第848話 凄く硬いアレックス
騎士たちが置いていった珠から白い光が放たれ、思いっきり包み込まれてしまった。
瞬時に壁を破壊して逃げるという事も考えたが、モニカたちの事を考えると実行しない方が良いだろう。
パラディンのスキルで、状態異常にはある程度の耐性があるのだが、一体どういう効果があるんだ!?
光が収まると、少しして騎士たちが部屋に戻ってきた。
「ふっふっふ。今のマジックアイテムで、お前に掛けられている強化魔法や支援魔法といった、バフ系スキルが全て解除された。調子に乗っていられるのも、ここまでだっ!」
そう言って、再び殴りかかってきたが、調子に乗った態度など取っていないと思うのだが。
理不尽ではあるが、仕方なく拳を受けると、
「ぐぁっ! な、何故だ!? 防御魔法は解除したはずなのに、どうしてこんなに硬いんだ!?」
「あぁ、さっきから何を言っているのかと思っていたが……俺には何の防御魔法も掛かっていないぞ?」
「そ、そんな訳……クソがっ! 殺してやるっ!」
俺を殴った騎士が、腰の剣を抜く。
流石にこれは受けたくないな。
「仲間が大切なら避けるなよ? おらぁっ!」
「≪アイアン・ウォール≫」
「はっ? ……うぉっ!? 俺の剣がっ!」
パラディンのスキルで、敏捷性と引き換えに防御力を高めるスキルを使用すると、騎士の振るった剣が折れた。
鉄の壁という名前のスキルではあるものの、実際に鉄の強度を得られる訳でもないのだが……最近見てもらっていないけど、誰かのスキルで強化されているのだろうか。
「貴様っ! 何だ、そのスキルはっ!? どういうつもりだっ!」
「パラディンのスキルだが? それに避けずに受けたぞ?」
「ぐっ……パラディンだと!? ……おい! 新入り! 鈍器を持って来い! メイスかモーニングスターだ!」
今こそ、先ほどの強化スキルを解除する球の出番だと思うのだが、一つしかないのか、それとも別の理由があるのか。
少しすると、バタバタと走る音と共に、女性騎士が部屋に入ってくる。
「す、すみません。メイスで……」
「ん? どうした。新入り、何を惚けて……って、おい! 何をする気だ!?」
「だ、ダメです。この人を見ていると、身体が……し、失礼します!」
……って、突然女性騎士が俺の目の前にしゃがみ込み、変なところに頬擦りし始めたんだが!
「お、おい。マジで何をしているんだ? そんな奴のを咥えるくらいなら、俺のを……じゃない! 貴様っ! うちの新入りに何をしたっ!」
「いや、見ての通り何もしていないというか、俺がされている側なんだが、何とかしてくれないか?」
アイアン・ウォールスキルを使っている事もあり、ゆっくりとしか動けない。
その為……結果としてされるがままになってしまっている。
「くっ、羨まし……こほん。おい、新入りっ! 何をしているんだ! やめろっ!」
「無理れすっ! この濃厚な香りと大きさ……我慢出来ませんっ! ……はぅんっ!」
「あぁぁぁっ! やっと配属された女の後輩をっ! せっかく俺のモノにしてやるつもりだったのにっ!」
俺の意志を無視して、女性騎士が俺に抱きつき、両手両足を使ってしがみつくと、男の方が泣きながら部屋を出ていった。
いや、そう思っていたなら、あの顎で使うような態度を取らなければ良いと思うのだが。
しかし、今ので勝手に逆恨みされ、モニカたちに何かあっては困るので、離れてくれない女性騎士を抱きかかえたまま外へ向かおうとすると、
「しゃ、シャドウ・ウルフだっ! 全員撤退っ! 撤退せよっ!」
「ど、どうして災厄級の魔物が……うぐぁっ!」
「どけっ! 新入りは肉壁になって少しでも俺様が逃げる時間を稼げっ!」
部屋の外から地獄のような叫び声が聞こえてくる。
少しして静かになると、扉を突き破ってシャドウ・ウルフが部屋の中へ入ってきた。
これには、外の様子に全く動じずに動いていた女性騎士も驚いたようで、
「ひぃっ! 怖っ……イィっ! 〜〜〜〜くぅっ! けど、怖いっ!」
物凄く締め付け、現実逃避するかのように、俺の胸に顔を埋めてきた。
だが、腕を縛っているからなのか、騎士たちが俺の剣をそのままにしているので怖くないのと、そもそも……
「ご主人様。周囲から男性だけ排除しておきました。女性はその辺りで眠っておりますので、ご自由になさってください」
思った通りシャドウ・ウルフが結衣の姿になる。
うん。出来ればこの女性騎士にも離れてもらいたいのだが、ますます離れてくれなくなってしまった。
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