第355話 元兎耳族の村側の報告会

 元兎耳族の村に居た女性陣たちを満足させ、一旦落ち着いたのだが……先程のソフィの言葉が気になる。

 回復したリディアが昼食を作ってくれていたので、皆でいただきながら、それぞれの報告を聞く事に。


「まず第一班――この南に作ってもらった第一休憩所から、更に南へ道を伸ばしたんだよな?」

「はい。カスミ様やサクラ様、ヴァレーリエ様が周辺の調査を行っていただき、シーサーによる魔導砲で道を作っても問題なしと判断致しました」

「それが今朝の話だよな。それで、どうしてまたシーサーで道を作る事になったんだ?」


 第一班というか、全体的に元兎耳族の村側はカスミに委任していたのだが、そのカスミが未だに復活してこないので、代わりにソフィが報告してくれているのだが……カスミは無茶し過ぎなんだよ。


「マスターのご認識の通り、許可をいただきましたので、第一休憩所から南に向けて道を作り、その終点まで皆で移動したのですが、その先に巨大な壁が見えましたので」

「巨大な壁……って、まさか魔族領とシーナ国の境目か!? 確かにシーサーの砲撃は凄いが、ここから二発で壁まで到達するのか?」


 魔族領の南の家から、ウララドの街まではシェイリーの魔法陣で転送してもらい、そこからマミの出す鳥に乗って運んでもらっている。

 だが、その魔法陣がある場所ですら、シェイリーに空を飛んでもらって到着した場所で、かなり距離があるのだが。


「それについては、数か所から壁までの距離を目測で測り、そもそもあの壁が、北東に向かって伸びている事を確認しております」

「あ……なるほど。ウララドの街から真っすぐ東に延びている訳ではないのか。だから、そんなに早く壁が見えたのか」

「はい。現在マスターはシーナ国側へ行く事が多々ありますし、壁を壊してしまえば、こちらからシーナ国へ入る事も可能ですので、砲撃許可を……」

「いやいや、壁を壊すのはマズい。そもそもあの壁は、魔族領の魔物がシーナ国へ入り込まないようにする為に作られたとジュリから聞いているし、壁を壊すと向こうからもこっちへ来れてしまうからな」


 壁を壊してしまうと、シーサーの砲撃で出来た道がこの元兎耳の村まで続いている事が簡単に分かるし、俺たちが壁を壊した事が即バレてしまう。

 無用な争いを起こしたくないし、そもそも壁の向こう側がどうなっているか分からない。

 壁の反対側にウララドのような街があったら、大惨事だからな。ここは慎重に行きたいところだ。


「わかった。この後、第一班と俺とで、その壁が見える場所まで行こう。……≪リフレッシュ≫」

「ん……あ、あら。カスミちゃんったら、ちょーっと頑張り過ぎちゃった? 続きは……って、皆着替えてご飯食べてるーっ! 私だけ裸で放置は酷くないー?」


 治癒魔法でカスミを起こし、これからの事を説明すると、すぐに切り替えて支度に取り掛かる。

 こういう所は凄く優秀なのだから……カスミはもう少し節度を持ってくれると、非常に助かるのだが。


「アレックスさん。第二班はソフィさんが第一班に混ざっている事から分かると思いますが、元々のリザードマンの村への道を作る目標が完了していますので、第一班と第三班にそれぞれ分かれて参加しています」

「あぁ、それで構わないよ。ありがとう」


 リディアの話によると、第二班はソフィとモニカが第一班に加わっており、残りは全員第三班――元兎耳族の村の整備に加わっているそうだ。

 一先ず、第三班はこのまま作業を続けてもらい、第一班と共に南へ出発する事にしたのだが、


「しまった。ユーリが魔族領に居るから、俺たちだけだと連絡が取れなくなるのか」


 モニカの転移で俺だけ移動してきたので、機動力に長けた人形が居ない事に気付く。

 元兎耳族の村に連れて来ているのはリディアの人形なので、移動がメインとなる第一班には不向きだ。

 いっそ俺がおんぶしていくべきか? とも思ったのだが、


「お兄さん。そこは抜かりないわよ。ちゃーんと、機動力のある子たちに来てもらっているから」


 そう言って、カスミが胸を張りながら指をさし示す。

 誰の人形が来ているのかと思って見てみると、


「はーい! カスミお母さんの娘、サンゴでーす! あと、お父さん。さっきの大乱……げふんげふん。皆で愛し合う会に、サンゴも参加してたんだよー? ちゃんと気付いてよねー!」


 カスミの三体目の人形、サンゴが居た。

 というか、ツバキだと思っていたのはサンゴだったのか! カスミの人形は、見た目がツバキそっくりなんだよ。


「お父さんの事だから、きっとツバキちゃんと間違えたんだと思うけど、サンゴの方が胸が大きいんだからねー!」

「あ、あぁ、すまない。……って、そのツバキは何処に居るんだ?」

「アレックス様。ツバキはリザードマンの村におります。しかし、ご安心ください。私が感覚同期スキルを使っておりましたので、きっとリザードマンの村でツバキも悶えていた事でしょう。特に後ろ……こほん。気を失う程の凄さでしたし」


 サクラ……それは、逆にツバキは大丈夫なのか?

 一人で突然悶えだした……って、状況によっては非常にマズいと思うのだが。

 しかしサクラもカスミも何も言っていないし、気にしなくて良いという事なのだろうか?

 皆の話を聞き、昼食を終えたので、早速南へ向かう事にした。

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