第339話 呪いの効果

「では、この者たちは確かに自警団が預かりました」

「宜しく頼むよ。ただ、こっちの少女たちについては、少しだけ俺に預からせてくれないか?」


 人身売買まがいの事をしていた男たちを自警団に突き出したのだ、後は任せておけば良いのだが、この少女たちは別だ。

 呪いを解いてあげないと、家に帰れなさそうだからな。


「あ、アレックスさん。だ、ダメですよ! 私が居るじゃないですか! そんなに幼い女の子たちに手を出すなんて!」

「ジュリの言う通りだポン! 私に飽きてしまったポン!? その子たちと殆ど同じくらいの容姿ポン! その劣情は私にぶつけるポン! 喜んで応えるポン!」

「いや、ジュリもマミも何を言っているんだよ! この子たちが正常な状態でないから、治療してから帰してあげるんだよ!」


 俺としては、レイの薬が完成するまでの間だけ預かるつもりなのだが、何だかとんでもない勘違いをされている気がする。


「えーっと、アレックスさんでしたっけ? そりゃまぁこんなに幼い少女たちがメイド服を着せられているのは正常とは言い難いですが……」

「いや、そういう意味ではなくて、状態異常というか……呪われているんだよ」

「この年齢で親から引き離されている訳ですから、こんなに幼い子供たちでも、自身の境遇を呪いたくもなるでしょうね」


 くっ……自警団の者と話が全くかみ合わない。

 あ、そうか。この少女たちが何にでも従順に答えてしまう現状を見せれば良いか。


「君たち。自分の家に帰るのと、見ず知らずの俺について来るのと、どっちが良い? それぞれ自分の意志で決めてもらいたい」


 そう言って、助けた少女たちに呼び掛けると、


「「「ご主人様について行きます!」」」


 先程同様に、全員声を揃えて俺について来ると言って来た。


「……という訳だ。これで分かっただろ?」

「そうですね。仕方ありません。まさか、既にここまで仕込んでいたとは。ウララドの街の自警団副団長であるジュリさんが居られるので大丈夫とは思いますが、せめて成人まではお願い致します」

「ん? 成人? いや、何か勘違いしていないか!?」

「とりあえず、それぞれの少女たちに、家族から捜索願いが出ていないかだけ確認させてください。捜索願いが出ていなければ、正式にアレックスさんが里親となる手続きを進めますので」

「ちょ、ちょっと待った! 俺が言いたいのはそういう事ではなくてだな……」

「一先ず、この場はジュリさんにお任せしますね。こちらも応援が到着しましたので、先ずはこの男たちを詰所へ連行します」


 そう言って、自警団の者たちが男たちを連れて引き上げていく。

 いやいやいや、少女たちとの先程のやり取りは、あくまで呪いによって従順になっている事を示そうとしただけで……おい、おぉぉぉぃっ!


「アレックスさん。いきなり六人ですか。というか、本当に変な事はしちゃダメですからね?」

「その通りポン! アレックスが捕まったら……私はこの街の自警団の詰所を壊さないといけなくなるポン」

「いや、ジュリもマミも誤解だっ! というか、さっきも言ったが、この少女たちは呪われているんだってば!」


 必死になって二人に説明していると、


「お父さーん! レイお母さんから、呪いを解くポーションの作り方の連絡が来たでー!」


 暫く姿を見なかったレナが室内に入って来た。


「レナーっ! そうっ! そういう事なんだっ!」

「ど、どないしたん!? お父さんに抱きしめられるのは嬉しいけど……こ、こんなトコで? お、お父さんが今すぐって言うんやったら、まぁウチはえぇけど……」

「どうして脱ごうとするんだよっ! この子たちの呪いを解くポーションが作れるんだろ?」

「うん。けど、結構手間が掛かりそうやから、今すぐって言う訳には無理やし、何にせよここでは作られへんで。とりあえず、例の場所へ連れて行ったらえーんとちゃう?」

「そうだな。という訳で、皆ついて来てくれ」


 レナの言葉で、ようやくジュリやマミが納得してくれたので、六人の少女を連れて、購入した土地へ。

 ミーアに連絡して、結界の中へ入れてもらうと、


「あ、あれ? もう小屋があるんだが」


 俺が作った石の壁の家とは別に、しっかりとした木の家がある。


「お父さんがケイトはんに指示した建物は結構大きい建物になるから、すぐには完成せーへんやろうし、とりあえず出来ているのを運んでくるだけっていう簡単な小屋だけ置いてもらってん」

「おぉ、流石レナだな。良い判断だ」

「えへへ……ほな、皆で小屋へ行こか」


 一先ず、少女たちを含めて皆で小屋へ入り、今後の事を決める事にした。

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