第334話 素直になったレヴィアたん?

「先程の奴らは運が良いね」

「ん? どうしたんだ、レヴィア」

「私がアレックスに色々と教えて貰っていなければ、剣を抜いた時点で殺していた」


 うーん。レヴィアはこう言えるようになっただけ、少しは分かってくれたのだろうが……どうしたものだろうか。


「アレックス様。ちょっとお耳を宜しいでしょうか」

「ん? あぁ、どうしたんだ? ……って、耳を舐めるなっ!」

「冗談ですよー。あ、次は真面目ですから」


 近寄ってきたケイトに耳を舐められ、警戒していたが、どうやら今度はちゃんとした話……なのか?


「……今のをアレックスさんの口から言ってあげて下さい」

「……ケイトがそう言うなら、わかった。やってみよう」


 ケイトが耳打ちしてくれたアドバイスも、若干微妙な気がするのだが、同性ならではの意見かもしれないので、言われた通りにやってみる。


「レヴィア」

「なーにー?」

「俺は、女の子が殺すなんて言葉を言わない方が可愛くて好きなんだがなー」

「わかった! もう、そう言う事は言わない! 私は……レヴィアたんは、可愛い女の子になるっ!」


 おぉっ! ケイトに言われた言葉をそのまま言っただけなのだが、効いたようだ。

 ……一人称まで変わってしまうのは効き過ぎな気もするが、まぁ良しとしよう。

 だが、その一方で、


「父上。私は父上を守らなければならない任務がありまして……」

「いや、わかっているから。ツキはそのままで良いんだぞ」

「本当ですか? 私も、一人称をツキたんとか、ツキっちとかにしなくて良いですか?」


 レヴィアに向けて言ったはずの言葉が、ツキにまで効いてしまっていたが。

 それから少しすると、


「お父さーん。メイリン母さんにお願いしていた応援が来たみたいだよー!」


 レナの言葉で指差す方向を見てみると、上空からマミの鳥が降りて来ていた。


「お待たせしたポン。マミたんだポン」

「ジュリたんも来ましたよー」


 おい、二人とも。

 樽の中に居る人形から聞いたのだろうが、その一人称はどうなんだ?

 マミはともかく、ジュリは二十代半ばだったよな?


「や、やめてくださいっ! アレックスさん、ジト目を向けないでっ! じ、自覚してますからっ!」

「いや、俺は何も言っていないんだが」


 ジュリはいつの間に読心術スキルを得たのだろうか。


「あのー。それより、はやくだしてよー!」

「あぁっ! ご、ごめんね。もう出て来て大丈夫ですよー」


 そう言って、ジュリが大慌てで樽の蓋を開けると、


「ふぅ。パパー! おてつだいしにきた、ユーリたんだよー!」

「我も父上のお手伝いをするように言われて来たのじゃ。あ、一人称はミーアたんだったのじゃ」


 ユーディットの人形ユーリと、ミオの人形が姿を現した。

 しかし、応援は良いのだが、どうしてこの二人なんだ?

 家を作る必要があるから、ノーラ本人とか、熊耳族の少女が来てくれた方が良かった気もするのだが。


「さて、お父さん。これで、必要な人材は揃たで」

「いや、どういう事なんだ?」

「勿論、ウチらに今必要な事をするんやんか。ミーアはん、よろしくっ!」


 レナの言葉で、ミーアが結界スキルを使い……本当になんだ?


「お父さん。あとは石の壁で屋根のある部屋を作ってーや」

「それは構わないんだが、本当に何をする気なんだ?」


 訳がわからないまま、レナの注文通りに土地のど真ん中へ広めの部屋を作る。

 一応、出入り口に壁を一枚抜いてあるから、光や空気も入るし、家と言えば家だが、微妙じゃないか?


「お父さん。仕上げに、外から中が見えへんよーに、入り口の外側に石の壁を……うん。完璧っ!」

「で、ここで何をするんだ? 俺たちに必要な物って?」

「当然、ポーション作りやで! ステータスアップ・ポーションはレイお母さんしか作られへんけど、マジック・ポーションは材料さえあればウチでも作れるからな。お父さんのアレとユーリはんの聖水。この二つさえあれば、他の材料はそこらで買えるやろーし」


 って、そうなるのかっ!

 いや、マミもジュリも、それにケイトとレヴィアも……待て! 最悪この四人は許すが、他の子たちは……絶対に参加しちゃダメだからなっ!?

 って、ツキもミーアも話を聞いてくれぇぇぇっ!

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