にメイリン様、他の皆様方にもご迷惑をおかけしてしまい、申し訳ありませんでした」


 昼食にツバキも加わり、皆に向けて深々と頭を下げたのだが、


「アレックス。どうして急に、あの娘さんがここまで変わったのかしら?」

「さ、さぁ……どうしてだろうな」


 エリーの視線が冷たい。

 とりあえず、何か話題を変えようと思いながら昼食を一口食べ、


「え!? 何だ、これは!? このコーン……めちゃくちゃ美味しいんだけど」

「……あら、本当ね。アレックスが誤魔化そうとしただけかと思ったけど、凄く美味しい」

「ホントだー! すっごく甘くて味が濃いよー!」


 エリーやニナを始めとして、皆が同意する。


「あのね、そのコーンはムギが収穫したんだー。でねー、ムギは匂いでその凄く美味しい作物が見分けられるんだってー」

「土から、ムギが人間になった時に食べた、白いのに似た匂いがする作物は飛び抜けて美味しいのニャー」


 ん? んんっ!? それって、まさか! いやいや、そんなはずはない……よな?


「もしかして……ムギはん。このコーンって、南の畑から採って来たんとちゃう?」

「うん、その通りだニャー」

「やっぱり……思った通りやっ! わかった。夕食にこのコーンみたいに、凄く美味しい作物を用意するわっ! 皆、何か食べたい作物はある?」


 レイがいきなり立ち上がったかと思うと、食べたい作物を言って欲しいと。


「俺としては、リディアやエリーが作った料理はどれも美味しいんだが」

「うん、ウチもそう思う。……やなくて、とある実験というか、確認の為に食べ比べをしたいねん」


 あ、そういう事か。

 確かに、このコーンはリディアの味付けがあるのは勿論分かっているが、物凄く旨い。

 ムギの言う何かの匂いがするものについて、レイが目星が立っているから、それを確認したいと。


「そういう事なら……じゃあ、ニナはキャベツー!」

「おっしゃ。ほな、ニナはんの決めたキャベツにしよか。今から与えて、夜までにどれくらい影響があるかは分からんけど、とりあえずやってみよ! という訳で、アレックスはん。協力宜しくっ!」


 そう言って、レイがウインクしてきた。

 いや、ある程度想像は出来てしまっているんだが、一応確認……いや、藪蛇な気がするから止めておこうか。


「……まぁ、協力はしよう」

「ふっふっふ。そういう事なら、我も手伝うのじゃ」

「ご主人様っ! 私も手伝いますっ! キャベツ畑は中々ハードルが高いですが、私なら大丈夫です」


 ミオとモニカが何かを察して名乗りを上げたけど、キャベツ畑って、本当にそんな所でするのか!?

 一先ず、それぞれが作業へ移った所で、


「ほな、アレックスはん。こっちへ」

「あ、レイの部屋か。なら良かった……って、前みたいに精力剤を作っていたりしないよな?」

「……い、今は大丈夫やで」


 レイの使っている部屋にミオやモニカと共に移動する。

 今は大丈夫という話だが、普段はどうなんだ?


「ふふふ……我は匂いで、アレックスが朝からシノビの姉妹としていた事に気付いているのじゃ。ズルいのじゃ! 早く我にもするのじゃ!」

「えぇっ!? そんな……ご主人様、ズルいですっ! どうして私を混ぜてくれなかったんですかっ!? ……しかし、ツバキ殿が大人しくなっていた理由が分かりました。完全に恋する瞳になっていましたしね。……あ! ツバキ殿からはどのようなスキルを得たのですか? 分身で三人になれるようになっているとか?」

「いや、それが……天使族たちの時と同じで、何も得ていなさそうなんだ。……使用回数に上限があったりするのかもな」


 天使族同様に、ツバキから何度も激しくキスをされたにもかかわらず、強くなった気がしない。

 スキルは姉妹を同じ者と認識するのだろうか?

 しかし、もっと強くならなければ、皆を守れないし、どうしたものか。


「……って、モニカと話している間に、ミオは何を……くっ!」

「ふふふ……我慢しなくても良いのじゃ。全て受け止めてやるのじゃ」

「あ、アレックスはん。先に分身しといてな。前みたく、ビーカーにも出して欲しいねん」


 ミオとモニカとレイに囲まれ……大量にアレを提供する事になってしまった。

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