第333話 エリラドの街の家探し
商人ギルドで話を終えたあと、最初に話しかけた女性職員と共に外へ。
「アレックス様。では、先程ご要望いただいた家をご紹介いたします。申し上げた通り、予算としては十分ですので、どういった家を望まれているか、ご希望はありますか?」
「そうだな。先ず第一に治安の良い場所。第二に広い家……といったところかな」
「治安の良い場所となると、自警団の詰所があるこの辺りなのですが、空き家が無いのですよ。ですので、治安が悪い訳ではないですが、特別良くもない……という場所をご案内させていただきますね」
それからギルド職員の案内で五軒程家を見せてもらったのだが、可もなく不可もなくといった感じだった。
どうしたものかと考えながら、一旦ギルドへ戻る事にしたのだが、
「あ! 治安の良さという点だけの評価となりますが、こちらはいかがでしょうか。最近、商売を引退され、空き地にして売りに出されている土地なんです。家はありませんが、場所としては凄く良いかと」
職員がふと思い出した土地へ案内してくれた。
いわゆる大通りに面した角地で、目と鼻の先に自警団の詰所がある場所だ。
広さも十分で、これなら文句無しなのだが、浮かんだ疑問を聞いてみる。
「この場所なら何も文句は無いが……こんなに良い場所だと、買いたいという者が殺到するのでは?」
「大変言いにくいのですが、実はこの土地は、商売には不向きな場所でして……」
「そうなのか? 俺たちは商売をする訳ではないから構わないが、参考までに不向きな理由を教えて貰えないだろうか」
「すぐ目の前が自警団の詰所だからですよ。この街では、大なり小なり後ろめたい事をしながら商売をしている者が多過ぎまして」
あー、そういえばウララドの街でも、このエリラドの街でも、いろいろあったよな。
それはそれで、どうなんだ……とも思うが、理由としては分かった。
「じゃあ、この土地を買わせてもらおう」
「ありがとうございます。では、一旦ギルドへ戻りますね」
皆でギルドへ戻り、早速手続きを行うのだが……さっきの話ではないが、チラチラとこちらを伺っている者が多過ぎるな。
一先ず、ここからはレナに任せて、俺は周囲の奴らに牽制する意味で、立ち上がって睨みを利かせる。
利かせる……のだが、逆にホッコリしている奴らが多過ぎないだろうか。
何故だ……と考えながら、奴らの視線の先を見てみると、ツキとレヴィアが俺の真似をして仁王立ちしていた。
うん。見ただけでは、二人が強いというのは分からないよな。
とりあえず、この行為が無駄だという事に気付き、視線をレナに移すと、
「お姉さん。この場で現金一括払いやで。それに、お父さんにメチャクチャ失礼な事してたやろ? これくらいまけて貰わなあかんでー」
「ちょ、ちょっとお待ち下さい。失礼な事をしてしまったのはその通りですが、流石にそれは……こ、これくらいで如何でしょうか?」
「あかん、話にならんわ。とりあえず、ギルドマスター呼んどいでや。言うとくけど、例のポーション作れるのは、世界中でウチらだけやで」
「うぅ。で、ではこれくらいでは……」
「しゃーないな。ほな、それで手を打ったろ。……お父さーん! 沢山値切れたよー!」
女性職員がレナにやられ、顔面蒼白になっているんだが。
ただ、失礼な事があったのはその通りなので、これについては諦めて貰うしかないな。
そのまま支払いや手続きが終わり、
「では、あの土地の権利書になります。この度は誠に申し訳ありませんでした」
何故か再び謝られてしまった。
……いやまぁレナのせいだろうが。
「さて、先ずはあの土地が俺たちの家になるから、壁を作って境目をハッキリさせておこうか」
早速、先程の場所へ行き、更地なので石の壁で囲おうとしたのだが、その土地のど真ん中に見知らぬ三人の男が座っていた。
話を聞いてみると、どいて欲しければ金を払えと……本当にこの街はこういう奴らが多いな。
「今出て行くなら許してやるが……出て行く気は無いと。……分かった」
「はっはっは。少しの金で痛い目を……おぉぉっ!? ど、どうなってやがる!?」
「悪いが、少々腕力があってな。俺は忠告したからな?」
一番デカい男を片手で持ち上げると、放り投げて土地から追い出す。
それを見た途端、別の男が剣を抜いたので、こいつは殴って土地の外まで吹き飛ばしておく。
「お前はどうするんだ?」
「す、すいませんでしたっ!」
まったく……一先ず石の壁で土地を囲み、最低限の事はしておいた。
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