第487話 死守するために仕方なく選択した方法

「あれー? その人は誰……っ!? あ、あれ!? な、何だろう。あの人を見ているだけで、身体の奥が熱くなってくる!」

「……って、お前!? どうしたんだっ!? 顔が真っ赤だぞ!? それに、何だか腰をくねらせているというか、モジモジしてどうしたんだっ!?」

「あ、あなたっ! ち、違うのっ! これは……でも、何だかあの人を見ると……だ、ダメっ! 身体が……身体が疼いちゃうのっ!」

「お、おいっ! どこへ行くんだっ! お前には、この俺が居るだろっ!」


 小川の向こう側で、夫婦と思われる男女が何か言い合い、こっちへ来ようとしている。

 何だ? このキスしてきた少女といい、一体何が起こっておるんだ!?


「ねー、パパー! このおんなのひと、チャームじょうたいだよー?」

「えぇっ!? 確かに俺は自動発動の魅了スキルがあるが、あれは効果が弱だから、ここまででは無いはずなんだが」

「……あっ! わかったー! 今朝、結衣ちゃんがパパのを沢山飲んで居たけど、分身がラヴィニアさんの所に居たんだよねー? その時、パパのアレが水路からあの小川に流れて、それを飲んじゃっているからじゃないー?」


 ユーリとニースの言葉で、ようやく状況を理解した。

 そういえば女性限定ではあるが、ウムギヒメからもらったスキルで、俺のアレは飲む事で回復効果が得られる。

 また、フィーネからもらったスキルで、俺のアレを飲むだけで能力が成長する。

 だが、飲む事で魅了効果……というのは無かったはずだ。レイが作ったマジックポーションは、詳しい事は知らないが、聖水と混ぜる事で魅了効果があるようだし、俺のアレ単体でこうはならないはずだ。


「……そういえば、ユーリは聖水が作れるけど、あの水路に流したりしていないよな?」

「え? えっと、ちゃんとねるまえと、おきたあとにしたよー! みずのとこで」


 聖水も混ざってたーっ!

 という事は、この女性たちはレイのマジック・ポーションを飲んだ時と同じ状態……って、ダメだっ!

 百歩譲って独身女性ならともかく、既婚者は絶対にダメだっ!


「≪閉鎖≫」

「あ、あら!? あの人のところへ行きたいのに、進めないの! ど、どうしてっ!」

「お前……良かった。気を確かにするんだ!」


 とりあえず、あからさまに既婚者とわかる者を優先して閉鎖スキルで動けなくしていく。

 くっ……ミオが居てくれれば、隔離スキルで俺たちに人が近寄れないように出来るのだが、生憎とそのスキルを俺は使えない。

 かつ、閉鎖スキルも一度に何十回も使える訳ではないので、止めようとしている男性が居ない女性については、後回しになってしまう。

 その結果、


「あ、あなた! この女性たちは何なのー!? もぉ……私も混ぜてよーっ!」

「いや、待ってくれ! 今はそんな事をしている場合ではないんだっ!」

「あっ! これっ! 私が欲しいのはこれなのっ! うぅ、美味しいけど、大きすぎるのーっ!」


 ラヴィニアが迫りくる女性たちに加勢し、俺が襲われる事に。


「す、すげぇ。何だ、あのサイズはっ! ……俺、ちょっと家に帰るよ。まさか、あんな人間が居るなんて……」

「あぁぁぁっ! 皆のアイドルがっ! あの娘が、あんなに大きなのをっ!? うぅぅ、片想いだけど、ずっと好きだったのに」

「お前っ! アレは見ちゃダメだっ! おい、比べるなっ! あんなの人間サイズじゃない! きっとあの男は巨人なんだっ!」


 村の女性たちがどんどん集まってきて……何故か男たちが減ってないか!?

 流石に奥さんや恋人が居る男たちは留まっているようだが……ダメだっ! 俺の力では閉鎖スキルを維持出来る上限に達してしまった。

 これ以上使うと、最初に使った閉鎖スキルが解除されてしまい、既婚者が居る女性がこっちへ混ざってしまう!

 でも、男性が必死に止めようとしている、既婚者と思われる女性は大勢残っている。

 どうする!? ……し、仕方ない。絶対に死守しなければならない所を守る為だ!


「≪分身≫」


 分身スキルを使用し、分身で閉鎖スキルを使用して、既婚女性の動きを止める。

 だが、複製スキルを解除するのが間に合わず、既に集まっていた独身女性たちが……あぁぁぁっ! 結局こうなってしまうのかぁぁぁっ!

 とりあえず、既婚女性だけは死守する事が出来た。物凄く見られているし、その夫たちが何故か凄くへこんでいたが。

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