第340話 打ち合わせ
レナが手配してくれた小屋へ入ると、中が意外に広い。
しかも、ダイニングキッチンと寝室しかないが、既に食卓やベッドなど、最低限の家具を揃えていた。
分かって居たが、レナはかなりやり手のようだ。
「君たち六人は、そっちの寝室で待っていて欲しい」
「はーい!」
そう言って、六人とも素直に寝室へ。
うん。この素直さはありがたいが……呪いのせいなので、早く治してあげないとな。
「先ずは、レナ、ツキ、ジュリ、マミ……色々と手配をありがとう。買い物などは全て済んだのか?」
「んー、とりあえず建築業者は依頼済みで、どんな家にするかはケイトはんに任せたやろ。で、食料や調理器具なんかも、ある程度は買ってん」
「なるほど。火を起こすなら、リディアの人形に来てもらった方が良いのか?」
「火は、火を起こせえるマジックアイテムを買ったから大丈夫やねんけど、お風呂に入る為に来て欲しいかな」
「確かに風呂は重要だな。メイリンに頼んでおくのと、すまないがジュリとマミの都合の良い時に、迎えに行ってもらえないだろうか」
そう言って頭を下げると、二人共了承してくれたので、俺が魔族領へ帰る時に合わせて、連れて行ってもらえると丁度良いかもしれないな。
「あと、マジック・ポーションを作る材料や機材なんかも買い揃えてんけど、先に解呪ポーションやな」
「あぁ。あの子たちの呪いを解いてあげて欲しい」
「作り方はレイお母さんから聞いているけど、必要な材料があって……」
「それはエリラドの街で買えそうなのか?」
「えっと、ユーリはんが来てくれてるから何とかなるかな。聖水が沢山居るらしいねん」
「あー、呪いを解くポーションだもんな。ユーリに沢山……こほん。その、無理はさせないようにな」
俺とレナとでユーリを見つめていると、不思議そうに小首を傾げ、俺に抱きついてくる。
くっ。こんなに愛くるしいユーリに、これから大量に飲み物を……程々に頼む。
「じゃあ、ユーリはんには、後でウチ特性の利尿薬……こほん。ジュースをあげるな」
「わーい! ありがとー!」
「いや、そこは自然に……ユーリに負担を掛け過ぎないように頼む」
喜ぶユーリの笑顔が胸に刺さる。
何て言うか、この少女たちの為に仕方が無いと言えば、仕方が無いのだが。
「ちょっと待った。今思ったんだが、魔族領には聖水が沢山あるだろ? 向こうでレイに解呪ポーションを作ってもらって、それを送ってもらった方が良いんじゃないか?」
「それが、基本的な解呪ポーションの作り方はレイお母さんが教えてくれてんけど、呪いの進行具合によって成分を微調整せなあかんらしくて……」
「そ、そういうものなのか」
そう考え得ると、やはりプリーストの高位治癒魔法は凄いんだな。
まぁ持ち運んだり出来ないので一長一短だが。
「あと、マジック・ポーションよりも解呪ポーションの方が複雑で、お父さんのアレも沢山居るねん」
レナがそう言った瞬間、マミとジュリとケイトの三人が抱きついて来て、ミーアが姿を大人モードに変える。
いやこれ、さっきしただろ。
「待った。とりあえず、こっちはこっちで闇ギルドの情報収集が未だなんだ。その、ポーションを作って欲しいと言っているのは俺だし、協力はするが……少し待ってくれ」
「まぁ、量で言うと聖水の方が必要やし、そっちに時間がかかりそうやから、お父さんのは夜でも良いよー」
「えぇー、レナちゃん。そこは今すぐ欲しいって言って欲しかったポン」
マミが心底残念そうにしているが、他にやる事が沢山あるからな。
「それよりアレックスさん。もうお昼ですけど、何処かへご飯を食べに行きますか? それとも、何か買って来ましょうか? 今から作ると時間が掛かってしまいますし、作る分量も多いですし」
「あ、もうそんな時間だったのか。しかし食べに行くと、あの少女たちを含めて十五人か。何か買って来た方が良いかもしれないな」
魔族領には食事処も無いし、作るしか選択肢が無かったが、シーナ国には当然お店が沢山ある訳で。
大人数なので店に入るのは難しいかもしれないが、大通りに面した場所だし、近くに店も……探せばあると思う。
そう思って、買い出しに行こうと思ったら、
「ちょっと待ったー! ご主人様! 私たちが居るではありませんか!」
「私たちはメイドです! お掃除と給仕に、ご奉仕だけがお仕事ではありません!」
「ドジっ子メイドとして、料理も出来る所を見せちゃうねー!」
助けた少女たちが声を掛けて来たんだが……嫌な予感しかしないのは俺だけだろうか。
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