第849話 フョークラの薬?
アイアン・ウォールの効果が切れ、普通に動けるようになったので、一旦女性騎士に離れてもらう。
……といっても離れてくれなかったので、気絶させてしまったのだが。
「ご主人様。結衣はシャドウ・ウルフの姿しか騎士に見せておりません。ですので、モニカさんたちに危害を加えられる事はないかと」
「なるほど。そこまで考えていたのは流石だな」
「えへへ。という訳で、この一件が収まりましたら、是非ともご褒美をお願い致しますね」
そう言って、結衣が笑顔を浮かべたままで俺の影の中へ入って行った。
俺の腕を縛っていた紐を軽く引きちぎると、空間収納から毛布を取り出して女性騎士に掛ける。
うん、もろもろ事態が収まったら責任を取ろう。
そう考えながら部屋の外へ出ると、とりあえず連れて来られた方へ廊下を進む事にした。
結衣の言う通り、騎士の姿を全く見かけないのだが、通路を曲がったところで、俺より少し年上の女性騎士に見つかってしまう。
「お前は……奴隷商人! まさか先程のシャドウ・ウルフは……んぁっ! な、何だこれはっ!? この男を見ていると……」
「え? お、おい。どうして鎧を脱ぎだすんだ!?」
「だ、だって身体が熱くて……」
見つかった時は腰の剣に手を掛けていたのに、近付きながら鎧の金具を外し……って、これは何かおかしい。
まさか、どこかの街のメリナ商会の支部でフョークラが使ったような、変な薬が散布されているのだろうか。
しかし、流石にモニカたちが人質になっている状況では、フョークラもそんな事を……いや、しそうだな。
仕方がない。せっかくフョークラが俺を逃がす為にやってくれたんだ。
オティーリエの報告があるまで耐えるつもりだったが、結衣も動いてくれた訳だし、この機に乗じるか。
「≪閉鎖≫」
「あ、あれっ!? せっかく脱いだのに、抱きつけないっ! すぐ目の前なのにっ!」
「一つ教えてくれ。宿に居たドワーフの女性たちは何処に居るんだ?」
「ドワーフみたいなお子ちゃまよりも、私にしようよー! ほらほら、大きいわよ?」
「……ドワーフ以外に、人間の女性も二人居たんだが」
「だったら、私も入れて四人でしよっ! ほらほら、普段は鎧で隠しているけど、私脱いだら凄いんだから!」
……ダメだ。結界の向こう側で肌を露出させるだけで、全く会話にならない。
この女性からモニカたちの情報を得るのは諦め、元来た道を戻る事に。
最初に入れられていた部屋を通り過ぎ、反対側へ通路を歩いていると、また別の女性騎士に遭遇する。
「――っ!? な、何故、何もしていないのにいきなり身体が……き、貴様何をしたっ!」
「いや、俺は何もしていないんだが」
「そんなはずがあるかっ! 出なければ、こんなに身体が疼いて……うぐっ! くっ……抱けぇぇぇっ!」
フョークラ……俺を助ける為だとは思うが、あまり変な薬を撒かないようにな。
再び閉鎖スキルで女性を動けないようにすると、元来た道を……って、向こうにも女性騎士がいる。
……うん、仕方がないな。
適当な部屋に入り、壁を破壊して外へ。
壊したのは外壁だったようで、大きな通りに出たのだが……メチャクチャ目立ってしまった。
夜とはいえ、大きな街だからか、近くにある酒場で大勢の人が飲んでいて、こっちを物凄くみている。
「……飲み過ぎかな? 今、あの兄ちゃんが騎士団の詰所の壁を壊して出てきたように見えたんだが」
「……バカだな。あの壁は魔法で強化されているんだぞ? 普通の武器や魔法で破壊なんて出来ないって」
人は大勢いたが、皆酔っているからか、視線は向けられたものの、それで終わりのようだ。
しかし、どっちへ行けば……って、さっきの酒場から誰か出てきた?
「あ、あのっ! ……結婚してくださいっ!」
「え? ちょっ、何だ!?」
「あぁぁぁっ! 嘘だろっ! あの娘目当てで、この酒場に通っていたのにっ!」
何事も無かったかのように立ち去り、モニカたちを探そうとしたのだが、どういう訳か見知らぬメイドさんに抱きつかれ、酔っ払いに囲まれてしまった。
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